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認定看護師さんインタビュー企画

認定看護師さんインタビュー企画~小塚美和さん(緩和ケア認定看護師)~

投稿日:2013.07.22

認定看護師インタビュー今回は、
東京警察病院でご活躍されている小塚美和さんにお話を伺いました。

■看護師になろうと思ったきっかけを教えてください。

もともとの動機は、「人が好き」ということからです。学生の頃から、人とおしゃべりをしたり、人と関わることが好きでしたので。そんな仕事がしたいと思って考えたのが、看護師でした。目指す上で学費も安かったので(笑)、高校のときに決めましたね。

■看護師になって、転機となった時期や出来事があれば教えてください。

いちばん強く感じたのは、1年目に配属になった混合病棟ですね。いろんな患者さんに出会いながらも、治療に伴う苦痛症状の緩和など、自分で何もできない無力さに苛まれていました。

本来であれば、患者さんはよりよく生きるために治療を受けているはずなのに、痛みに苦しむ患者さんを目の前にして、まるで治療のための治療を受けているような印象を受けたんです。
そこで、治療と一緒に緩和を考えてあげることで、患者さんのためになることができないかな、と思うようになりました。 そこから、緩和医療に関する勉強を始めたんです。それまで緩和の領域はほとんど知識がなかったので、手当たり次第に勉強していきました。

勉強しながら、自分は患者さんの苦痛を取り除いてあげるために何ができるのか。それをすごく考えるようになっていきました。

それが、混合病棟で3年が経った頃、突然ICUに異動。もっとじっくりと緩和ケアについて勉強したいと思っていたので、最初は異動がすごく嫌でした。でも移ってみると、フィジカル面でのアセスメントの大事さや、患者さんを細かく見ることの重要さをICUで学べたことで、貴重な経験になりましたね。

■ICUには3年おられたそうですね。その後、ふたたび病棟に?

はい。ICUでの経験も貴重でしたが、やはり自分は患者さんとじっくりと向き合いたい、病棟での看護にあたりたいと強く思うようになっていました。看護臨床における知識をもっと専門的に深めたい。そう思って、緩和ケアの認定看護師を目指そうと思いました。

認定看護師としては、緩和ケア以外の選択肢として集中ケアも少し考えたのですが、患者さんの人生に最初から最期まで関わることができること。それを支援していきたいと思った気持ちが大きくて、緩和ケアを選びました。

■認定看護師の受験対策はどのように行いましたか?

勉強はかなりしましたね(笑)。緩和ケアを自分で選んだものの、まだまだ十分に理解できていなかったので、基礎から勉強しようと思い直しました。最初は文科省の看護学生への緩和ケア教育に関する書籍を読む基礎的な勉強からスタート。研修会や学会にもできるだけ参加しながら、積極的に情報を得ていきました。

看護学生のときには、緩和ケアという明確な形で教わっていませんでしたので、勉強するとなると基礎からみっちり積み上げる形でした。当時は警察病院にも緩和ケアの専門の看護師はいなかったので、最初は手探りでの勉強になりましたね。

■試験勉強はいつ頃から開始しましたか?

試験の1年前から始めました。大まかなスパンで目標を定めながら、段階を踏んで進めることを重視しましたね。自分で期間を決めながら、「3ヶ月でこの問題集を解いて、次の2ヶ月は患者さんの事例を見て行こう」という風にスケジュールを立てて、それに沿って毎日進めていきました。

立てたスケジュールは必ずこなす覚悟で毎日頑張りましたね。ただ、やれないときは無理をせずに、勉強できるときに帳尻合わせをすればいいという考えであまり自分を追い込まないように。

勤務が終わって疲れたと感じたら、とにかくすぐに寝る(笑)。睡眠時間を減らすことは極力しないようにしていました。そうしたメリハリを作るなかで勉強を進めていきましたね。

■おすすめの問題集や参考書はありますか?

医学書院の「緩和ケア」は多くの人が使っていると思います。これは“鉄板”ですね。そして私自身のおすすめの参考書は、「ナースのためのホスピス緩和ケア手引帖」(ピースハウス病院教育委員会)。問題形式の「質問編」も載っていて、自分で書き込めるテキストになっているところがいいですね。症状をまとめたり、復習するにはとても重宝する内容で役に立ちました。

■受験に際して苦労されたことなどがあれば教えてください。

私は実家が宮城県の登米市で、ちょうど受験勉強の最中に震災に見舞われたんです。大きな被害の出た南三陸市の隣町で内陸側になるんですが、私の実家の周りでも親戚や友人たちが震災の津波で帰らぬ人となりました。

受験のときもそうでしたが、いま「もう駄目だ」と思うことがあっても、震災のときのことを想い出せば、「まだまだ頑張れる」「頑張らないといけない」そう思います。震災直後は落ち込みましたが、そのあと「自分でできることをしっかりやろう」「止まってたらいけない」と思い直すことができました。

試験に対しても、それまでは「落ちたらまた来年受ければいいや」と思っていたのが、震災を経験して、そうした甘い意識を捨てることができたような気がします。

■学校での学びで印象に残ったことは何ですか?

学校生活は、ただただ楽しかったですね。辛い事も楽しいと思える環境がありました。というのも、同じ志の人たちが周りにいて、みんなで話してみんなで頑張っていくことができる環境でしたから。自分が徹夜していても、聞くとほかの人もほとんど徹夜していた…みたいな。苦しいこともみんなで笑い話にできる雰囲気がありましたね。
全国からさぞかし優秀な看護師ばかり集まっているんだろうな…と戦々恐々で行ってみたら、みんな私と同じように、自分ができるなんて思っていない人ばかりでした(笑)。けれど、誰もが真摯に看護のことを考えていて、専門性を身に付けたいと思って真っ直ぐに頑張る人ばかりだったんです。

そうした人たちと仲間になって勉強を頑張っていくのは楽しかったですね。ダメなところや良いところをみんなで認め合いながら頑張っていく、そんな環境がありました。毎日がとても充実していた時間でしたね。

■学ぶことが多かったのですね。

そうですね。そして私たちが行っていた学校は、不思議と「勉強しなさい」とは言わないところだったのです。先生は、「知識は、たとえ忘れても本を読めば取り返せる」と話して、決して知識の詰め込みではなく、看護師としての倫理観や患者さんに向き合う姿勢など、看護師としてもっとも大事にしなくてはならないことを教えてくれる学校でした。

自分の考えを文章で書かせながら、自分の言葉でわかりやすく表現することを重視して教えてくれる。まだまだ自分は現場で活かし切れてはいないと思いますが、そこでの学びは看護師としての土台を築く上で、とても大切なものだったように思います。

■小塚さんの、現在の仕事内容を教えてください。

今は週に1回、緩和ケア認定看護師としての院内での活動日をいただいています。緩和ケアの認定看護師が先輩にもう1名いますので、その方と病棟を半分ずつラウンドしています。

ほかに緩和ケアチームとして、月曜日の夕方に医師と薬剤師、臨床心理士、ソーシャルワーカーなど他職種のスタッフとラウンドを行いながら、コンサルテーションのあった患者さんのところに伺ってさまざまな苦痛のアセスメントや提案を行っています。

■認定看護師になってからの、意識の変化はありましたか?

昨年の7月に認定看護師になりましたが、今までは自分が直接、患者さんに何かを提供したいという気持ちが強かったんですが、認定看護師になってからは、もっと周りのスタッフを巻き込んで、スタッフの緩和領域における知識やケアを全体的に底上げできるようにしていかなくては、という意識が芽生えてきましたね。
自分一人でやるのではなく、周りのみんなの意識やスキルの底上げに貢献したいという気持ちが大きくなってきたように思います。やっていること自体には変わりはないかもしれませんが、そうした意識の部分の変化は感じていますね。

それまでは自分が所属している病棟だけの活動でしたが、認定看護師になってからは、できるだけ他の病棟や、今まで話したことのない看護師や、医師の先生方とも積極的にコミュニケーションをとったり、そうしたことは変わってきていると感じます。

■認定看護師の仕事として、ほかに特色のある活動は何かありますか?

院内での「デスカンファレンス」にも積極的に取り組んでいますね。臨床の中で、患者さんを失う経験をした医療者の多くは、喪失感に見舞われて、その思いをひきずってしまうことが多くあります。

ひどい場合は離職にまでつながってしまう方もいますし、燃え尽き症候群に苛まれたり、自分を責めてしまう方も少なくありません。心の病に悩まされ、元のように働くことができなくなる人も少なくないのです。

そうした医療スタッフのグリーフケアを目的に活動を行っています。患者さんのケアはもちろん重要ですが、こうした医療者へのケアにもこれからも力を入れていかなければいけないと思っています。

■今後、認定看護師としての目標は何ですか?

自分としては、外来での緩和ケアがまだまだ不十分だと感じています。当院はがんの拠点病院ではないので現実は難しいかもしれませんが、がん相談の支援外来のような、早期から終末期まで、患者さんやご家族が気軽に相談できる窓口ができればいいな、と思っています。外来における緩和ケアをもっと充実させることができればいいですね。

■最期に、ナースの星Q&A会員へ向けて、メッセージをお願いできますか。

認定看護師を目指したいと思っている方は、まず自分が成長していくための希望を持ち続けることが大事だと思います。時間がかかって遠回りしても、自分を見失わないでコツコツと努力を続けていけば、その希望は必ず形になると思います。少しずつでもいいから、あきらめずにとにかく続けて頑張ること。ぜひ、自分の思いを実現してほしいと思います。

<小塚さんがご活躍されている病院>

東京警察病院
〒164-8541
東京都中野区中野4丁目22-1
TEL:03-5343-5611(代)

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