髙﨑 美幸先生の胃瘻(PEG)ケアコラム第3回
第3回 胃瘻コラム
第2回の①栄養療法に関する基礎知識、②胃瘻に関する基礎知識につづいて、今回から、少し具体的なお話しに入っていきたいと思います。
③栄養剤の選択
経腸栄養剤の選択をするために、各々のご施設で採用されている栄養剤をマッピングすることをお勧めします。
分類の仕方は色々ありますが、まず保険診療の病院等では、保険上の区分から「食品タイプ」と「医薬品」タイプに分類します。
食品タイプは、全額自己負担(入院中であれば、食事療養費で賄われます)ですが、医薬品タイプは保険の適応となりますので、患者様の負担金額が大きく異なってきます。
一般に、在宅患者様では医薬品、入院中の患者様では食品タイプを用いることが多いです。その次に考えることは種類(及び形状)になります。
胃瘻の場合、カテーテルの径は20~24Frと太いので、家族と同じ食事をミキサーにして注入することが可能です。栄養剤の市販商品で言うとオクノス流動食品などが、天然濃厚流動食という分類で、ミキサー食に相当するものです。窒素源はたんぱく質です。
次に栄養剤では最も種類の多い半消化態栄養剤で、窒素源はたんぱく質、糖質はデキストリンになります。部分的な消化が行われた状態とお考えください。
食品の区分は以前消化態までで、消化態栄養剤からは薬価でしたが、現在は、食品扱いでもペプチーノとエンテミールの2種類があります。
もっとも多く用いられている消化態栄養剤は、薬価のツインラインという商品です。窒素源がアミノ酸もしくはペプチド、糖質はデキストリンの製品になります。
名前の通りほぼ消化された状態とお考えください。成分的には、脂肪は2~5%と正常な方が長期に使用するには、脂肪酸欠乏のリスクがある組成です。
通常は、膵臓や胆嚢の機能低下、胃切除など脂肪投与を少なくしたい場合に用います。上記の他、成分栄養剤というカテゴリーがあります。
窒素源はアミノ酸、糖質はデキストリンで、消化態栄養剤の中でも特に脂肪の少ないもので、商品ではエレンタールとエレンタールPです。
消化管の広範囲で障害されている炎症性腸疾患(クローン病など)が適応になります。種類としての分類は上記になりますが、形状についてもみていきましょう。
まず、ミキサー食は細いチューブは通りませんので、投与の際は器からカテーテルチップに食事を吸って、ボーラス投与を行います。日本で生まれた投与方法として栄養剤の半固形化というのがありますが、こちらもミキサー食同様注入時間の短縮が可能となります。
ただし投与前に調製の手間がかかるのと、注入中つきっきりになる必要があり、チューブ、シリンジの衛生管理に注意が必要であるというのがデメリットになります。
在宅・施設などでは、手間がどの位かけられるかは大きなポイントになります。同様の効果を期待してチアパック入りの既製品の半固形化栄養剤も販売されています。こちらはすべて食品タイプですので経済的な面を考慮する必要があります。
これらに加えて、症状・病態を考慮した組成の栄養剤が市販されています。例えば、下痢・便秘などの排便コントロール異常に対応した食物繊維添加のものやファイバーやオリゴ糖を別に投与する方法もあります。
病態別では、糖尿病用(脂質含有量が多い、糖質はパラチノースなど血糖上昇の少ないもの、低グリセミックインデックス…)、腎不全用(低たんぱく、高濃度…)、呼吸不全用(低糖質高脂質で呼吸商を考慮)、肝不全用(フィッシャー比考慮、BCAAリッチ)、免疫賦活作用(アルギニン、グルタミン、n-3系脂肪酸、抗酸化ビタミン強化…)
ここまで書くと、形状と病態で栄養剤が決められそうな気がしませんか?でも私はそれだけでは×と思います。
栄養管理の基本は、個々人に必要な栄養量(エネルギー、たんぱく質、水分)の充足です。今目の前にいる患者様の必要なエネルギー量はどの位か、たんぱく質はどの位か、水分量はどの位かを最初に考えるべきだと思います。
ここから栄養剤選択を考えましょう。(図参照)
③栄養剤の選択
経腸栄養剤の選択をするために、各々のご施設で採用されている栄養剤をマッピングすることをお勧めします。
分類の仕方は色々ありますが、まず保険診療の病院等では、保険上の区分から「食品タイプ」と「医薬品」タイプに分類します。
食品タイプは、全額自己負担(入院中であれば、食事療養費で賄われます)ですが、医薬品タイプは保険の適応となりますので、患者様の負担金額が大きく異なってきます。
一般に、在宅患者様では医薬品、入院中の患者様では食品タイプを用いることが多いです。その次に考えることは種類(及び形状)になります。
胃瘻の場合、カテーテルの径は20~24Frと太いので、家族と同じ食事をミキサーにして注入することが可能です。栄養剤の市販商品で言うとオクノス流動食品などが、天然濃厚流動食という分類で、ミキサー食に相当するものです。窒素源はたんぱく質です。
次に栄養剤では最も種類の多い半消化態栄養剤で、窒素源はたんぱく質、糖質はデキストリンになります。部分的な消化が行われた状態とお考えください。
食品の区分は以前消化態までで、消化態栄養剤からは薬価でしたが、現在は、食品扱いでもペプチーノとエンテミールの2種類があります。
もっとも多く用いられている消化態栄養剤は、薬価のツインラインという商品です。窒素源がアミノ酸もしくはペプチド、糖質はデキストリンの製品になります。
名前の通りほぼ消化された状態とお考えください。成分的には、脂肪は2~5%と正常な方が長期に使用するには、脂肪酸欠乏のリスクがある組成です。
通常は、膵臓や胆嚢の機能低下、胃切除など脂肪投与を少なくしたい場合に用います。上記の他、成分栄養剤というカテゴリーがあります。
窒素源はアミノ酸、糖質はデキストリンで、消化態栄養剤の中でも特に脂肪の少ないもので、商品ではエレンタールとエレンタールPです。
消化管の広範囲で障害されている炎症性腸疾患(クローン病など)が適応になります。種類としての分類は上記になりますが、形状についてもみていきましょう。
まず、ミキサー食は細いチューブは通りませんので、投与の際は器からカテーテルチップに食事を吸って、ボーラス投与を行います。日本で生まれた投与方法として栄養剤の半固形化というのがありますが、こちらもミキサー食同様注入時間の短縮が可能となります。
ただし投与前に調製の手間がかかるのと、注入中つきっきりになる必要があり、チューブ、シリンジの衛生管理に注意が必要であるというのがデメリットになります。
在宅・施設などでは、手間がどの位かけられるかは大きなポイントになります。同様の効果を期待してチアパック入りの既製品の半固形化栄養剤も販売されています。こちらはすべて食品タイプですので経済的な面を考慮する必要があります。
これらに加えて、症状・病態を考慮した組成の栄養剤が市販されています。例えば、下痢・便秘などの排便コントロール異常に対応した食物繊維添加のものやファイバーやオリゴ糖を別に投与する方法もあります。
病態別では、糖尿病用(脂質含有量が多い、糖質はパラチノースなど血糖上昇の少ないもの、低グリセミックインデックス…)、腎不全用(低たんぱく、高濃度…)、呼吸不全用(低糖質高脂質で呼吸商を考慮)、肝不全用(フィッシャー比考慮、BCAAリッチ)、免疫賦活作用(アルギニン、グルタミン、n-3系脂肪酸、抗酸化ビタミン強化…)
ここまで書くと、形状と病態で栄養剤が決められそうな気がしませんか?でも私はそれだけでは×と思います。
栄養管理の基本は、個々人に必要な栄養量(エネルギー、たんぱく質、水分)の充足です。今目の前にいる患者様の必要なエネルギー量はどの位か、たんぱく質はどの位か、水分量はどの位かを最初に考えるべきだと思います。
ここから栄養剤選択を考えましょう。(図参照)
ここで、冒頭に記載したマッピングが登場します。ご施設で採用されている栄養剤をたんぱく濃度順に並べていきます。
この際、たんぱく質g/100kcalを計算するのがコツです。概ね0.375(レナウエルA)~11.25(プロテインマックス)の範囲で、4ないし5あたりが多いのではないでしょうか?臨床で使うには、蛋白エネルギー比及びNPC/N比を横に入れておくと選ぶ際に便利です。(図参照)
この際、たんぱく質g/100kcalを計算するのがコツです。概ね0.375(レナウエルA)~11.25(プロテインマックス)の範囲で、4ないし5あたりが多いのではないでしょうか?臨床で使うには、蛋白エネルギー比及びNPC/N比を横に入れておくと選ぶ際に便利です。(図参照)
この他、経腸栄養剤の調整用に、自施設で使用可能な商品を特徴毎にまとめておくと、NST活動など多職種協同作業時に役立ちます。(図参照)
実際には、各々の栄養剤・強化調整用食品の特徴を簡単にまとめたものを表にして選択時に妥当性を検証しながら使用します。
腎不全であっても、投与量が少なければ、腎不全用の栄養剤を用いなくても、たんぱく質量、カリウム量、リン含有量を調整することは可能ですし、糖尿病があっても一般の栄養剤でも十分血糖コントロールを行うことはできます。
あくまで患者様の状況を良く観察し、より適切な選択を考える事が必須です。また、栄養療法は上を見てはきりがありませんが、現場では経済的に成り立っている事も大切になってきます。
胃瘻の場合は栄養剤の選択一つで、経済的な負担が変わってきます。また、患者の状況は変わりますので、1度アセスメントをして決めたものが未来永劫同じであると思わないで下さい。
変化があった時はもちろん、長期的なリスクを予測して、プラン作成時に次回モニタリング(見直し時期)はいつ頃かを計画して、経過を確認することも栄養剤選択で失敗しないポイントになります。当院で採用している栄養剤及び追加アイテムを添付しますのでご参照下さい。
腎不全であっても、投与量が少なければ、腎不全用の栄養剤を用いなくても、たんぱく質量、カリウム量、リン含有量を調整することは可能ですし、糖尿病があっても一般の栄養剤でも十分血糖コントロールを行うことはできます。
あくまで患者様の状況を良く観察し、より適切な選択を考える事が必須です。また、栄養療法は上を見てはきりがありませんが、現場では経済的に成り立っている事も大切になってきます。
胃瘻の場合は栄養剤の選択一つで、経済的な負担が変わってきます。また、患者の状況は変わりますので、1度アセスメントをして決めたものが未来永劫同じであると思わないで下さい。
変化があった時はもちろん、長期的なリスクを予測して、プラン作成時に次回モニタリング(見直し時期)はいつ頃かを計画して、経過を確認することも栄養剤選択で失敗しないポイントになります。当院で採用している栄養剤及び追加アイテムを添付しますのでご参照下さい。
病院・施設では、患者ごとに仔細に栄養剤を用意しておくことは難しいので、汎用性を考えて採用栄養剤を決めています。
開発の進んでいる分野で年に何種類も新商品が出てきますので、常にアンテナを張って、より有用なものを検討し、臨床導入を進めていきましょう。栄養剤選択&アイテム確保は、胃瘻の栄養管理の一番の武器になるところです。
※上記の詳細が勉強したい方は、書籍等専門書コーナーに沢山あります。個人的なお勧めは下記参考文献をご参照下さい。
参考文献)
1)吉田貞夫他:見てわかる静脈栄養・PEGから経口摂取へ,p36~44,株式会社学研メディカル秀潤社,2011
2)岡田晋吾、北海道胃瘻研究会:病院から在宅までPEGケアの最新技術,p44~81,照林社,2010
3.)田崎亮子編:NSTカンファレンスで学ぶ実践!経腸栄養剤,p14~p35,株式会社メディカ出版,2011
開発の進んでいる分野で年に何種類も新商品が出てきますので、常にアンテナを張って、より有用なものを検討し、臨床導入を進めていきましょう。栄養剤選択&アイテム確保は、胃瘻の栄養管理の一番の武器になるところです。
※上記の詳細が勉強したい方は、書籍等専門書コーナーに沢山あります。個人的なお勧めは下記参考文献をご参照下さい。
参考文献)
1)吉田貞夫他:見てわかる静脈栄養・PEGから経口摂取へ,p36~44,株式会社学研メディカル秀潤社,2011
2)岡田晋吾、北海道胃瘻研究会:病院から在宅までPEGケアの最新技術,p44~81,照林社,2010
3.)田崎亮子編:NSTカンファレンスで学ぶ実践!経腸栄養剤,p14~p35,株式会社メディカ出版,2011
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