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ナースマガジン vol.49

【何ぞやシリーズ第44回】胃内残量を測る意味って何ぞや?

投稿日:2025.02.12

経管栄養中に、経鼻胃管や胃ろうから胃の内容物を吸引し、その残量によって栄養の投与速度や量を調整するケアが行われています。ただ、胃内残量は何mLまでが許容範囲で、また多い場合にはどうすればよいのでしょうか。そもそも胃内残量を測る意味って何ぞや?
処方カスケードってなんぞや?
作画 : 上田みう   制作 : マンガエッグ・エンターテイメント

個々に異なる胃内残量を測る意味

胃内残量が多いと、次の経管栄養の時間をずらしたり、スキップしたりすることがある。ただ、胃内残量の考え方は施設によっても異なり、
基準値を定めてルールを設定する場合もあるんだ。
うちの病院では、200ml以上の胃内物が引けたら、次の分の経管栄養をスキップするルールになっています。
注意しなければいけないのが、吸引できる胃内残量には個人差があること。例えば、その方の疾患や胃の形状、カテーテルの留置位置、ADLなど、多くの要因が重なって胃内残量を左右しているんだよ。
じゃあ「胃内残量が多かったら経管栄養を1食分スキップする」というルールは、全員には当てはまらないってことですね。
その通り。さまざまな条件で胃内残量は異なるのに、それを踏まえたケアをしなければ、胃内残量を測る意味がないだろう?それに、経管栄養をスキップするということは、接種できるはずだった1食分の栄養が失われてしまうことになるんだ。一人ひとりの胃内残量を評価し、ケアにつなげることが大切なのさ。

胃内残量が多い場合のケア


実際に、胃内残量を確認して、どんなケアにつなげればいいんですか?
胃内残量が多いのは 、内容物がスムーズに十二指腸に運ばれずに残留しているということなんだ。その原因はさまざまだが、スキップ以外にもできることはある。例えば、側臥位でいる時間が長い場合に胃内残量が多ければ、側臥位に体位交換したり、車椅子に移乗して過ごしたりすれば、消化が促進されるかもしれない。私はよく患者さんに腹部マッサージをしているよ。
なぜ胃内残量が多いのかを考えて、いろいろなケアを試してみることが必要なのね。
経鼻胃管は多く引けやすく、一方で胃ろうではあまり引けないことがあるように、さまざまな要因で個人差は生じる。これを踏まえたうえで
、一人ひとりの患者さんをアセスメントすることが重要なんだ。私たちの仕事は、何も考えずにただスキップするだけではないだろう?患者さんの個別性に合わせたケアを提供するのが医療従事者の役割であり、これが胃内残量を測る最も重要な意味であることを忘れてはいけないよ。

経鼻 ・ 胃ろう以外の投与ルート
PTEG(ペーテグ/経皮経食道胃管挿入術)

経管栄養の投与経路として、「PTEG」を知っているかい?PTEGは、頚部食道をエコーとレントゲン透視で確認しながら食道ろうを造設する術式のこと。食道ろうから消化管にカテーテルを挿入することで、胃ろうと同様に、経管栄養の投与や消化管の減圧に用いることができるよ。
同じことができるなら、胃ろうじゃダメなのかな?
PTEGは、胃全摘や腹水貯留などで胃ろう造設が困難なケースが適応だよ。安全に低侵襲で造設できるというメリットがあるんだ。また、腹壁と胃を癒着させる胃ろうでは、蠕動運動が障害されるケースがあるが、PTEGにはそれがない。減圧についていえば、胃ろうよりも効果があると言われていて、緩和ケアではよく用いられているよ。
胃ろうとは違うメリットがあるんですね。じゃぁ経鼻胃管とはどう違うんですか?
経鼻胃管は、鼻腔や咽頭に痛みや異物感、違和感があり、ストレスを与えてしまう、また、カテーテル留置によりスムーズな嚥下が妨げられ、誤嚥しやすくなることもあるよ。鼻腔や咽頭を通過しないPETGなら、こうしたデメリットをなくすことができるんだよ。
患者さんにとって、選択肢が増えるのはいいことよね。一人ひとりにあわせた選択を支えられるよう、私たちも学び続けなくっちゃね!
(つづく)

1994年に大石英人医師らによって日本で開発された手技


監修:東邦大学医療センター大森病院 栄養治療センター部長 NST チェアマン 鷲澤尚宏 先生

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