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ナースマガジン vol.46

【看護ケアQ&A】 COVID-19 5類移行後の感染対策

投稿日:2024.02.12

2023年5月、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に引き下げられ、感染対策の基準が変更になりました。病院や施設では、それぞれ具体的な対策を個別に考える必要があり、悩むことも多いのではないでしょうか。読者の皆様から寄せられた疑問・悩みについて、感染対策の専門家である坂本史衣先生にお伺いしました。
森 小律恵 先生
監修
坂本 史衣 先生
板橋中央総合病院 院長補佐


Q:日々の業務の中で、感染対策で悩んでいることはありますか?



Q:新型コロナウイルス感染症が5類移行後に最も 変わったと思うことは何ですか?(3つまで回答)



Q:新型コロナウイルス感染症が5類移行後に最も 変わったと思うことは何ですか?(3つまで回答)


※アンケートは2023年7月、ナースの星メールマガジンよりオンラインで実施。有効回答数は383名。



環境整備

5類移行前のコロナ禍では、環境整備として、1日1回アルコールによる拭き掃除を細かい部分まで行っていました。5類となり、新型コロナウイルス感染症の接触感染は他の感染症と比較して考えにくい、マスクさえ使用すれば大丈夫という見解から、アルコールの拭き掃除は中止となりました。この対応は問題ないのでしょうか。
—-介護施設主任
介護施設では、季節によりウイルス性胃腸炎やRSウイルス感染症が流行します。薬剤耐性菌の保菌者もいる可能性も考慮しておくべきかもしれません。接触感染する病原体を広げないよう、よく手が触れる場所は、環境用洗浄・除菌剤を用いた環境清掃を続けるとよいでしょう。
 病院で行う感染対策の必要性について、新型コロナウイルス感染症を基準に考えてしまいがちですが、接触感染する病原体が消えたわけではありません。新型コロナ患者の隔離区域内で薬剤耐性菌の集団感染が起きたという報告もあります。接触感染への対策として、例えば1日1回など頻度を決めて、環境用洗浄・除菌剤を使った清拭清掃を日常的な環境整備に取り入れるとよいでしょう。厳密な基準はありませんが、インフルエンザの流行期や、嘔吐・下痢が多い状況などがあれば、1日2回に増やすなど、臨機応変に対応していきましょう。


換気

換気は引き続き重要だと思いますが、空気清浄器だけで大丈夫なのか不安に思っています。施設内でHEPA(へパ)フィルターを使用しているかどうか、数が適切かなどの評価はできておらず、以前に比べて対策がかなり安易になっているように感じています。
—-有料老人ホーム居室部門スタッフ
換気の方法には機械換気と自然換気がありますが、医療施設では機械換気を行います。設定どおりに換気が行われているか、必要に応じて確認するとよいでしょう。
 京都府が発行する『エアロゾル感染対策ガイドブック』(図1)を参考にして、施設職員の協力を得ながら換気状況を評価してみましょう。
【図1】京都府制作 「エアロゾル感染対策ガイドブック」
https://www.pref.kyoto.jp/shisetsucluster/documents/iryoumuke20230406_all_s.pdf
 空気清浄機は換気の代わりにはなりません。混雑した待合室のようにエアロゾル量が多いと思われる場所で使うなど、補助的な役割を担います。使用できそうな場面やメンテナンス方法は、ガイドブックを参考に検討しましょう。
※H1EPAフィルターとは
High Efficiency Particulate Air filterの略で、0.3㎛3の微粒子の大部分を捕集できるフィルター。


行動や面会

利用者の行動や面会の基準など、どこまで拡大してよいのか悩んでいます。
—-有料老人ホーム居室部門スタッフ
施設ごとに基準を決める必要がありますが、基本的には人から人に感染する感染症の症状を毎日確認することが大切です。疑わしい症状がある場合、感染性のある期間は人と会うのを控える対応をしましょう。
 外から持ち込まれて施設内で広がりやすいのは、主に呼吸器、消化器、皮膚、眼の感染症です。そのため、咳、下痢、発熱、発疹や眼の充血などの症状がないか、毎日確認するとよいでしょう。疑わしい症状がある利用者は、感染可能期間が過ぎるまで直接人と会うのを控えていただき、症状がある面会者も同様に来院を遠慮していただけるとよいですね。

 新型コロナウイルス感染症に限らず、地域で流行している感染症は、職員や面会者によって施設内に持ち込まれて広がることがあります。地域での感染症の流行状況に注目しながら、例えば、インフルエンザの流行期にはマスクの着用を強化するなど、強弱をつけて対応することが大切です。


感染対策の相談先

小規模の療養病院なので、感染管理認定看護師がおらず、増える予定もありません。専門的な知識のある人に相談できる場所はないのでしょうか?基本的には保健所になるのでしょうか?
—-療養病院一般内科スタッフ
相談先がない場合、感染対策のための地域ネットワークに入ることをお勧めします。通常は大きな病院も入っているため、助言を求めることが可能です。
 病院が2022年4月に改定された診療報酬の「感染対策向上加算3」を算定できれば、 「感染対策向上加算1」を算定する医療機関が主催するカンファレンスに参加し、助言を求めることができます(図2)。

 グループ系列の施設であれば、法人内で相談できる場所を探してみましょう。単一の施設であれば、地域のネットワークに入ることをお勧めします。
※感染対策向上加算とは
2022年度の診療報酬改定において制定。この改定では、以前の「感染防止対策加算」から名称が変更され、加算の内容も拡充された。加算は2段階から3段階へと変更され、診療所における「外来感染対策向上加算」も新設となった。
【図2】感染対策向上加算1~3と外来感染対策向上加算(新設)の施設における地域連携イメージ
厚生労働省「令和4年度診療報酬改定の概要 個別改定事項Ⅰ(感染症対策)厚生労働省保険局医療課」をもとにメディバンクス(株)が作成
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000911809.pdf


医療従事者間の認識の違い

5類への引き下げにより、手指消毒やマスク、行動制限など、スタッフの間でズレが生じています。スタッフの意識を統一し、感染対策するにはどうすればよいのでしょうか。
—-̶̶ 急性期病院内科病棟主任
基本的に職員は病院の方針に従う必要がありますが、従わない背景には様々な要因があります。それらを明らかにしながら、必要な感染対策を積極的に実施できるよう支援を行います。
 病院で方針を決めても、現場スタッフへ浸透しないというケースは多くあります。トップの支援不足が原因の場合もあれば、現場の人への説明不足が原因の場合もあります。 「言っても聞いてくれない」ということにこだわらず、どうすれば感染対策を実施できるか、双方で建設的に話し合いましょう。基礎知識は不可欠なので、感染対策の原理・原則を勉強会などで学びながら進めていきましょう。

 最初から完璧な対策ができない場合もありますが、最初の一歩をどう踏み出すか、話し合いですり合わせることが大切です。何のために感染対策をするのかという原点に立ち返ることで、多くの解決方法が出てきます。


5類移行後に大切なこと

 感染を防ぐには、多面的な対策が必要です。例えば、手指衛生を行わない要因は、知識不足、手指消毒薬へのアクセスが悪い、手荒れなどいくつもあります。だからこそ対策も多面的である必要があります。感染対策の推進が困難なときは、その要因を洗い出して、足りない対策は何かを考えてみましょう。

 また、地域で流行する様々な感染症に対する最初の防波堤になるのは「標準予防策」です。手指衛生や場面に応じた個人防護具の着脱など、基本的な対策の実施率を高めていきましょう。




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