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患者・同僚・管理者に好かれるデキるナースになる第2回

患者・同僚・管理者に好かれるデキるナースになるシリーズ第2回

投稿日:2016.06.10

        これからのナースに求められるケアの質とは ~効率的で効果的な質の高い医療的ケアを知る~
        第2回 褥 瘡 の「 予 防 & ケ ア 」の ポ イ ン ト
     ~ ア セ ス メ ン ト と 用 品 を 活 用 し た 個 別 ケ ア ~

入院患者の褥瘡発生が、創部洗浄等のケア発生・入院日数の長期化につながり、看護師の業務負荷や物品コストが褥瘡の無い患者よりも多くかかっ てしまいます。今回、独立行政法人 地域医療機能推進機構 船橋中央病院の副看護師長で皮膚・排泄ケア認定看護師である茅野昌子先生にお話を 伺い、褥瘡の「予防&ケア」のポイントと褥瘡患者対応にかかるコスト試算を行いました。

-褥瘡が発生しやすいのはどんな方ですか?

院内褥瘡患者の傾向として多いのは、がん、骨・関節疾患、感染症(肺 炎)等の患者です。これら主疾患の症状により、褥瘡予防のための「体 位変換」が苦痛となるためにできないというジレンマがあります。

例えば肺がん終末期で呼吸苦症状がある場合、安楽な同一体位とな ることが多く、同じ場所に圧がかかりやすくなります。褥瘡予防のた めに、定期的に体位変換を行うことが一般的な看護ケアですが、体位 変換を行う事で苦痛のほうが大きくなってしまう場合があります。褥 瘡は作りたくないため、患者・ご家族と医療者とで話し合い、ケアの 方向性を見直すことが必要となります。

年齢の傾向として、後期高齢者(75歳以上)の褥瘡発生が60%に 上ります。一方、65歳未満の褥瘡発生も20%あり、全入院患者に対 するリスクアセスメントの重要性を感じます。

-褥瘡発生の予防対策として、どのような取り組みをしていますか?

「リスクアセスメント」「圧迫・ずれ対策」 「必要な栄養の確保」などを意識して取り組んでます。

1)リスクアセスメントについて

入院時、新生児から後期高齢者まで全員に褥瘡発生のリスクアセ スメントを実施して褥瘡発生リスクの有無を評価し、その後も定期 評価日を設けて継続評価します。褥瘡ハイリスク項目に該当した場 合は、褥瘡管理者が個別の褥瘡治療・予防計画を立てます。

入院時に褥瘡がある場合や入院後に褥瘡発生した場合も個別に介 入しています。ケア内容としては、圧迫とずれの排除、スキンケア(清 潔保持)、リハビリテーション(ADLの維持・改善、ずれの低減を含 む)、栄養管理があります。そして、医師や薬剤師、理学療法士、管 理栄養士、事務部門とも横断的な連携を持ちながら介入します。

当院には前述の多職種からなる褥瘡対策委員会があます。この委 員会活動では、NSTや医療安全管理者との情報共有も横断的に行われています。

2)圧迫・ずれ対策について

体位変換は2~3時間おきに行い、患者さんの痛みや苦痛の訴えが 強い場合は2名で慎重に行うこともあります。疼痛が強い場合や、 触れられると眠れない方には、夜間の安眠のために、体位変換機能 付きマットレスを活用することもあります。その場合は必ず評価を 行い、マットレス変更後に眠れたのか、皮膚の発赤はないか等を見 極めます。

ずれに関しては、体圧分散マットレスだけでは防ぎきれないので、 クッションの活用や背抜きを行うなど必ず人の手が入ります。

在宅療養支援を行う際、病院で行っているように定期的な体位変 換の継続を検討しますが、実際は老々介護となる家庭も多く、介護 負担が大きく実施困難なことが多々あります。その場合は、どのよ うな体位が療養者にとって安楽なのか、その体位をご家族が整える にはどんな方法が良いかを検討します。その上で、ご家族には療養 の支援となる着替えの介助や食事の体位の整え方など、療養者の動 きに合わせた介助方法を中心に支援します。在宅での介護力や環境 を把握し療養計画を立案することが重要です。在宅では寝返りが少 しでもできる方は、寝返りしやすいウレタンフォームマットレス、寝返りが困難な方には体位変換機能も考慮してエアーマットレスを ご提案しています。

また、テープのはがし方、皮膚の拭き方一つで皮膚を傷つけてし まうこともあるので、予防的スキンケアにも注意を払っています。

褥瘡ケアの際、何気なくテープをはがしたり、洗浄後に擦って拭 く事で、角質の摂り過ぎや摩擦によるバリア機能の低下をきたし、 二次的に皮膚を傷つけてしまうことがあります。創傷を治すのは大 変ですが、傷つけてしまうことは容易です。加齢や、低栄養、浮腫、 湿潤がある方の皮膚は非常に弱いので、ずれや摩擦による皮膚損傷 のリスクが大きいことを実感しています。

3)必要な栄養の確保について

褥瘡を予防するためには栄養補助食品も採用しています。褥瘡予 防のためには栄養アセスメントを行いエネルギーやタンパク質等の 確保を行いますが、褥瘡が発生した場合は再評価を行い、更に微量 元素、アルギニン、ビタミンなどを追加します。これらを強化した 製品を使用する際は、費用対効果を考え目標や期間を決めて取り入 れています。

標準予防策が入院基本料内で行われているので、最低でも2週間に 1回は褥瘡リスクと合わせて栄養アセスメントも行っています。その 評価によって、NSTが介入します。

-褥瘡が生じた時はどのようなケア用品が必要になりますか?

「洗浄用品」「外用薬・被覆材」などが必要となります。

1)洗浄用品について

褥瘡ケアを行う際は、褥瘡と周囲皮膚を洗浄するので、洗浄剤や 洗浄ボトル(陰部洗浄用と別に用意)、使い捨て手袋などを用意しま す。失禁がある場合は撥水性クリームを塗ることもあります。在宅 ケアを踏まえ、洗浄剤は感染リスク・予防的スキンケア・簡便性を考 慮して、ポンプタイプ・弱酸性・泡状のものをご提案しています。

2)外用薬・被覆材について

褥瘡の滲出液の量や性状、壊死組織の有無、感染徴候の有無によっ て、当院では5種類の薬剤を使い分けています(カデキソマー・ヨウ 素、ポビドンヨード・シュガー、スルファジアジン銀、ブクラデシンナトリウム、プロスタグランジン E1)。

外用剤の使用の際には、褥瘡を覆うガーゼ、つまり二次ドレッシ ング材の選択も重要です。ガーゼをはがす際に創部にガーゼが固着 すると二次損傷を起こすこともあります。その場合当院では、非固 着性ガーゼを使用しています。二次損傷による悪化は、使用する薬 剤やガーゼなどが増える可能性もあります。ケースごとに何を選ぶ か、またそれを使うことのメリットデメリット、正しい使い方、そ れらを身につけることが褥瘡ケアには求められます。

当院の場合、院内発生する褥瘡の95%が浅い褥瘡です。早期発見 して洗浄、被覆することにより、平均10日で治癒しています。創傷 被覆材を使用して2~3日で交換し、滲出液の量や性状を確認して感 染徴候が無ければ、3~4日後に交換して再評価します。

一方、主疾患の症状コントロールが困難で、圧迫やずれを低減で きない場合は、浅い褥瘡でも難治性となる方が1割ほどおり、治癒 までに期間を要しています。褥瘡は、要因に対して対策がとれるか どうが創傷治癒促進に直結すると感じます。

-委員会など、褥瘡対策の活動について教えてください。

褥瘡対策委員会は、各部署のリンクナースが参加しています。経 験3~4年の熱意あるナースが多く、若いパワーが牽引している組 織です。

毎月褥瘡対策委員会が開かれ、そこでミニレクチャーを開催して います。褥瘡ケアに関わるナースには、自身の強みとなる知識と技 術を蓄えてもらいたいので、リクエストを募ってニーズに応じた テーマでのミニレクチャーを行っています。そこに参加したナースから「このテーマはわたしの病棟でも勉強会をして活かしたいの で、手伝って欲しい」などの声もあがります。各部署でも体験型 の内容や、ケアにすぐ活かせる内容など、タイムリーな研修が展 開されています。

研修の成果として、ほとんどのナースが、ポリウレタンフィル ムドレッシングやサージカルテープの正しい剥がし方などを理解 し実践できています。

-褥瘡の状態に合わせた治療・ケア用品の選択について、病院経営の視点からはどうお考えですか?

外用薬は毎日洗浄して塗布するため、感染創や肉芽増殖に適して います。一方、創傷被覆材は、肉芽増殖や表皮形成の促進に適して います。DPCを導入しているから創傷被覆剤を使わない、という施 設もあるかもしれません。しかし、褥瘡の状態を評価し、状態にあっ た外用剤と創傷被覆剤を使い分ける事で創傷治癒を促進し、処置の 頻度やケアにかかる時間を最小限にでます。

褥瘡ケアは、単に褥瘡を治す事ではなく全身状態を整え QOLを上げるケアでもあると考えています。また、合併症予防により在院 日数の短縮にもつながるケアです。限られたマンパワー、資源の中で、 効果的で質の高いケアを実践できる看護力でトータルコストを低減 できます。

そのためにも、リスクアセスメントを行い個別に合わせたケアを 実践提案できる力を培い、皆で「できるナース」になりたいですね。
病院の褥瘡発生率は0.36~1.89%といわれてます。今回、紹介させて いただいた事例にあるとおり、院内での褥瘡発生については発赤などの軽 度の浅いものや創傷が多く、重度の深い褥瘡は在宅からの持込がほとんど であるように思います。

院内における褥瘡発生の予防は、褥瘡発生のリスクアセスメントによる リスク判定、判定内容に合わせたケアの充足が重要だといえます。院内で 褥瘡が発生すると、治療に2週間近い期間を要してしまい、追加の処置コストが発生します。重度の深い褥瘡の治療期間は数ヶ月~1年にも及び、 業務負荷、治療費などは更に増大し、経営視点からみてもデメリットは大 きいのです。

褥瘡リスクのアセスメントによる判定を正確に行い、褥瘡リスクのある 患者に対しては適切にケアを行うことで、褥瘡の発生を未然に防ぐことに つながります。褥瘡は未病と早期発見・早期治療による重症化予防が大切 だといえます。

日本褥瘡学会発行:「褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)」

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