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ニュートリション・ジャーナル NUTRITION JOURNAL ” 理解なき支援が「溝」を生む” Vol.07 その1

投稿日:2020.11.14

コロナ禍で強まる関心 感染の備えに「免疫力」

2020年1月末、中国武漢から拡大を始めた新型コロナウイルス感染症。いつ急増に転じるかわからない重症者数に、現場の医師らが医療崩壊を危惧し、インフルエンザなどとの同時流行に危機感を募らせている。

このほど栄養士らを対象に行われた「医療・介護現場における新型コロナウイルス感染症の影響と栄養の必要性に関する実態調査(以下、本調査)」※の結果からは、通常業務に影響が及び、患者に対面して行う「栄養指導」などが難しい状況であることがわかった。一方で、栄養状態を良好に保ち、免疫力を整えておくことが感染対策に重要であるという意識の高さも示された。

不安感から外来受診を控え、患者の受療行動が変化している。訪問看護現場での業務変化や患者への影響はどのようなものなのか。その実態を探ってみたい。
※調査主体:ニュートリー株式会社 調査期間:2020年7月27日~8月7日
 調査対象:全国の病院・介護福祉施設の管理栄養士・栄養士・調理師、他
 インターネットにより5.239名に配信し、113件の回答を得た。

感染拡大防止対策と引き換えに生じた問題

本調査では感染拡大防止策の実施により「通常業務に影響が出ている」という回答が約8割を占めた。業務内容の変化としては、①消毒作業の増加(40%)②会議・勉強会の中止(19%)③栄養指導の減少(12%)が挙げられている。
食事内容・調理方法・提供方法の変化としては、「冷凍食品を使う頻度が増えた」「手作り感がなくなってしまった」「献立内容が単調になっている」「ホットプレートなどを使用するメニューは中止し、厨房で全て加熱調理し配膳している」「使い捨て食器になると見た目が落ちる」などの声が寄せられた。

栄養士の耳に届いた患者らの声の中には、「ホールでのイベント食が中止になり楽しみがなくなった」「家族の面会が制限され、差し入れが減少している」などがあり、通常、ご家族からの差し入れがある方からは嗜好品の要求が増えているという。感染拡大前に比べ、患者満足度の低下を懸念し、心を痛めている栄養士も多くいた。

栄養ケア情報の提供に課題

感染拡大防止対策の観点から、医療現場では患者と対面して行う「栄養指導」の自粛を余儀なくされ、患者らは、病態に合わせた栄養療法の実践に繋がる情報取得の機会が減少していることが調査結果から推察できる。また感染への不安から外来受診を控えるなど、患者らの受療行動の変化によって訪問患者数が増加傾向 ※1 にあり、家にこもる患者らに対する栄養ケア情報の提供に課題がある状況が見えてきた。

※1社会保険診療報酬支払基金統計月報
     (令和2年7月診療分)
    第2表管掌別診療報酬等確定状況訪問看護療養費より

訪問看護ステーションしらひげ管理者の望月あづさ氏に、コロナ禍での訪問看護業務にどのような変化が生じ、患者行動や身体にどのような影響が及んでいるのか、また栄養療法の実践についてもお話を伺った。

Q:訪問そのものへの影響は?

A:通常、事業所対象患者数は80~90人ですが、緊急事態宣言発令中は、約1割、訪問時間の短縮や中止の依頼がありました。
訪問中止の患者には、電話で健康状態を確認していました。
Q:業務内容への影響は?

A:
①消毒作業の増加:以前から訪問時には手洗い・消毒を徹底していましたが、訪問時のユニフォームを気になさるご家族もおり、消毒スプレーを噴霧してから入室するようになりました。事業所内でも標準予防策に加え、消毒作業が増えましたね。またご家族の理解を得るため、事業所が行う感染防止対策の取組内容をまとめ、配布しています。

②研修・勉強会の中止:緊急事態宣言下では研修会などが実施できず、情報収集の機会が減少していました。現在はWEBの活用が進み、また少人数での勉強会は再開傾向にあります。

③事務作業の増加:厚労省の通達が日々変化していました。助成金の申請や患者へ根拠ある正確な情報を伝達するための工夫など、管理者の負担が激増していました。

④個人防護具の不足:衛生用品の価格が高騰し、入手が困難になりました。マスク、消毒液など、寄付のおかげでしのげた面もあります。
Q:患者への影響は?

A:
①行動の変化:患者様もご家族様も不安感が大きく、戸外、特に感染リスクが高いという認識から病院の受診やデイサービスの利用を控える傾向がありました。デイサービス側も入浴以外の通所や家族がテレワークの場合は通所自粛を要請していましたね。

②身体の変化:外出自粛により活動時間・範囲が狭まり、歩行困難や気持ちの落ち込みなどの変化が見られる患者様もいらっしゃいました。

③食事の変化:行動や身体の変化に影響を受けて、食欲不振から、偏食がちになった患者様も。摂食嚥下機能の低下や喫食量の減少から低栄養に陥ってしまった方もいらっしゃいます。

緊急事態宣言発令中は、老々介護で買い物や調理が難しい家庭では、特に偏食や喫食量の減少が顕著だったようだ。宣言解除後、低栄養状態を心配し、訪問看護を新たに依頼する家庭もあったという。
望月あづさ(もちづき・あづさ)

国立千葉病院(現:独立行政法人国立病院機構千葉医療センター)、国立療養所松戸病院・(現:国立がんセンター東病院)を経て平成4年より医療法人社団誠和会白髪橋病院(現:医療法人伯鳳会東京曳舟病院)に勤務。平成9年訪問看護ステーションしらひげ開設に伴い管理者に。平成27年に開設された看護小規模多機能型居宅介護ライフサポートナース向島の管理者兼計画作成担当者として現在に至る。在宅療養のジェネラリスト・スペシャリストとして培ってきた手腕を発揮。

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