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西山順博先生に訊きました 第6回

西山順博先生に訊きました 『ケアに活かせる栄養療法の豆知識』第6回

投稿日:2017.05.16

脂肪酸の水先案内、L・カルニチンのはたらき
効率のよい脂質代謝が行われるためには、ミトコンドリア細胞の中に脂肪酸を案内してくれる、ビタミン様物質のL功ルニチンが欠かせないって、ご存知ですか?

L-カルニチンとは?

L一 カルニチンのはたらき

■脂肪酸をミトコンドリアに運搬

骨格筋や心臓などの筋組織に約98%が存在しているL一 力ルニチン。
そのままではミトコンドリア膜を透過できない脂肪酸と結合して、ミトコンドリア内に連れていきます。
そこで脂肪酸と離れると、再びミトコンドリア膜を透過して新たな脂肪酸と結合します(図)。

■毒性のある有機酸を体外に排出

代謝異常症で細胞内に蓄積した、毒性のある有機酸(アシル化合物など)を体外に排出し、代謝を正常化するはたらきもあります。

L一力ルニチン欠乏症

■主な原因

食事の摂取不良(下痢・嘔吐を含む)、体内での合成能の低下、薬剤性(ピボキシル基をもつ抗菌剤1)、バルプロ酸2))、透析治療3) (腎不全 などによる、血清中の遊離L一力ルニチン濃度の低下。
1)ピボキシル基を持つ抗菌剤による低力ルニチン血症
遊離L一カルニチンがピボキシル基と結合して尿中に排泄され、血清中の遊離L一カルニチン濃度が低下します。
ブドウ糖の過剰な利用から、栄養不良状態での低血糖や痙攣を呈した副作用が報告されています。
抗生剤の長期投与には注意が必要です。
注意!フロモックス、メイアクト、トミロン、オラペネムなど
2)バルプロ酸による低カルニチン血症
遊離L一カルニチンがバルプロ酸ナトリウムと結合して尿中に排泄され、血清中の遊離L一カルニチン濃度が低下します。
脂肪酸のβ酸化障害からエネルギー枯渇状態を招き、ミトコンドリア機能が障害されると高アンモニア血症が引き起こされます。
なお、生後1ヵ月以内はL一力ルニチンの体内合成が未熟なため、小児へのバルプロ酸ナトリウム投与は注意した方が良いでしょう。
3)透析治療による低カルニチン血症
透析患者は、腎機能の低下、食事制限による食品からの摂取量の不足、透析などによりL一力ルニチンが不足し、赤血球の膜安定化が低下するために腎性貧血を生じることもあります 。
カルニチンを補充すると赤血球が安定化し、貧血は改善します。
注意!L一カルニチン製剤の服用は、透析後に低用量から(高容量の長期投与はトリメチルアミン等の有害物質が蓄積する恐れあり)

■臨床症状

全身倦怠・筋肉症状4)、不整脈、心筋症、急性脳症、突然死など
4)L一カルニチン減少による全身倦怠・筋肉症状
L一カルニチン減少により、代謝効率の良い脂肪酸ではなく糖や蛋白質がエネルギー減となるため、十分なエネルギー産生ができなくなります。
その結果、個々の細胞への負担が増え、痙攣、倦怠感、こむら返り、筋力低下などの筋肉症状が出現します。
L一力ルニチンを投与することにより脂肪酸によるエネルギー産生量が増え、症状は改善されます

■検査所見

低血糖、尿ケトン体陰性、肝機能異常、高アンモニア血症、高尿酸血症など。
血中の遊離L一力ルニチンの正常値は20~60μMで、10μM以下で欠乏症が発症するといわれています。

L・カルニチンの摂取 にあたって

摂取量の目安

通常、L一力ルニチンの75%は食事( 肉、魚、乳製品等)から摂取されます。厚生労働省は1日あたりの摂取上限の目安量を約1000mgとしていますが、体内でのL一力ルニチン生成量は20代をピークに減少すると考えられています。
食事環境や加齢に応じた摂取を行うことが望ましい食品成分と思われます。

また、L一力ルニチン欠乏症の発症原因は多様なため、L一力ルニチン製剤の投与量は臨床症状によって幅広く設定されています。
しかし現時点では血清L一カルニチン値の測定は保険適応ではありません。日常的に測定しづらいことを念頭におき、身体状況と日々の食事から摂取状況を把握できるよう、意識したいものですね。
参考文献:
1)L一力ルニチンについて永田純一( 国立健康・栄養研究所食品機能研究部) 食品成分有効性評価及び健康影響評価プロジェクト

2)PMIDAからの医薬品適正使用のおねがい No.8 2012年4月 (ピボキシル基を有する抗菌薬投与による小児等の重篤な低カルニチン血症と低血糖について)

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