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【看護ケアQ&A】 脳卒中患者の栄養看護

投稿日:2020.09.13

栄養看績とは…栄養とは人の健康の保持・増進だけでなく健康の回復に欠かせないものである、ということは私たちの共通認識だと思います。実は、表題の『栄養看護』に対する定義はありません。一方、「栄養管理』とは、生命活動を維持していくための栄養の取り込みを、食事に加え、経腸栄養や静脈栄養を併用することです。そのうち24時間患者に接している看護師は、『栄養』を取り込むことに加えて、具体的な食べる行動や楽しみなど患者を生活している総合体として捉え、QOLの向上を図る『看護』の視点も持つことが必要です。本稿では、脳卒中患者に焦点をあて、急性期・回復期・維持期(生活期)の看護師からの『栄養看護』に対するご質問に答えます。

急性期での経腸栄養管理

急性期病院では意識の低下した患者が多く処置もあります。最近、経腸栄養の早期開始が勧められていますが、その理由を教えてください。また、早期開始の時期はいつでしようか。
脳卒中は、突然発症し、意識障害や嚥下障害を伴うため、絶飲食の指示が出される場合もあります。しかし、脳卒中患者は直前まで日常の食事を摂っており、腸管機能が正常に保たれていたと考えてよいでしょう。
栄養学的には『if the gut works,use it:腸が使えれば腸を使え」の言葉のとおり、経ロ摂取できなくても経腸栄養管理が基本となります。腸管機能の維持を保つことは、腸粘膜の萎縮による吸収障害や下痢などの消化器症状を防ぎ、免疫学的にも有用⑴です。また脳卒中ガイドライン⑵によると、急性期の脳卒中患者の栄養は「脳卒中発症後7日以上十分な経ロ摂取が困難と判断された患者では、発症早期から経腸栄養を開始するよう勧められる(グレードB)」と明記されています。
経腸栄養への看護師の主な関わりは、エネルギー増量の提案や下痢などによる滴下速度の対応でしょう。経腸栄養剤の成分は、筋肉合成を促進するロイシンや消化器症状のリスク低減を図った食物繊維(グアーガム分解物)が配合されたものなど、目的に応じて特化した商品も販売されています。経腸栄養の、エネルギーや水分だけでなく成分にも注目(図1)し、変更の提案も行いましょう。

回復期リハビリテーション病棟でのアセスメント

回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)では、ほとんどの患者が経ロ摂取しています。どのように栄養のアセスメントをすればいいでしようか。回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)では、ほとんどの患者が経ロ摂取しています。どのように栄養のアセスメントをすればいいでしようか。
回復期リハ病棟は、90%以上の患者が経口摂取している⑶にも関わらず、栄養障害の患者は半数近くにも上ります⑷。
その理由として脳卒中患者は、高次脳機能障害(「達人に訊く!」参照〉、嚥下障害や麻痺のため食事動作に時間がかかること、易疲労性・運動耐久性低下などから経ロ摂取できているにも関わらず、食事量が少ないことが挙げられます。
一方、回復期リハ病棟の管理栄養士の配置人数は、100床あたり平均1.5人⑸と少なく、患者のADLを拡大しQOLの向上を図るため、看護師一人ひとりの積極的な栄養への関わりが求められています。
看護師は、患者の毎食事摂取量だけでなく、栄養がどの程度摂れているのか把握しましょう(写真1)。
また、患者の必要量が充足してない場合、栄養補助食品を提供されていると思います。栄養補助食品の提供時間と量も把握しましょう。当院では、冷蔵庫に患者の栄養補助食品入れを作成し、その日の担当看護師かセラピストよリリハビリテーション後(30分以内の摂取が筋肉合成を高めるため)に提供しています(写真2)。
回復期リハ病棟では、栄養がリハビリテーションを行うために必要不可欠という視点から、モニタリングすることも必要です。

サルコペニアの評価と注意点

訪問看護師です。維持期〔生活期)で既往に脳卒中がある方は、ほぼサルコペニアだから注意するように言われたことがあります。どういう意味でしょうか。
また、どういう点に注意すればいいでしょうか。
サルコペニアは、加齢・活動・栄養・疾患を要因とした骨格筋量減少から身体機能低下を生じる骨格筋疾患のことです(図2・写真3)。
その要因はそれぞれが関連しています。
サルコペニアは身体機能の低下や転倒のリスクが高いと報告されています。また脳卒中患者は、その後遺症から転倒のリスクがあり、サルコペニアの併発がさらに転倒のリスクを高め、廃用症候群、ADL・QOLの低下と悪循環に陥ることになります。そのため、サルコペニア予防の重要なキーワードは栄養と運動です。たんぱく質1g/kg/日以上の摂取と運動が推奨⑹されています。外出が難しい場合、椅子などを用いて、大殿筋や大腿四頭筋などの抗重力筋を意識した有酸素運動をまず一緒に行い、生活リズムの中にも取り入れられるように提案しましょう(図3)。これらは、本人や家族を巻き込むことが大事です。看護師の強みであるコミュニケーションカを発揮しましょう!
引用文献
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1)LucaGianotti et aL.(1993).Arginine-SuppLemented Diets lmprove Survival in Gut-Derived Sepsis and Peritonits by Modulating Bacterial Clearence The Role of Nitric Oxide.ANNALS OF SURGERY.217(6),644-654.
2)日本脳卒中学会(2019).脳卒中がイドライン2015【追補2019】.https://www.jsts.gr.jp/stroke-guidelines/index.htmt(2020年5月1日閲覧)
3)日本慢性期医療協会(2015).医療施股・介護施設の利用者に関する横断調査,https://jamcf.jp/emquete/2015/20150531oudan.pdf(2020年4月22日閲覧)
4)西岡心大他(2015).本邦回復期リハビリテーション病棟入棟患者における栄養障害の実態と高齢脳卒中患者における転帰、ADL帰結との関連.日本静脈経腸栄養学会,30(5).1145-1151.
5)回復朗リハビリテーション病棟協会(編).〔2020).回復期リハビリテーション病棟の現状と課題に関する胴査報告書(達人に訊く!参照).回復期リハビリテーション病棟協会.
6)サルコペニア診療ガイドライン(編),(2017).,サルコペニア診療ガイドライン2017年版.日本サルコペニア・フレイル学会.
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