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インスリン製剤に関わる インシデントとその対策

投稿日:2023.12.08

糖尿病は世界中で増加している健康問題の一つであり、インスリン治療はその中心的な役割を果たしています。しかし、インスリン製剤(以下:インスリン)の種類の多さや患者の状態に応じた投与方法の違いから、誤った投与がされる事例は少なくありません。本記事では、現場で発生しがちなインシデントとその対策に焦点を当て、杏林大学医学部付属病院 薬剤部 副部長の小林庸子先生にお話を伺いました。
杏林大学医学部付属病院 薬剤部 副部長
日本糖尿病療養指導士
糖尿病薬物療法認定薬剤師
小林庸子 先生
インスリン製剤は思っているほど難しくはありません。
ぜひ、安全にインスリンを使っていきましょう!

投与間違いとその防止策

 インスリンの投与指示のミスは現場でしばしば見受けられます。特に、ダブルチェックでの確認が疎かになりがちで、これが誤った投与量の承認を引き起こす場合があります。これにより、患者が間違った量を受けるリスクが高まります。まずは抜けやすい「投与直前も必ずカルテを見ながらダブルチェックをする」など確認プロセスを強化し、実施前のダブルチェックを適切に行うことが重要です。

不十分な伝達で起こる誤投与リスク

 インスリン治療の指示が不十分であると、誤投与のリスクが高まります。特に、経験の少ないスタッフは、曖昧な指示により誤った投与方法を選ぶことがあります。それに対処するためには、予測指示で具体的かつ詳細な記載が必要であると同時に、医師への報告の際に「昨日までは○単位でしたが、本当に△単位で良いのですか?」のように具体的に伝えることでも誤投与を防ぐことに繋がります。加えて、以下のような事例を起こさないようにするためにも、インスリンの取り扱い方法の違いを理解し、誤用のリスクを減らすための教育とトレーニングが求められます。

 当院では年に一度必修の講習会(現在はe-ラーニング)を行い、スタッフに正しいインスリンの取り扱いを教える取り組みを10年以上行っています。このため現在では「インスリンはインスリン専用のシリンジを使用する」ということが徹底され院内全体に周知されています。

事例: 単位とmLの思い込み

インスリンバイアル製剤(※1)が足りなくなったと薬剤部への問い合わせで発覚。
当院の病棟在庫のインスリンには1本あたり1000単位含まれている。
改めて確認すると、単位で示すインスリン専用シリンジ(※2)ではなく、mL表示の一般汎用シリンジにてmLで吸引していたことが判明した。
※1:インスリンバイアル製剤は100単位/mLに統一されている。
※2:インスリン単位換算  1単位⇔0.01mL 10単位⇔0.1mL 100単位⇔1mL

解決策

■明示的かつ具体的なインスリン投与指示の提供
■院内でのインスリン管理方法をルール化(※3)&教育の強化
■インスリン投与前のダブルチェックの徹底
さらに
専用ケースでインシデントを防ぐ!
※3:①インスリンの病棟在庫は1本のみ②SPD経由での補充以外、薬剤部から直接払い出ししない


豆知識: インスリン製剤の命名法

ペン型インスリンには様々な名称が存在しているため、「種類が多くて覚えられない」と感じることがあります。難しく考えがちですが、実は名称の構成はシンプルです。
名前の中心には必ず「注」という文字が入り、その前にはインスリンの種類が、その後ろには使用する注射器の名前が続きます。
このような分かりやすい命名法から、インスリンの種類を理解する際の手がかりとなります。
インスリン製剤の命名法

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