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ナースマガジン vol.35

【看護ケアQ&A】おさえておきたい呼吸リハビリのポイント

新型コロナウイルス感染症患者には、出来るだけ決まったスタッフが関わることが優先されていますが、呼吸リハビリが必要な患者の場合、リハビリスタッフが不在の時間帯に、看護師だけでも自信を持って安全に呼吸リハビリを行えるようになりたいものです。そこで今回は、看護師もおさえておきたい呼吸リハビリについての大事なポイントを清水孝宏先生にお伺いしました。(編集部)

看護師が行うリハビリについて

PTが行うリハビリと、看護師が行うリハビリは何が違いますか?
私たち看護師でもできることはありますか?
常に患者さんと関わる看護師さんだからこそ、24時間リハビリを行うことができます。まずは計画を立てて、勤務ごとに引き継いでいきましょう。
 患者さんのリハビリは、主にPTなどのリハビリスタッフが行っていると思います。しかし新型コロナウイルス感染症で関わるスタッフが制限されていたり、夜間などリハビリスタッフがいない時間帯では、看護師が中心となってリハビリを行っていく必要があります。
 ADLがベッド上で気管挿管中の場合では、ルーチンでの体位変換とは別に、計画を立ててドレナージやヘッドアップなどを行い、適したポジショニングを行っていくことが重要です。

 気管挿管だったり、鎮静中や自分で喀痰できない患者さんは、どうしても痰がたまってしまいますので、呼吸音を聞きながら、痰が貯留している箇所を上側にして体位ドレナージを行っていきましょう。

肥満は拘束性換気障害

35歳で肥満体型(BMI36)の新型コロナウイルス感染症患者で酸素流量2L/分投与中。ADLはベッド上でこれからリハビリ開始予定であり呼吸回数30回/分です。
これからリハビリを開始するにあたってどのようなことに注意していったら良いですか?
肥満の方にはヘッドアップするだけでも肺が広がりリハビリになります。
患者さんの状態は広い視点でアセスメントしましょう。
 新型コロナウイルス感染症の患者さんは、BMIが正常よりも高い傾向にあります。肥満の場合は胸郭にも脂肪が多いので、拘束性換気障害が普段から存在している状態になり、息苦しさを訴えることがあります。ですので息苦しさを訴える場合は、肥満による要因もアセスメントに含めながら考えていきましょう。
 肥満の場合はベッドが平らで仰臥位の状態では肺がさらに圧迫されてしまうため、息苦しさが強くなります。ヘッドアップをしたり座位にするだけでもリハビリとしての効果があり、肺が広がりやすくなることで呼吸も楽になります。

 呼吸回数30回/分と言っても、もしかしたらその患者さんの普段の値かもしれません。呼吸回数が正常値より多くても、まずは普段の呼吸回数やどのような呼吸をしているかを観察し、それをベースとして現在どれくらい多いのかというように考えていきましょう。
 なお、新型コロナウイルス感染症の場合、スタッフはPPEを着用し、気管挿管していない場合はサージカルマスクを、人工呼吸器の場合は回路を予定外で開放しないように注意しながらリハビリを行います。

呼吸についての重要なアセスメントのポイント

ADLベッド上で90歳のCOPD患者さんが、SpO2 88%でも全然苦しくないと言っています。確かに努力呼吸はなくチアノーゼも出ていませんでしたが、この場合リハビリは続けて良いのでしょうか?
PaO2の標準値は、患者さんの年齢で変わってきます。一般的に言われている基準値で考えず、患者さんに合った値を知り、SpO2だけでなくトータルでアセスメントし判断していきましょう。
 肺は加齢とともに機能が低下していくため、30歳と90歳ではPaO2の標準値が異なってきます。一般的な基準値としては80~100mmHgと言われており、酸素乖離曲線ではSpO2 90%の場合PaO2 60mmHgになるので低酸素血症ということになります。
しかし、年齢と照らし合わせて計算してみると「100-0.4(臥位)×90(歳)=PaO2 64 mmHg」これが患者さんの標準値になります。ですので、SpO2が90%であっても90歳の患者さんにとっては問題のない値なのです。また、COPD患者さんでは、SpO2 88~90%を保っていれば、過剰な酸素投与はしないで良いという論文も出ています。過剰な酸素投与は肺の炎症につながり、他の臓器にも波及してしまいます。
 SpO2の値よりも大切なこととしては、患者さんが「苦しい」と訴えたり、努力呼吸があるかなど、トータルで呼吸状態や酸素化を評価していくということです。 「SpO2が正常=呼吸ができている」のではありません。吸気で酸素を取り込みますが、呼気で二酸化炭素を吐くことまでが呼吸です。クリティカルでは人工呼吸器でのETCO2や、血液ガス分析でのPaCO2を確認するくせを付けましょう。
 このような視点を持って酸素化をアセスメントして見ると、この患者さんのSpO2値はこの方の正常範囲内ですので、自覚症状や他の酸素化に関する観察項目に問題がなければリハビリは可能と考えます。

単位の意味 、 知ってますか ?

 医療現場では、様々な単位が使われていますが、その単位の意味まで知らない方も多いと思います。酸素乖離曲線ではよくmmHgとTorr両方見かけますが、この2つの単位は一体何でしょうか?
mmHg(ミリメートルエイチジー)
圧力の単位で「水銀柱ミリメートル」とも呼ばれる。その名から想像できるように、単位はmm(ミリメートル)とHg(水銀)から構成され、ガリレオガリレイの弟子であるトリチェリというイタリアの物理学者が、水銀柱の高さで圧力を測定した実験から名付けられた。1mmHgは、高さ1mmの水銀柱が与える圧力のことを示す。
Torr(トル)
Torrは、「mmHg」を発見したトリチェリの名前が功績として残された単位で、mmHgの別名である。
1mmHg=1Torr で、どちらも同様の単位。
Pa(パスカル)
Paは、フランスの数学・物理学者のパスカルが、低地と山頂で水銀柱の高さが異なることを発見したことに由来した単位。
天気予報で使われるhPa(ヘクトパスカル)のh(ヘクト)は100を示し、100Paの意味。
 現在、圧力の単位は国際単位系(SI)のPa(パスカル)に統一されているが、2013年の厚生労働省の発表から「生体内の圧力の計量に用いる場合に限り」mmHgやTorrを法定計量単位として使用できることになった。ただし、血圧に関してはmmHgの使用に限る。
参考
・厚生労働省 生体内の圧力の計量単位に係る計量単位令の改正について
http://www.asas.or.jp/jst/news/doc/info_20131005_3.pdf
・大日本図書 いろいろな単位
https://www.dainippon-tosho.co.jp/unit/list/mmHg.html
・ULVAC Vacuum Magazine
真空を表す単位の圧力は、移り変わってきた
https://www.ulvac.co.jp/wiki/vacuum-lesson3/

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