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西山順博先生に訊きました 第3回

西山順博先生に訊きました 『ケアに活かせる栄養療法の豆知識』第3回

投稿日:2016.11.07

現代病に立ち向かう中鎖脂肪酸

~ココナッツオイルのはたらき~

三大栄養素の中で最もカロリーの高い脂質(9kcal/1g)は、おもに炭素、酸素、水素から作られており、その特徴は成分の約90%を占める脂肪酸によって決まります。
今回は、脂肪酸を構成する炭素の鎖の長さ(炭素数)に注目し、中鎖脂肪酸とそれを多く含むココナッツオイルの特徴を述べてみます。

高カロリー摂取が「短時間・少量」で可能

中鎖脂肪酸(Medium-Chain Triglyceride : MCT)は、ココナッツやパームフルーツに含まれる天然成分です。母乳や牛乳などにも含まれており、私たちも普段から摂取しています。
脂肪酸は長さによって分類でき、キャノーラ油・オリーブオイル・ラードなどの一般的な植物油は、「長鎖脂肪酸(Long-Chain Triglyceride : LCT)」に分類されます。

脂肪酸が長い(炭素数12以上)ため、吸収されエネルギーになるまでの時間が長くかかります。

一方、MCTの長さは、その約半分(炭素数8~12程度)です。
このため水に溶けやすく、小腸から吸収し門脈を経由して肝臓に運ばれ、速やかに分解されて短時間でエネルギーになることが知られています。
これまでMCTは、タンパク質投与がしにくい腎臓病の患者さん、糖質投与がしにくい糖尿病患者さん、消化器系の手術を 行いLCTの利用がしにくい患者さんに対しての「高カロリー栄養」として使用されていました。

今後は、短時間・少量で高カロリー摂取ができるMCTを「高齢者の低栄養改善」のために 活用することが期待されます。
MCTの推奨摂取量は、健常人は0.2~0.3g/日、低栄養状態改善(低栄養・肥満)には2~10g/日、代謝異常・吸収不良の時のエネルギー補給には10~ g/日とされています。

通常、脂肪を摂取するとコレステロールは体脂肪を増加させてしまいますが、MCTは代謝を促進します。血液中に余っ ている不要なコレステロールを回収し肝臓へと運ぶ善玉コレステロール(HDL-C)を増やし、不要なコレステロールを全身に運ぶ悪玉コレステロール(LDL-C)を減らすといわれています。

ダイエット、つまり“過栄養の改善”にも注目されているのは、分解効率がよくエネルギーとして燃焼されやすいので、 体脂肪として蓄積されにくいためです。
ただし、脂肪である以上、摂りすぎには注意が必要です

ココナッツオイルの効果とは?

ココナッツオイルには、このMCTが60%と非常に多く含まれており(注1)、その効果が話題になっています。

■糖尿病の予防

MCTがインスリンの分泌を改善してくれると言われているため、生活習慣病のひとつ、糖尿病の予防効果が期待できます。

■心疾患・脳血管障害の予防改善

LDL-Cが増えすぎると不要なコレステロールが酸化・変性して、動脈硬化の原因となり、心疾患や脳血管障害等をひきおこしやすくなります。
ココナッツオイルには、HDL-Cを増やしLDL-Cを減らしてくれる効果が期待できます。

■免疫力を高める

ココナッツオイルに豊富に含まれるラウリン酸には、免疫 機能を高めるという特徴があります。

■アルツハイマー型認知症の予防・改善

アルツハイマー型認知症になると、脳はエネルギー源であるブドウ糖をうまく利用できなくなることがわかってきました。ブドウ糖が不足した時やブドウ糖をうまく利用できない時の唯一の代替エネルギーがケトン体です。
ココナッツオイルに含まれているMCTからケトン体ができ、ケトン体はブドウ糖に代わって脳のエネルギー源としてなってくれるため、 認知症の改善に効果があると言われています(注2)。

(注1) 漂白や脱臭などの製造過程で油脂本体以外の微量成分が壊れてしまっ ている可能性のある製品や、無精製・無添加・非加熱抽出等で製造過程を工夫 している製品など、商品により純度は様々なので注意が必要です。

(注2) 糖尿病患者(特に1型糖尿病)がMCTを摂取すると血液中のケトン体が 上昇し、糖尿病性ケトアシドーシスを発症する可能性があります。摂取すると きには医師への相談が必要です。

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