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    第4回 日本フットケア・足病医学会年次学術集会
ナースマガジン vol.47

聴きある記:
第4回 日本フットケア・足病医学会年次学術集会


会 期:2023年12月22日

会 場:沖縄コンベンションセンター

会 長:田中 里佳 先生
(順天堂医院 足の疾患センター センター長/順天堂大学大学院医学 研究科 再生医学 主任教授/順天堂大学医学部 形成外科学講座 教授)

テーマ:
「challenge!花ひらく未来へ ー歩ける足をいつまでもー」


足病医学の最新動向と多職種連携を探る

 全国の医療職が、 活動する領域を超えて 一 堂に集いディスカッションすることを目的に、現地参加とオンデマンド配信での開催となった。 本学会は、足病医学の最新動向を共有し、 専門家間の知識と経験の交流を促進する場として企画された。 参加者は、足病に関する臨床研究のアップデート、治療技術の革新、予防策など、幅広いトピックについて学ぶ機会を得られる。 また、医療技術の進歩だけでなく患者さんとのコミュニケーション論された。 これらの内容を踏まえ、学会議論された。 これらの内容を踏まえ、学会の情報について紹介したい。

足病医学の普及に向けて

 大会長の田中里佳先生は、すべての足病患者さんが迷わず受診できフットケアから最先端の治療を受けられる体制を目指し、 順天堂医院で2019年4月に日本の大学病院初である足病を専門的に診療する部門「足の疾患センター」を設立。日本の足病患者は、足に異常があってもどこを受診してよいか分からず、適切な治療が受けられないことも多い。どこにいても適切な足病診療が受けられるような体制になることを理想とし、足病医学の幅広い分野の知識を統合し日本の足病医療の発展を目指して本学会が開催された。

「足病必携マニュアル」 セッションによる教育プログラム

 本学会では、 「足病必携マニュアル」 と称される一連のセッションが注目を集めた。 これらのセッションは、足病に関する臨床視点から、 様々な分野を網羅できるプログラムとなっていた。 具体的なテーマは、 「アセスメント〜足はこう観る〜」から始まり、 「リウマチ足を救おう~みんなでできること~」「知れば得する糖尿病の知識」「透析療法患者の足」「患者と医療者の関係」など、合計15のセッションが展開された。多診療、多職種にまたがる足病医療の知識や技術が、必携マニュアルという系統的な教育プログラムとして凝縮されていた。

 足病医療はまだまだ新しい分野であり、地域によっては自分の周りに足病の専門家がおらず、患者の足のことを誰に相談すればいいか迷っている医療者も少なくない。そんな医療者にとっての指針となる実践的な内容であった。


学会に参加して

 米国では、足潰瘍などの症状を診る専門医として「足病医(podiatrist)」が存在するが、日本では足病のプライマリ・ケア体制を構築できていない。日本でもこの体制を確立させるためには人材の育成がカギとなってくるだろう。そのためには、多様な足病の症例を診られる研修期間、プライマリ・ケアを学べる場を増やすことが求められる。一般病院やクリニックで安全性が担保された治療が行われているのかは専門機関から見えづらいことが、日本で足病医学の普及を阻んでいる要因と考えると、足病診療を行える施設を増やすことと共に診療の質も担保する必要がある。

 施設拡大においての課題は、診療報酬が算定できなかった経緯があるが、ここ数年で2つの進展があった。1つ目は、2016年度の診療報酬改定による、人工透析患者に対する下肢抹消動脈疾患指導管理加算の新設だ。下肢抹消動脈疾患を有する人口透析患者を専門機関へ紹介した場合、月1回を限度として100点が算定される。2つ目は、2022年度の診療報酬改定による、下肢創傷処置料および下肢創傷処置管理料の新設だ。これらによって本領域への新規参入も期待できる。

 患者のフットヘルスが維持されれば足病による運動不足を防ぎ、結果として、サルコペニアやフレイルの予防にも繋がる可能性がある。超高齢社会に突入した日本では対象となる人々は多く、医療職にとって足病医学の学習は必須ではないだろうか。

(学術部:村松)

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