第9回 症例から学ぶ周術期看護
プレハビリテーションをトレンドに考える
投稿日:2024.05.10
プレハビリテーションとは、術前から身体機能を強化することで術後の合併症のリスク減少や身体的活動の早期回復、早期自立を目指すための介入ですが、国内ではまだあまり普及していない状況です。サルコペニアと診断された術前患者を通して、今回は「プレハビリテーション」の考えを用い、済生会横浜市東部病院の谷口英喜先生に症例を用いて解説いただきました。
今回はプレハビリテーションについて考えてみましょう。
症例
78歳男性 主訴:嚥下障害
BMI:19.8kg/㎡ 以前から瘦せ型 既往歴:高血圧
原病歴
食道がんの診断を受け、3クールの化学療法の後、食道がん根治手術を予定。食事の際に通過障害を認める。外来受診時の体組成計測・握力測定でサルコペニアの診断。栄養状態は軽度不良。
プレハビリテーションを実施する方針となった。
78歳男性 主訴:嚥下障害
BMI:19.8kg/㎡ 以前から瘦せ型 既往歴:高血圧
原病歴
食道がんの診断を受け、3クールの化学療法の後、食道がん根治手術を予定。食事の際に通過障害を認める。外来受診時の体組成計測・握力測定でサルコペニアの診断。栄養状態は軽度不良。
プレハビリテーションを実施する方針となった。
Q. サルコペニアがある場合、術後にどのような影響がありますか?
A. 術後回復の遅れにより合併症の発生率も増加します。
これまでの研究結果から、サルコペニアを併発している患者は、周術期の合併症(肺炎、縫合不全など)の発生率が増加すること、特に担がん患者で顕著であることが報告されています。さらには廃用症候群に進行しやすく、在院日数が長くなります。
Q. サルコペニアがある患者の術前の対策はありますか?
A. プレハビリテーションを長く実施します。
ERASプロトコルに基づき、高齢者の術前適正化策として、プレハビリテーションが推奨されています。これは、術前の身体強化を目的としたもので、心理的サポート・栄養サポート・運動療法の3つの要素から成るプログラムです。
Q. プレハビリテーションのイメージを 教えてください。
A. 術前の体力を底上げして、手術ダメージに耐えられるようにします
従来の管理(a)では、術前に特別な介入はせずに手術を行っていました。その結果、手術による体力の低下が回復するまでに時間がかかり、元の状態まで戻れないことがありました。プレハビリテーション(b)では、術前に体力・栄養状態・精神状態を上げて手術に臨みます。そのため、手術による体力の低下から元に戻るまでの期間が短く、元の生活レベルまで回復しています。
Q. プレハビリテーションの適応を教えてください。
A. 済生会横浜市東部病院患者支援センターのTOPSプログラムのアルゴリズムを参照にしてください。
効果を期待するにはアルゴリズムに加えて、手術までの期間が4週間以上あることが望ましいです。
Q. 国内でプレハビリテーションは 実施可能ですか?
A. 現在のところ保険適用がありませんが、技術的には可能です。
TOPSでは、近隣のメディカルフィットネス(有料、医療施設に併設)と連携してプレハビリテーションを実施しています。栄養サポート、心理的サポートはTOPSで、運動療法はレジスタンストレーニング(週に2回)を中心にフィットネスで受けます。定期的にテレカンファレンスで進捗確認し、術前準備を行います。超高齢社会を迎えた我が国では、早急に保険適用され、普及することが望まれます。
本症例では、1回目の化学療法中からプレハビリテーションを開始して、3ヶ月間メディカルフィットネスと連携してから手術に臨みました。体力向上に加え、手術へのやる気が増しました。
本症例では、1回目の化学療法中からプレハビリテーションを開始して、3ヶ月間メディカルフィットネスと連携してから手術に臨みました。体力向上に加え、手術へのやる気が増しました。
本症例でナースが注意すること
・高齢者では、サルコペニアを常に疑う
・サルコペニア症例では合併症の頻度が高まる
・プレハビリテーションの進捗を情報共有
・サルコペニア症例では合併症の頻度が高まる
・プレハビリテーションの進捗を情報共有
Take home message
●術前、サルコペニア症例にはプレハビリテーション
●運動・栄養・心理的サポートの3つを同時に実施
●4週間以上の期間がとれることが望ましい
●運動・栄養・心理的サポートの3つを同時に実施
●4週間以上の期間がとれることが望ましい
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