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専門家Q&A

入浴できない患者のスキンケアについて

ご質問

当院では高齢者が多く、皮膚が脆弱している方が多く入院しています。そんな患者のスキンケアの一つとして昨年から、入浴できない患者には泡石鹸を作り、泡清拭を導入しました。それまでの清拭方法は温タオルでふき取るのみでした。
使用する石鹸は基本的に弱酸性タイプのものを家族に用意してもらい、ダヴやビオレなど様々なボディーソープを使っています。中にはオムツ失禁でリスクのある患者さんにはコラージュフルフルを推奨しています。泡で包み込むように汚れをふき取る清拭をし、そのあとの保湿も行っております。薬剤としてはザーネ軟膏やワセリン、その他家族に保湿クリームを用意してもらうこともあります。
ただ、石鹸を使うことで余計に乾燥を招き、良くないんじゃないか・・・という意見があります。陰部の洗浄も微温湯だけで洗浄すれば十分に洗い流せるという意見もあります。弱酸性であれば、どんな石鹸を使ってもいいというアバウトな意見はおかしいとも言われました。ベビーソープならどうかなど・・・
褥瘡ケアマニュアル作成に向けて、スキンケア方法を統一していきたいのですが、なかなか前にすすみません。
教えてください。

専門家の見解

高齢者の皮膚は、毛包や皮脂腺の委縮により、汗や皮脂成分が減少し、ドライスキンとなります。表皮がうすく、表皮と真皮の結びつきも弱いため傷つきやすい状態です。

高齢者は、汗や皮脂の分泌量が低下するため、汚れの質も量も減少します。しかし、角質が厚く固着しているため、垢となって取れにくい状態です。よって、適切な洗浄は必要です。

皮膚にダメージを与えない方法として石鹸を十分に泡立て厚みのある泡で洗浄することが推奨されています1)。

汚れ落ちの観点から言うとアルカリ性の洗浄剤の方が効果は高いですが、皮脂を取りすぎてしまう恐れがあるため、ドライスキンが著明にみられる方には、弱酸性の洗浄剤が適しています。逆に、おむつを使用している方の外陰部など細菌が繁殖し感染しやすい場所はアルカリ性洗浄剤や、すでにお使いの抗菌成分の入ったコラージュフルフルRでの洗浄をお勧めします。

洗浄剤の種類は、以下の表をご参考頂き、その方の皮膚の状態に応じて使い分けられると良いと思います。

ドライスキンが顕著な場合は、毎日石鹸で洗浄することで皮脂成分を過剰に取り除き、さらにドライスキンを助長することになるので、洗浄剤使用の頻度に関しては、皮膚の状態を観察しながら週に1~2度程度でご検討されてはいかがでしょうか。

そして、ご意見にあるように石鹸を使用することで乾燥するため、ドライスキンの場合は、今実施していらっしゃるように洗浄後の保湿が重要です。継続して使用する場合には、べたつきがなく無香料の製品を選択することをお勧めします。

白色ワセリンは安価で刺激が少なく表皮からの水分蒸散を防ぎますが、べたつきやすく、長期的な使用においては汗腺を塞ぎ浸軟を起こすことがあるため注意が必要です。尿素入りの製品は、角化した皮膚を保湿する効果が高いと言われていますが、皮膚炎のある部位に使用すると刺激となる場合があり、バリア機能を破壊するという報告もあります。ザーネはビタミンAを主体として、皮膚の新陳代謝を高めて角化を抑える作用があります。セラミド・ユーカリエキス含有のキュレルR薬用クリームは保湿効果が高いものですが、やや高価です。これらの特徴を考慮して製品を選択していただけるとよいと思います。
 
スタッフの皆さんに納得して頂き、スキンケアマニュアルの作成が進みますように。

参考文献
1)溝上祐子編著:知識とスキルで見てわかる専門的皮膚ケア スキントラブルの理解と予防的・治療的スキンケア.メディカ出版.2008
2)溝上祐子編著:カラー写真とイラストで見てわかる!創傷管理 予防的スキンケア・褥瘡から創傷治療の実際.メディカ出版.2006

Thanks.

早々のご返答ありがとうございます。 細かな説明にとても感謝しております。ありがとうございます。よりよいスキンケアが出来るよう頑張って 行きたいと思います。 また何かありましたらよろしくお願いします。

こちらの記事は、会員のスキルアップを支援するものであり、患者の病状改善および問題解決について保証するものではありません。
また、専門家Q&Aにより得られる知識はあくまで回答専門家の見解であり、医療行為となる診療行為、診断および投薬指導ではございません。
職務に生かす場合は職場の上長や患者の主治医に必ず相談し許可を取ってから実践するようお願いいたします。
専門家Q&Aを通じて得た知識を職務に活かす場合、患者のの心身の状態が悪化した場合でも、当社は一切責任を負いません。
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