認知症マフ~認知症ケアの新しい選択肢~
投稿日:2024.12.02
認知症ケアの新たなアプローチとして、イギリスで活用される「認知症マフ」が日本でも注目されています。期待される効果や実践例について、認知症看護認定看護師の田森智美先生に伺いました。
田森智美 先生
磐田市立総合病院
認知症看護認定看護師
認知症看護認定看護師
認知症マフとは?
認知症マフ(以下、マフ)は、筒状のカラフルにデザインされたニット製品です。両サイドから手を入れて温めたり、内側・外側に取り付けたアクセサリー触ったりすることができます。認知症の方の落ち着かない手を穏やかに温かく保ち、触覚や視覚などの感覚を刺激することで、緊張を解きほぐし安心感を得る効果があると言われています。
特に、触覚の心地よい刺激を好む方や、視力低下により外部からの感覚刺激の少ない方、コミュニケーションが困難な方に適しています。また、ミトンによる身体拘束の代替ケアとしても使用されています。国内では病院や在宅、高齢者施設などで活用されはじめており、認知症ケアに新たな風を吹き込んでいます。
特に、触覚の心地よい刺激を好む方や、視力低下により外部からの感覚刺激の少ない方、コミュニケーションが困難な方に適しています。また、ミトンによる身体拘束の代替ケアとしても使用されています。国内では病院や在宅、高齢者施設などで活用されはじめており、認知症ケアに新たな風を吹き込んでいます。
好みの色や思い出の小物、柄を編み込んだマフを活用することで温かな刺激とコミュニケーションが生まれる
認知症ケアにおけるマフの効果
患者:D氏 80代女性 要介護3 大腿骨頸部骨折により手術目的で入院
既往:アルツハイマー型認知症
術後、疼痛管理とリハビリを実施。手術数日後から落ち着かない様子が見られ、頻繁に家族の名前を呼ぶようになる。夜間の不眠から、昼夜逆転も出現していた。症状改善目的にてマフ導入を開始した。
既往:アルツハイマー型認知症
術後、疼痛管理とリハビリを実施。手術数日後から落ち着かない様子が見られ、頻繁に家族の名前を呼ぶようになる。夜間の不眠から、昼夜逆転も出現していた。症状改善目的にてマフ導入を開始した。
本人が選べるよう複数のマフを用意したところ、紫色が好きなD氏は紫色のマフに手を伸ばして触れ始めました。マフに取り付けたぬいぐるみをかわいがり、その日からリハビリやレントゲンなどに一緒に持っていくようになりました。家族の名前を呼ぶ回数は減り、若い頃に編み物をしていた思い出をきっかけに、スタッフとの会話が自然に生まれ、次第に笑顔も増えていきました。夜間はマフを抱えて寝るようになり、不眠も改善されました。
スタッフの行動にも変化が現れ、マフを抱えるD氏に「かわいいですね」と声をかけたり、D氏を気にかけたりする頻度が増えていきました。 マフ自体がコミュニケーションを促進するツールとしても活用され、D氏の心理的ニーズを満たし、症状の改善につながった事例でした。
スタッフの行動にも変化が現れ、マフを抱えるD氏に「かわいいですね」と声をかけたり、D氏を気にかけたりする頻度が増えていきました。 マフ自体がコミュニケーションを促進するツールとしても活用され、D氏の心理的ニーズを満たし、症状の改善につながった事例でした。
マフを介してつながり地域と共に歩む認知症ケアへ
マフはスタッフによる自作とボランティアの方々からの寄付で用意しています。実はD氏にお渡しした最初のマフは、私の母が編んでくれたものです。地域の編み物サークルの方々も協力してくれており、入院中の患者さんが編んでくれたこともありました。編み物サークルの方からは「年齢を重ねてからも誰かの役に立てるのは嬉しい」という感想があり、 認知症のある方と、その方々を支える世代のつながりも生まれているように感じました。
認知症には、まだ偏見や特別な意識を持たれることがあります。その解決には認知症への理解が必要で、マフはその一助になると考えています。認知症ケアは決して特別なことではありません。ほんの少しの思いやりや、相手の立場を考える気持ちを持つところからスタートしましょう。私もマフを活用しながら、認知症ケアの理解を広めていきたいと思います。
認知症には、まだ偏見や特別な意識を持たれることがあります。その解決には認知症への理解が必要で、マフはその一助になると考えています。認知症ケアは決して特別なことではありません。ほんの少しの思いやりや、相手の立場を考える気持ちを持つところからスタートしましょう。私もマフを活用しながら、認知症ケアの理解を広めていきたいと思います。
マフ制作・活動に関する Webを紹介
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