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ニュートリション・ジャーナル NUTRITION JOURNAL ” 理解なき支援が「溝」を生む” Vol.07 その2

投稿日:2020.11.15

新型コロナウイルス感染症患者の感染経路は追跡が難しく、緊急事態宣言解除後は人々の自粛生活、移動制限も緩和され、いまや、誰もが感染リスクを抱えて生活している状況にある。一方で、第一波における解析や研究により、リスクの高い患者像も明らかになってきた。

がんの治療中(免疫力低下)の方、基礎疾患(糖尿病、肝硬変、腎疾患など)を持つ方、大きな手術後の方、そして高齢者。高齢になるほどそれ自体がリスクファクターになることは言うまでもない。リスクの高い患者らが感染してしまった際には、重症化させないことが極めて重要である。手洗い・消毒、マスクの着用、ディスタンスの確保、換気などによる感染予防策とともに、栄養ケアにより免疫力を整え、感染に備えることも必要だ。

本調査では、回答者の92.9%が「免疫力低下は感染症による入院・死亡等の重篤化リスクになる」と回答し(図1)、96.5%が「免疫力を高めるために栄養状態を良好に保つことが必要」と回答した(図2)。この点から、栄養ケアが免疫力を高める上で重要であるという認識の高さが読み取れる。栄養学的なアプローチの充実が、患者・利用者の感染予防・対策に有効と考える回答者は43%に上り、その理由として①重症化予防(31%)②体力・免疫力向上(29%)③回復力の向上(6%)を挙げていた。

「整腸」ではなく「免疫」で注目される乳酸菌とは?

栄養の専門家である栄養士らが免疫力アップに必要な栄養素として挙げているのは、「たんぱく質」「ビタミン」「ミネラル」で、次いで「エネルギー」「水分」「乳酸菌」と続く。特筆すべきは「乳酸菌」の回答が41%に上ったことだ。近年、免疫細胞の7割が集中する腸管で、能力を発揮する「乳酸菌」に着目する研究者も多く、本調査結果からもその注目度の高さがうかがえる。

「乳酸菌」の従来のイメージは、腸内の有用菌を増やす、っまり整腸作用ではないだろうか。ただ乳酸菌には、整腸作用だけではなく、免疫力を高める効果も期待されている。前出の望月氏によると、「乳酸菌といえば”お通じによい”という印象でしたが、メディアでもよく取り上げられているせいか、最近では”腸内細菌フローラ”などの用語も聞きなれ、徐々に免疫向上機能への理解も進みつつあります」という。腸内環境を良好な状態に保つことは、「免疫の基盤となる生体防御能を適正に保持するうえで重要」といわれている。免疫力アップに特化した乳酸菌やそれを配合した食品が市販され、注目されるようになった今、作用機序の異なる代表的な乳酸菌の違いを知っておくとよいだろう。

注目のE.フェカリス(乳酸菌)

バイオジェニックスの新潮流の一つとされるE.フェカリス(乳酸菌)は、粒子径が小さくパイエル板から小腸に大量に取り込まれやすい。基本的に、乳酸菌の量に依存して免疫系統への刺激作用の強度は増加するため、菌量が多いほど病原体への攻撃力と病原体の侵入防御力が活性化される。死菌(加熱殺菌菌体)のため生菌より安定性が高く、飲料として摂取できる手軽さが受け入れられている。

Key Word 腸内細菌叢の環境改善と「バイオジェニックス」

我々が食べている物の中で「腸内細菌叢の環境を改善する食品」が注目されている。排便コントロールだけでなく、病原菌の抑制、免疫機能の改善などにより、感染防御、炎症抑制などにも効果を上げている。その食べ方を工夫することで、さらに効果アップが期待される。
プロバイオティクス/乳酸菌、ビフィズス菌、納豆菌などの生菌を摂取して有用菌を直接腸内に届ける(ヨーグルト、乳酸飲料、納豆など)

プレバイオティクス/食物繊維やオリゴ糖など、有用菌の餌を摂取して有用菌を腸内で育てる(穀類、海藻類、豆類、キノコ類など)

シンバイオティクス/プロバイオティクスとプレバイオティクスの併用で効果を高める(納豆、ぬか漬け、オリゴ糖含有乳酸飲料など)

バイオジェニックス/腸内細菌叢を介さず、生体調節、生体防御、疾病予防回復・老化制御など生態に働きかける(E.フェカリスなど)

乳酸菌の死菌もこれに含まれ、分子が小さく大量に体内に取り込むことで免疫機能が向上することが報告されている。

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