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専門家Q&A

胃ろうからの栄養の投与方法について

ご質問

急性膵炎で急変し、呼吸が停止し低酸素状態が続いたためレベルがJCSⅢ桁、人工呼吸器管理になっている患者様がいます。30代の男性患者様で既応に糖尿病はありません。急性膵炎は現在は落ち着いています。禁食になっておりCVから高カロリー輸液を投与していますが、CVカテーテルからの感染・炎症を繰り返し、血管も確保しづらいためCVからの栄養管理が困難になっています。腸管を動かしたいのですが、嘔吐してしまい結果肺炎を繰り返し、腸ろうの造設も腸の構造の問題で不可能でした。治療上DRは胃ろうを何とか使用していきたいため、20/hからE3を朝200・夕200で投与しています。現在は10/hずつ速度を増やし70/hでなんとか嘔吐なく投与しています。ただ、前回はここまできて嘔吐してしまったためまた20/Hから再開した経緯があります。このような患者に対して胃ろうを使用して嘔吐なくもっとスムーズに栄養が投与できるように方法はありますでしょうか?それともやはり胃ろうからの栄養を中止したほうがいいでしょうか?

専門家の見解

何らかの基礎疾患による意識障害で人工呼吸器管理と経管栄養を導入した患者さんで、慢性膵炎を併発していると想定して回答します。
胃・食道逆流+嘔吐を繰り返しているということは、胃や小腸の運動機能の低下の他、器質的な狭窄も疑われます。私も腫瘤形成性の慢性膵炎や胸腰椎の過形成による十二指腸水平部の狭窄による通過障害を経験したことがあります。ガストログラフィンによる消化管造影や腹部CTで確認しました。レントゲン室へ下ろせないようならガストログラフィンを胃瘻から30mL注入し、直後、2時間後、4時間後にポータブルで腹部X線撮影を行って確認するという手もあります。
栄養剤の選択では少量で高カロリーの投与が可能なアイソカル2Kを選択する手もありますが、
輸液による水分管理を併用する必要があります。
幽門や十二指腸の通過障害があるが空腸以降の通過が問題ないようなら経胃瘻的空腸瘻:PEG-J
も選択肢となりますが、X線透視下での処置が必要です。
細径内視鏡を胃瘻から挿入してガイドワイヤーを留置してPEG-Jチューブを挿入する方法が有効であったという報告もあります。
http://medicalfinder.jp/ejournal/1403100354.html

経管栄養剤の投与と嘔吐のタイミングやそのときの姿勢はどうでしょうか?
投与中の嘔吐の場合は、投与中の体位交換や姿勢の崩れはないでしょうか。
投与修了後の嘔吐の場合、投与修了後1時間で胃瘻を開放して胃内残渣を排液/胃内減圧をすることで
嘔吐の発生を防ぐことができるという発表があります。
http://s-igaku.umin.jp/DATA/59_01/59_01_02.pdf
この論文のP7-8で簡単にですが記載されています。
投与速度を増加する前に投与後1時間での胃内残渣量をチェックしてみると良いと思います。

専門家の見解

経腸栄養の適応は消化管が安全に使用できる患者さんということになっております。重症急性膵炎は本来経口摂取(特に脂肪食、胃に物が入ること)で病態を悪化しますので、初期は絶食となります。病態的に多くの水分が必要となりますので、CVによる管理は必至となります。膵炎に伴い十二指腸にまで炎症が及び十二指腸が狭小化することも多々あります。しかし、長期の絶食は腸管機能の衰退、免疫低下、バクテリアルトランスロケーション(腸管より細菌が侵入し敗血症に及ぶ・・・)などが危惧されるため、それを回避する如く我々の施設では、比較的早期よりEDチューブを経鼻より挿入し、十二指腸水平脚まで挿入し、脂肪分のない成分栄養製剤(エレンタールなど)とGFOをポンプで注入しております。もちろんこれにても下痢になる場合はありますが、栄養目的ではなく、腸管機能を維持するために行うものであり、下痢になれば速度・分量を調節します。重症急性膵炎の改善とともに徐々に速度・分量はアップしていきます。ちなみに、この際は胃からの経腸栄養は禁忌であり、他方の経鼻より胃内にチューブを置き、減圧、PPIなどで胃酸もしっかり抑制します。
本来重症急性膵炎の救命率は30%以下であり、患者さんが救命でき今なお元気にされているということは急性期を脱したということで、多大なご努力があったと思われます。現在、経静脈栄養から経腸栄養に移行できないことは胃ろうからの栄養は困難であり、私もPEG-Jにして、小腸側(水平脚より肛門側)で栄養注入、胃よりは減圧にさせることをお勧めします。脂肪はCVより投与し、経腸栄養はあくまでも成分栄養剤がよいのではないでしょうか。しばらくはCV併用となることが予想されますので、CVポートのほうが長期管理には適しているといわれています。30歳とのことなんとか回復されることをお祈りしております。

こちらの記事は、会員のスキルアップを支援するものであり、患者の病状改善および問題解決について保証するものではありません。
また、専門家Q&Aにより得られる知識はあくまで回答専門家の見解であり、医療行為となる診療行為、診断および投薬指導ではございません。
職務に生かす場合は職場の上長や患者の主治医に必ず相談し許可を取ってから実践するようお願いいたします。
専門家Q&Aを通じて得た知識を職務に活かす場合、患者のの心身の状態が悪化した場合でも、当社は一切責任を負いません。
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