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ナースが知っておきたい基礎知識

信頼できる予防接種を提供するために

投稿日:2025.01.10

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行以降、予防接種は準備から時には接種そのものまで、看護師の皆さんがこれまで以上に多く携わる重要な業務となりました。しかし、日々アップデートされる予防接種に関する知識を深める機会は限られているという声も聞かれます。 

 そこでナースの星では、医療法人自然堂峯小児科の理事長・院長である峯眞人先生によるWebセミナー「クリニックにおける予防接種の実践的すすめ方と誤接種対策~小児科での経験を通じて~」を開催し、予防接種に関する考え方や実践的な知識について解説しました。
(Webセミナー開催日 2024年3月28日)
医療法人自然堂
峯小児科 理事長・院長
峯眞人 先生

この10年の間に大きく変化した日本における予防接種環境の変化

 日本における予防接種の環境は、 ここ10年で大きく変化しています。これまで、わが国の予防接種を取り巻く環境は諸外国に比べて遅れており、それは 「ワクチンギャップ」という言葉で表現されてきました。 しかし近年、このようなワクチンギャップが次々と解消され、その動きはさらに加速しています。加えて、改良型のワクチン、多価ワクチン、同 一 効能ながらも異なる製薬メーカーが供給するワクチンなど、さまざまな新しいワクチンが登場してきました。さらに、定期接種や特例臨時接種、任意接種、任意接種公費負担など、予防接種に関する制度も変わってきています。

 従来の予防接種は主に小児を対象として、私たちのような小児科の医療機関が多く携わってきました。しかし近年では、成人を対象とした予防接種の機会が増えており、その傾向は今後もさらに増えていくと考えられます。接種手技についても、これまで日本における予防接種は基本的に皮下注射で行われてきましたが、COVID-19に対する予防接種をきっかけに、諸外国と同様、筋肉注射での接種が増えています。これは、筋肉注射が皮下注射に比べて局所反応が少ない上、免疫原性が同等かそれ以上であることが知られているためです。

質の高い接種環境を実現するために

 より質の高い予防接種の環境を作るために、まず着目していただきたいのが、臨床における予防接種の間違いです(図1)。
 なかでも最も頻発する間違いは 「接種間隔」です。2018年に行われた厚生労働省の調査では、予防接種における間違いのうち、56%が「接種間隔を間違えてしまった」というものでした。ただし、2020年10月から予防接種間隔の規定が変更され、注射生ワクチンの連続接種については従来通り4週間(中27日)の間隔をとらねばなりませんが、それ以外のワクチンについては接種間隔の制限が無くなりました。これにより接種間隔の間違いは改善されつつあります。その上で予防接種においては、その流れにおける場面(図2)ごとに注意すべき点があり、それぞれにおいて適切な管理や手技が求められます。
 これからの予防接種は、 従来の小児を主な対象としたものから、 成人や高齢者まで、 その人の生涯を通じた予防接種に変わり、 そのための医療プログラムが次々再考される時代となっています。 予防接種の副反応のリスクは完全には避けられません。 しかし、予防接種は病気を予防し、 かかっても軽症で済むことでQOL向上や健康寿命への貢献、 医療費の削減が見込まれます。 こうした考え方をLife-course Immunization(ライフコースイミュニゼーション、生涯を通した予防接種) と呼び、世界保健機関 (WHO)も提唱しています。
 Life-course Immunizationの実現を目指すには質の高い予防接種の環境を作る必要があり、 そのためには医療安全に対する重要性の認識や予防接種に関する基本的な知識を、医師や看護師だけでなく、その他の医療従事者や事務職員など、スタッフ全員が共有することが重要です。1人の接種対象者、1回の接種機会の対応の積み重ねを意識し、漫然と予防接種に携わることが無いようにしなければなりません。その上で、予防接種に関する最新情報の定期的な学習と共有、接種環境の整備、複数人での安全確認の徹底、ワクチンの適切な温度や有効期限の管理、使用済み注射器の適切な破棄などを行うことが求められます。

予防接種は代表的なチーム医療

 チーム医療の重要性は、 あらゆる診療科で指摘されていますが、 実は代表的なチーム医療のひとつが予防接種です。 予防接種に関する情報については、 医師や看護師、 受付の職員など、 すべての関係者で共有することが重要です。 予防接種とは、 健康な人にワクチンを投与することで病気を予防し、 発症した場合でも重症化を防ぐことを目的とした予防医療です。 また、 感染を広めないことで、 基礎疾患やアレルギーなどの理由で接種できない人々を守る役割も果たします。 だからこそ誤接種や副反応などのトラブルについても関係者全員がよく理解し、 最新の知識や科学的に正しい情報を共有しておかなければなりません。
 小児から高齢者まで誰もが安心して予防接種ができる環境を整えることにより、 地域で生活するすべての人をVPD※(Vaccine Preventable Disease)から守ることを目指してほしいと思います。
※VPD:ワクチンで防げる病気

予防接種によって、すべての人が守られる社会を目指して

 私たち小児科医は長年予防接種を行い、それに伴うさまざまな問題を乗り越えるための努力をしてきました。その結果、近年ワクチンギャップが改善され、予防接種に関する啓発活動もひと段落したかと考えていました。しかし、今後はLife-course Immunizationという考え方 から、改めて私たちが積んできた経験や知識を多くの医療関係者に向けて発信し、予防接種によって小児から高齢者まですべての人が守られる社会の実現を目指していきたいと考えています。
参考:
1)一般社団法人 日本ワクチン産業協会 予防接種に関するQ&A集 2023 P39
http://www.wakutin.or.jp/medical/pdf/qa_2023.pdf (2024年9月現在)
2)厚生労働省 第41回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 「予防接種に関する間違いについて」
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000692196.pdf (2024年9月現在)
3)厚生労働省 「ワクチンの接種間隔の規定変更に関するお知らせ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou03/rota_index_00003.html (2024年9月現在)
4)WHO. Immunization Agenda 2030;
https://www.who.int/teams/immunization-vaccines-and-biologicals/strategies/ia2030  (2024年9月現在)

GSK Medical

日本の医療従事者を対象としたGSK Medical Affairs Portalサイト内に、2024年9月より看護師向けコンテンツが増えました。
予防接種の基礎を動画でわかりやすく学べます。
ぜひアクセスしてみてください!
https://medical.gsk.com/ja-jp/vaccine/hcp/
NX-JP-AVU-BKLT-240002 2024年9月作成

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