髙﨑 美幸先生の胃瘻(PEG)ケアコラム第4回
第4回 胃瘻コラム
④栄養剤の投与速度と⑤ステップアップスケジュール
今回は、栄養剤の投与速度、ステップアップスケジュールについて考えてみたいと思います。前回は栄養剤の選び方についてまとめてみました。使用する栄養剤が決まったら、次はどんな速さで投与するか?です。
私たちは経口で食事摂取をする場合、速度をあまり意識することはないと思います。たまに早食いとか食べるのが遅いという話がでることがありますが、1回の食事時間は、5分から1時間の範囲内ならほとんど全員の方があてはまるのではないでしょうか?
では、経管投与での経腸栄養施行の患者さんはいかがでしょうか?半固型の栄養剤投与の方なら1回15~20分が多いでしょうが、液体タイプの方では、随分投与時間に差があるのではないでしょうか?
クレンメ全開で急速投与をしたら、1回分10分以内では落ちるでしょうが、常識的には、500ml/h位(当院は100ml/hが標準ですが、消化管の活動状況で400ml/hの投与経験はあります)がMAXだと思います。持続投与の方では、1日24時間が食事時間です。
当院では、経管栄養施行の治療方針が決まると、主治医から病棟担当管理栄養士に投与内容&速度提案の依頼があります。実際に当院で使用している指示表の記載例です(資料「経管指示表フォーマット」)。
私たちは経口で食事摂取をする場合、速度をあまり意識することはないと思います。たまに早食いとか食べるのが遅いという話がでることがありますが、1回の食事時間は、5分から1時間の範囲内ならほとんど全員の方があてはまるのではないでしょうか?
では、経管投与での経腸栄養施行の患者さんはいかがでしょうか?半固型の栄養剤投与の方なら1回15~20分が多いでしょうが、液体タイプの方では、随分投与時間に差があるのではないでしょうか?
クレンメ全開で急速投与をしたら、1回分10分以内では落ちるでしょうが、常識的には、500ml/h位(当院は100ml/hが標準ですが、消化管の活動状況で400ml/hの投与経験はあります)がMAXだと思います。持続投与の方では、1日24時間が食事時間です。
当院では、経管栄養施行の治療方針が決まると、主治医から病棟担当管理栄養士に投与内容&速度提案の依頼があります。実際に当院で使用している指示表の記載例です(資料「経管指示表フォーマット」)。
その時私たちが考える投与プロトコールでは、次のような点をポイントに考えます。1. 持続投与か2.間歇投与か3.ボーラス(シリンジでの)投与かチューブ先端の留置位置は、A.胃内か、B.幽門後(空腸上部)か
B.の場合は、基本1.となりますが、腸瘻の方で、腹満の訴えが強く、間歇投与を試して上手くいった症例があります。基本の投与を理解した上で、個々の症例に対して、最適な投与方法に調整できるのが理想だと思います。
安全を重視すると、低速投与となると思いますが、患者さんの体位保持の苦痛や栄養剤がクローズドシステムでない場合の細菌汚染の問題なども考慮する必要があると思います。
原則的には、1の場合は、10~25ml/hからスタートし、胃内残留量を確認しながら、10~25ml/h/日、程度の速度Upを行います。当院の胃内残留量基準は以下の通りです(「別紙2」)。
B.の場合は、基本1.となりますが、腸瘻の方で、腹満の訴えが強く、間歇投与を試して上手くいった症例があります。基本の投与を理解した上で、個々の症例に対して、最適な投与方法に調整できるのが理想だと思います。
安全を重視すると、低速投与となると思いますが、患者さんの体位保持の苦痛や栄養剤がクローズドシステムでない場合の細菌汚染の問題なども考慮する必要があると思います。
原則的には、1の場合は、10~25ml/hからスタートし、胃内残留量を確認しながら、10~25ml/h/日、程度の速度Upを行います。当院の胃内残留量基準は以下の通りです(「別紙2」)。
持続投与の場合は、目標投与量に到達するのに、必然的に日数がかかることとなります(例:10ml/hの24時間では、240ml/日の投与で、1cc1kcalの栄養剤なら240kcal/日、1cc2kcalのものを使用しても480kcal/日しかエネルギー補給ができない)。
急性期治療で予定通り速度upができない場合でも、静脈併用等の工夫を加え、総投与エネルギーが目標の50%を下回らないように栄養管理 を行うことで、予後改善につながる印象があります。
また、持続投与の場合、イルリガードルの交換時間と、4~6時間ごとのチューブのフラッシュ時間を忘れずに計画する必要があります。この理由は、衛生面の問題とチューブ閉塞のリスク回避のためです。
2.の間歇投与では、消化管の不使用期間及び腸蠕動の状況により、初期投与速度を決定します。数日内でグル音がほぼ正常な場合は、100ml/hからのスタートも可能だと思います。
当院では、50ml/hを標準に設定しています。消化管の動きが弱い場合は、20ml/h程度からスタートしています。
追加水分は、当院では「水先投与」にこだわっています。水だけであれば、OS-1(大塚製薬工場:経口保水液ORS)で10分以内、水道水でも20分程度では胃が空になりますので、その後栄養剤を落とした方が、胃内容量が膨らまず、逆流・嘔吐のリスクを防ぐことができます。
3.のシリンジでのボーラス投与では、胃の容量を考えて1回100~500ml程度の投与が可能だと考えます。ただし、この場合も少量から徐々に増量するのが一般的です。
増量の方法は、少量を数回で投与し1回量を増やしていく方法(1日3回投与で、100⇒200⇒300/回)と投与回数を増やしていく方法(1回200ml注入で、投与回数を1⇒2⇒3⇒4回)があります。
また、半固型の栄養剤の場合、追加水分の投与は、栄養剤投与時間と離した食間に行います。理由は上記間歇投与の理由に加え、せっかくの半固型の形状が水で薄まることで、胃内での形状が流動態に近づいてしまい、消化管の蠕動促進への期待度が下がってしまうからです。
*栄養剤の投与速度とステップアップスケジュールは、以前は1週間で目標量に達するようにGENERAL、CRF(現在のCKD4以上が相当)、HDに分けて、具体例のモデルをマニュアル化していました。
実際の投与内容と量は、個々人の体格や活動量、侵襲度合、病態等の総合的アセスメントで決定し、投与開始後は、安定するまで毎日病棟管理栄養士がモニタリングをし、調整を行っていますので、現在では個々人対応の投与プランが実現できています。
看護師、医師の忙しい日常業務の中で、経管栄養の内容や投与スケジュールの決定及びモニタリングのようなお仕事は、軽量化できる業務の一つだと考えます。
管理栄養士(もしくは薬剤師)はこの分野の勉強を積んでいますので、もし読者の皆さんのご施設で栄養剤の管理に難渋しておられる場合は、栄養部、薬剤部(施設により若干名称が異なるかと思いますが、管理栄養士、薬剤師のいる部署です)へご一報下さい。きっとお役に立てることと思います。
次回は、栄養剤投与に伴う諸々のトラブルについて、考えてみたいと思います。
急性期治療で予定通り速度upができない場合でも、静脈併用等の工夫を加え、総投与エネルギーが目標の50%を下回らないように栄養管理 を行うことで、予後改善につながる印象があります。
また、持続投与の場合、イルリガードルの交換時間と、4~6時間ごとのチューブのフラッシュ時間を忘れずに計画する必要があります。この理由は、衛生面の問題とチューブ閉塞のリスク回避のためです。
2.の間歇投与では、消化管の不使用期間及び腸蠕動の状況により、初期投与速度を決定します。数日内でグル音がほぼ正常な場合は、100ml/hからのスタートも可能だと思います。
当院では、50ml/hを標準に設定しています。消化管の動きが弱い場合は、20ml/h程度からスタートしています。
追加水分は、当院では「水先投与」にこだわっています。水だけであれば、OS-1(大塚製薬工場:経口保水液ORS)で10分以内、水道水でも20分程度では胃が空になりますので、その後栄養剤を落とした方が、胃内容量が膨らまず、逆流・嘔吐のリスクを防ぐことができます。
3.のシリンジでのボーラス投与では、胃の容量を考えて1回100~500ml程度の投与が可能だと考えます。ただし、この場合も少量から徐々に増量するのが一般的です。
増量の方法は、少量を数回で投与し1回量を増やしていく方法(1日3回投与で、100⇒200⇒300/回)と投与回数を増やしていく方法(1回200ml注入で、投与回数を1⇒2⇒3⇒4回)があります。
また、半固型の栄養剤の場合、追加水分の投与は、栄養剤投与時間と離した食間に行います。理由は上記間歇投与の理由に加え、せっかくの半固型の形状が水で薄まることで、胃内での形状が流動態に近づいてしまい、消化管の蠕動促進への期待度が下がってしまうからです。
*栄養剤の投与速度とステップアップスケジュールは、以前は1週間で目標量に達するようにGENERAL、CRF(現在のCKD4以上が相当)、HDに分けて、具体例のモデルをマニュアル化していました。
実際の投与内容と量は、個々人の体格や活動量、侵襲度合、病態等の総合的アセスメントで決定し、投与開始後は、安定するまで毎日病棟管理栄養士がモニタリングをし、調整を行っていますので、現在では個々人対応の投与プランが実現できています。
看護師、医師の忙しい日常業務の中で、経管栄養の内容や投与スケジュールの決定及びモニタリングのようなお仕事は、軽量化できる業務の一つだと考えます。
管理栄養士(もしくは薬剤師)はこの分野の勉強を積んでいますので、もし読者の皆さんのご施設で栄養剤の管理に難渋しておられる場合は、栄養部、薬剤部(施設により若干名称が異なるかと思いますが、管理栄養士、薬剤師のいる部署です)へご一報下さい。きっとお役に立てることと思います。
次回は、栄養剤投与に伴う諸々のトラブルについて、考えてみたいと思います。
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