森永乳業クリニコ株式会社 × ナースの星Webセミナー
在宅における栄養看護の実践
~創傷・褥瘡ケアのポイント~
投稿日:2025.03.31
社会の超高齢化により在宅療養の需要が増大するなか、在宅における栄養看護の重要性が高まっています。在宅療養の高齢者に多く見られる創傷や褥瘡のケアでは、洗浄や創傷被覆材の使用などの局所ケアに注目しがちです。しかし、在宅では使用できる物品が限られていることからも、創傷の治癒を内側から支える栄養管理が特に重要となります。適切な栄養状態を維持することで、創傷の回復を促し、在宅でのケアをより効果的に行うことができます。
こうした背景を踏まえ、2025年3月3日にセミナー『森永乳業クリニコ株式会社 × ナースの星 在宅における栄養看護の実践~創傷・褥瘡ケアのポイント~』が開催されました。セミナーでは、Five Star訪問看護・栄養管理Station管理者であり、栄養治療専門療法士、NST専門療法士の朝倉之基先生より、低栄養リスクの影響と褥瘡予防・治癒における栄養の重要性、アルギニン・コラーゲンペプチド含有飲料を活用した症例について、解説をしていただきました。
こうした背景を踏まえ、2025年3月3日にセミナー『森永乳業クリニコ株式会社 × ナースの星 在宅における栄養看護の実践~創傷・褥瘡ケアのポイント~』が開催されました。セミナーでは、Five Star訪問看護・栄養管理Station管理者であり、栄養治療専門療法士、NST専門療法士の朝倉之基先生より、低栄養リスクの影響と褥瘡予防・治癒における栄養の重要性、アルギニン・コラーゲンペプチド含有飲料を活用した症例について、解説をしていただきました。

講師
Five Star訪問看護・栄養管理Station 管理者
栄養治療専門療法士/NST専門療法士
Nurse Innovation株式会社 代表取締役
認定看護管理者
Five Star訪問看護・栄養管理Station 管理者
栄養治療専門療法士/NST専門療法士
Nurse Innovation株式会社 代表取締役
認定看護管理者
朝倉之基 先生
在宅療養高齢者の栄養状態と栄養看護の重要性
高齢者の健康寿命を延ばすには、「動きやすい身体を作る運動」「体力・筋力維持のための栄養」「継続を支える社会的つながり」が不可欠です。日本栄養治療学会の『静脈経腸栄養ガイドライン』でも、栄養管理は医療の基本であり、適切な栄養補給が健康維持に不可欠であると示されています。
加齢に伴い、臓器機能の低下や回復力の低下が進み、ADL低下や病状の重篤化を招きやすくなります。特に在宅療養の高齢者では慢性的な低栄養が筋肉量の減少を招き、サルコペニアからフレイルへと進行するリスクがあります。フレイルは身体機能だけでなく、精神的・社会的な活動の低下を引き起こし、低栄養を助長する悪循環を生みます。

健康な高齢者でも通常の食事だけでは痩せることがあり、療養生活を送る高齢者ではさらに栄養状態が悪化しやすくなります。適切な栄養管理を行うことは、フレイルの進行を防ぎ、身体・心・社会のつながりを維持することに繋がります。これは筋力の維持だけでなく、心身の健康を支え、在宅療養の質を向上させるためにも不可欠といえるでしょう。
創傷・褥瘡治癒に必要な栄養と新たな栄養補助食品の活用
創傷治癒のプロセスにおいては、傷の修復に必要な酸素や栄養を適切に届けることが重要です。そのためには、血液成分や循環機能を最適な状態に保つことが求められます。具体的には、①血液成分を整えるとともに、創傷治癒に必要な栄養素を十分に摂取し、血液成分の「質」を高めること、②血液の流動性と循環の勢い(潮流)を確保することが重要です。血液成分が維持されていても、水分が不足すれば血液の粘度が高まり末梢組織に酸素や栄養を届けにくくなります。つまり、単に「血液をサラサラにする」ことが水分補給の目的ではなく、体内の水分量を適切に保ち、血流を十分に確保することは、創傷部位への酸素・栄養供給を支える鍵となります。こうした循環環境の整備が、創傷治癒を促進するうえで欠かせません。
褥瘡は、長時間同じ姿勢でいることによって皮膚やその下の組織が圧迫され、血流が滞ることで発生します。さらに、褥瘡の発生には「圧迫」だけでなく、「摩擦」や「ずれ」といった要因も関係しています。このような状態が続くことで、皮膚の損傷が表面だけでなく皮下の組織や筋肉など深部まで進行し、場合によっては骨にまで到達する場合もあります。
褥瘡の治療には、傷に対する局所治療と、全身状態を整える栄養管理が重要です。栄養状態を整えることで、免疫機能が向上し感染リスクが低下し、皮膚の抵抗力が高まることで新たな褥瘡の発生も防げます。 さらに、十分なエネルギー摂取により筋肉量の低下を防ぎ、全身状態の改善にもつながります。


創傷・褥瘡の治癒過程では多くのエネルギーやたんぱく質が消費されるため、通常の栄養摂取だけでは不足しがちです。そこで、私たちは栄養管理の一環としてアルギニン・コラーゲンペプチド含有飲料を活用し、治癒促進に良好な効果を実感することができました。
この飲料は1本200kcalで、アルギニン、コラーゲンペプチド、亜鉛、ビタミンCなど、創傷治癒に有用な栄養素をバランスよく含んでいます。必要な栄養素を効果的に補給し、組織の修復をサポートすることができるオールインワンの栄養補助食品と言えます。
この飲料は1本200kcalで、アルギニン、コラーゲンペプチド、亜鉛、ビタミンCなど、創傷治癒に有用な栄養素をバランスよく含んでいます。必要な栄養素を効果的に補給し、組織の修復をサポートすることができるオールインワンの栄養補助食品と言えます。

アルギニン・コラーゲンペプチド含有飲料の摂取後、 創傷治癒の経過に変化が見られた2つの症例

症例1:90代女性
・既往/アルツハイマー型認知症、慢性心不全
・日常生活自立度:C-2、認知症生活自立度:Ⅳ
・ほぼ寝たきりの状態。車いす乗車や、促せば経口摂取は可能。
・日常生活自立度:C-2、認知症生活自立度:Ⅳ
・ほぼ寝たきりの状態。車いす乗車や、促せば経口摂取は可能。
排泄コントロール目的での介入のために定期訪問時、仙骨部にステージⅡの褥瘡を発見。創傷被覆材で保護を開始し、通常の食事に加え栄養管理としてアルギニン・コラーゲンペプチド含有飲料を1日1本、飲用した。
発生から12日目で褥瘡はほぼ治癒しており、15日目には創傷被覆材をはがし完治していることを確認。本人は経口摂取ができたので、ヘルパーや家族にも協力してもらい、1日1本のアルギニン・コラーゲンペプチド含有飲料の飲用を継続することができた。創傷被覆材と栄養補助食品だけで、ここまできれいに完治したことは個人的にも驚きであった。

アルツハイマー型認知症の方に褥瘡が発生すると、身体機能面では痛みや感染リスクが高まり、活動量の低下によって全身の衰弱が進みやすくなります。認知機能面では、痛みや不快感がストレスとなり、混乱や興奮、せん妄のリスクが増加することが懸念されます。さらに、家族のケア負担も大きくなり、頻繁な体位変換や創傷処置が必要となることで、身体的・精神的な負担が増加し、介護疲れにつながる可能性があります。そのため、褥瘡の早期発見と早期治癒が重要です。日常的なスキンケアや適切な体位管理はもちろんですが、栄養管理の重要性を実感した症例です。

症例2:50代女性
・既往/気分変調症、知的障害、慢性心不全、糖尿病
・日常生活はほぼ自立
・コミュニケーションは取れるが、十分な理解ができているかの判断は難しい
・日常生活はほぼ自立
・コミュニケーションは取れるが、十分な理解ができているかの判断は難しい
外出の際、玄関先でつまずいて転倒し、膝に受傷。セルフケアの指導を行い、自分で洗浄して外用薬を使用。傷は徐々に回復したが再度転倒し、同じ部位に受傷する。2度目の転倒後に、1日1本のアルギニン・コラーゲンペプチド含有飲料の飲用を開始した。
2度目の受傷から約4週間で完治に至る。本人は、「1度目の傷と比べて、治癒までの過程や創傷部位の洗浄時の痛みが少なかった」と発言があり、たいへん喜んでいた。

糖尿病の方は、血流の低下や免疫機能の低下により、創傷治癒が遅れやすく、感染のリスクが高まります。そのため、創傷ケアにおいては、外部からの処置だけではなく、栄養状態を整えることで治癒力を高め、感染リスクを減らすことが重要です。
また、知的障害がある方の場合、自身で痛みや不快感を訴えにくかったり、適切な食事や水分摂取が難しく、栄養不足が見逃されやすいため、栄養管理による内側からのサポートが不可欠です。食事の管理が難しいケースの創傷ケアにおいても個別の状況に応じた栄養管理支援を行うことで創傷治癒を促すことができた症例です。
在宅における高齢者の栄養看護は、極めて重要なミッションである
今後、ますます在宅療養の需要が高まるなか、在宅では急いで治すことよりも健康寿命を延伸させること、そして最後まで食べられる環境を作ることにより、その人らしい生き方を支えるなど、生活インフラの整備が重要になるでしょう。なかでも高齢者の栄養看護は極めて重要なミッションであり、栄養管理は看護の基本であること、創傷・褥瘡は外からだけでなく内側からも介入すること、そして在宅における栄養管理は未病の状態から介入することが求められます。
参考文献
日本静脈経腸栄養学会 編:静脈経腸栄養ガイドライン 第3版.照林社,2013.
日本静脈経腸栄養学会 編:静脈経腸栄養ガイドライン 第3版.照林社,2013.
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