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自分の体メンテナンス

看護師になったら便秘になった?
自分の体メンテナンス① 腸脳相関と生活編

投稿日:2024.06.17

不規則な勤務、 水分摂取ができない、 行きたいときにトイレに行けない、 ストレス、 緊張…看護師は便秘になりやすいのは、 仕方ないと諦めていませんか?

患者さんの便秘相談を受けながら、 「そうは言っても、 なかなか出ないのよね」 とつぶやいているあなた、患者さんにも説得力もって対応するためにも、 自分の便秘と向き合ってみませんか?


春日 千加子 先生

博士(栄養学)・管理栄養士
大学や専門学校の非常勤講師、女子栄養大学栄養クリニックや糖尿病専門クリニックにて栄養相談など幅広く携わる


便秘対策が一筋縄ではいかないのは
  腸と脳は神経でつながっているから

 便秘について考えるとき、 関心は食物繊維に集中しがちです。確かに、 食物繊維は大事ですが、腸内環境は食べ物だけで改善できるものではなく、 普段の生活スタイル全体を見直すことも必要です。
 看護師の方は、 夜勤やシフト勤務で生活が不規則ですよね。 休日はリラックスして過ごすこと、食事は食物繊維だけでなく、 夜勤のときを含めた1日の食事の摂り方など生活全体を見直して、1年ぐらいかけて腸内環境を整えていくことが大切ではないかと思います。なぜなら、腸内環境は体全体に影響しているからです。
 たとえば、睡眠不足やストレスを受けると腸の働きは悪くなります。脳と腸は自立神経やホルモンを介してお互いに情報を交換し合い、影響を及ぼし合う「脳腸相関(のうちょうそうかん)」の関係にあります。
 自律神経には、緊張やストレスを感じたときに働く交換神経と睡眠やリラックスしたときに働く副交感神経があることはご存じかと思いますが、二つが交互に優位になることで、心身のバランスを保っています。そして腸の働きは、副交感神経の働きが重要で副交感神経が有意になると筋肉が弛緩し、腸の蠕動運動が促進されます。
 また、脳と腸の両方で分泌される神経伝達物質に「セロトニン」がありますが、セロトニンは腸内細菌で代謝され、脳内では気持ちや感情を安定させる働きの他、夜にメラトニンに変化することで質の良い睡眠や腸を動かす蠕動運動にも関わっています。つまり腸内環境を整えることで、これらのホルモンの分泌にも影響するため、心身を整える役割を担っているといえます。

腸内環境を整える食物繊維。その役割は?

 腸内細菌には、 乳酸菌やビフィズス菌、 納豆菌などの有用菌 (プロバイオティクス) があり、 そのエサになる栄養素にはプレバイオティクスと呼ばれる食物繊維やオリゴ糖があります。 食物繊維には不溶性と水溶性の2種類があります。
 不溶性食物繊維は、 腸で水分を吸収してふくらむことで、 便の容積を増やし、 腸を刺激して蠕動運動を活発にし、 便通を促進します。 玄米、 さつま芋、 とうもろこし、 きのこ類に多く含まれます。
 水溶性食物繊維は、 水分を吸収してゲル状になるので、 便を柔らかく、 滑りをよくし、 スムーズな排便を促します。 キウイや柑橘類などの果物、 オクラ、 玉ねぎ、 トマト、 大麦、全粒粉小麦などに多く含まれます。
 最近注目されている主に水溶性食物繊維によって作られる「発酵性食物繊維」 は、 腸内細菌によって発酵分解され (有用菌のエサになりやすい) 、 短鎖脂肪酸を作り出し整腸効果に繋がります。 短鎖脂肪酸とは腸内細菌が作る、 酪酸、 プロピオン酸、 酢酸などの有機酸です。 腸内環境の改善だけでなく、 消化管ホルモンの分泌を調整し、 血糖値の上昇を抑える効果なども期待できるといわれています。 ごぼう、 玉ねぎ、ブロッコリー、大豆、昆布、大麦などから摂取できます。
 さらに、 食事の摂り方として、 有用菌とそのエサになる食物繊維を一 緒に摂ると、 腸内環境を整える相乗効果があります。 例えば、 ヨーグルトとキウイやバナナ。 ヨーグルトは種類の異なるメーカーのものを買って、 いろいろな菌を摂るとよいと思います。 また、 納豆とめかぶのようなネバネバした食品の組み合わせは水溶性食物繊維が多く摂れます。

生活の見直しは、朝の過ごし方が大切

 朝、時間がない場合は出勤前の支度時に白湯だけでも。 腸がじんわり温まることで、 便意を促すことも期待できます。
 次に朝の光を浴びて朝食をとることが大切です。 排便に効果があるばかりでなく、 日の光と朝食はセロトニンの分泌を促し、 体内リズムを整えて代謝を高めてくれます。
 朝食は時間もないため、 摂らない方も多いかもしれませんが、 可能な日があれば、 果物とヨーグルトからでも始めてみてください。そして、 ダイエ ットしたいと思っている若い方は、 朝食は抜かずにしっかり食べて、 夕食は控えめにされた方が体重は減りやすいです。 また、 朝食を欠食すると昼の食後の血糖値が上がりやすいことがわかっています。 ただ、 シフト勤務や夜勤があると生活を見直すことはなかなか難しいことですが、 夜勤中は菓子類や炭水化物に頼らず、水分中心に摂り、 夜勤明けや日勤時に生活リズムを戻しつつ朝食を食べてリセットできるようにしましょう。 まずは、 朝の過ごし方の中で、 出来ることから心がけてみてはいかがでしょうか。

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