ナースマガジン vol.44
聴きある記:第8回 日本がんサポーティブケア学会学術集会
投稿日:2023.10.13
会 期:2023年6月22-24日
会 場:奈良県コンベンションセンター
テーマ:患者を支えるがん医療の温故知新
会 場:奈良県コンベンションセンター
テーマ:患者を支えるがん医療の温故知新
2日目のセッション5のパネルディスカッション「がんと就労~いま現場で何がおきているか」では、4名の演者が登壇。がん経験者の就労支援について発表した。以下に要旨を紹介する。
セッション5 パネルディスカッション
がんと就労
座長:
武藤 剛 氏(北里大学医学部衛生学北里大学病院 トータルサポートんセンター)
高橋 都 氏(NPO法人日本がんサバイバーシップネットワーク代表 岩手医科大学 東京慈恵会医科大学)
座長:
武藤 剛 氏(北里大学医学部衛生学北里大学病院 トータルサポートんセンター)
高橋 都 氏(NPO法人日本がんサバイバーシップネットワーク代表 岩手医科大学 東京慈恵会医科大学)
1 AYA世代がんの就労支援:初めての就職活動
土屋雅子氏(武蔵野大学看護学研究所)
わが国では小児がん・AYA世代のがん経験者の多くが、がんの診断後に就職等のライフイベントを迎える。 しかし、AYA世代のがん経験者向けの就職等のライフイベントに関する情報は少なく、一般就労支援が必要である。AYA世代のがん経験者のニーズに応えるため、国立がん研究センターがん対策情報センターがんサバイバーシップ支援部は、2020年に『よりよい意思決定のための就職活動応援ガイド』を発行した。先行研究の調査結果に基づき、就職活動支援における基本的な枠組みを踏まえつつ、ライフキャリアを考える上で大切な事柄を含む内容となっている。AYA世代のがん経験者の支援のためには、当事者を取り巻くあらゆる人々の理解と支援が必要である。
2 同種造血細胞移植経験者における就労支援〜全国調査の結果から〜
黒澤彩子氏(伊那中央病院腫瘍内科)
造血細胞移植数の増加と成績の改善により、 社会生活に戻る移植経験者の数は増加の 一 途にあり、移植後の生活における就労支援は重要なテーマである。 診断時に就労状態にあった移植経験者を対象とした実態調査では、 移植後にもとの働き方に戻る割合が移植後2年で59%、5年で70%であった。 一 方で、時短等の配慮のある復職も含む何らかの形での復職割合は移植後2年で77%、5年で87%であり、何らかの配慮があれば復職が向上する可能性が示唆された。
LTFU外来 (長期フォローアップ外来)などの機会に身体症状と就労状況を把握したうえで介入することや、 院内だけでなく施設を超えた地域におけるエキスパート同士が情報共有し、有効な就労支援につなげて いくことが求められて いる。
LTFU外来 (長期フォローアップ外来)などの機会に身体症状と就労状況を把握したうえで介入することや、 院内だけでなく施設を超えた地域におけるエキスパート同士が情報共有し、有効な就労支援につなげて いくことが求められて いる。
3 多職種による就労支援の体制づくり:がん薬物療法医の視点から
池田慧氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター)
近年、 進行がんの薬物治療成績の向上に伴い、治療しながら就労を継続できる社会の実現が広く求められている。 がん治療に携わる医療従事者には、 治療効果だけでなく有害事象や生活への影響、患者の個別背景を考慮したマネジメントが求められている。
就労支援の体制づくりとして、療養・就労両立支援指導料の算定の枠組みを生かした就労支援チームの立ち上げ、院内フローの作成などが求められる。 企業に対しては、主治医意見書のフォームや勤務情報提供書を病院側で作成することで、より良い連携が期待できる。 治療の選択においては、就労との両立を見据え、 患者ごとの仕事や生活などの背景を踏まえたDecision Making(意思決定)が求められている。
就労支援の体制づくりとして、療養・就労両立支援指導料の算定の枠組みを生かした就労支援チームの立ち上げ、院内フローの作成などが求められる。 企業に対しては、主治医意見書のフォームや勤務情報提供書を病院側で作成することで、より良い連携が期待できる。 治療の選択においては、就労との両立を見据え、 患者ごとの仕事や生活などの背景を踏まえたDecision Making(意思決定)が求められている。
4 両立支援北里モデル:誰も取り残されない両立支援を、 医療機関からめざす
武藤剛氏(北里大学医学部衛生学北里大学病院トータルサポートセンター)
治療と仕事の両立支援において、医療機関と企業との連携は以前からの課題であり、いかにこの架け橋をつくるかが時代のテーマである。 北里大学病院では、2019年からトータルサポートセンター内に「「両立支援専門外来」を開設し、 医療機関側からの両立支援の取組みを実践してきた。医療機関からみると、患者の仕事上の課題に介入するタイミングには複数のフェーズがあり、さらに治療のフェーズによってもニーズが異なる。 そのさまざまなニーズを各病棟および外来のソーシャルワーカー(MSW)チームがスクリーニングによってキャッチし、 相談外来に繋げ、 多職種カンファレンスで共有する仕組みが北里モデルである。 病院間では、神奈川両立支援モデルとして情報連携の取組みが始まった。 今後は「両立支援マインドと情報連携の心得」 が求められる。
同日のセッション6のシンポジウム「がんサポーティブケアにおける職種専門性とリーダーシップ」 では、4名の多職種の演者が登壇。 各職種のリーダーシップについて発表した。以下に要旨を紹介する。
セッション6 シンポジウム
がんサポーティブケアにおける職種専門性とリーダーシップ
~Beyond Evidenceを目指したチーム力の向上~
座長:
今村 知世氏(昭和大学先端がん治療研究所)
遠藤久美氏(静岡県立静岡がんセンター)
~Beyond Evidenceを目指したチーム力の向上~
座長:
今村 知世氏(昭和大学先端がん治療研究所)
遠藤久美氏(静岡県立静岡がんセンター)
1 がんサポーティブケアのチーム医療におけるBeyond Evidence
朴成和氏(東京大学医科学研究所附属病院腫瘍総合内科)
がん医療では標準治療だけで解決しないアンメットニーズがあり、多職種によるチーム医療が求められる。 がんサポーティブケアにおいては、 チームで手順書を作成し、PDCAサイクルを回すことが重要である。 特別なアイデアやデータの有意差などは不要で、少しずつ工夫を積み重ねることと、その工夫を外部に発信しながら、 他施設での成功事例を積極的に取り入れる姿勢が求められる。 さらに次の進歩を考える余力を持つためには、人的・時間的なコストを意識した効率化も必要である。
2 Protocol Based Pharmacotherapy Management (PBPM)に基づく副作用マネジメント
富士芳美氏(大阪急性期・総合医療センター)
がん薬物療法は、生命に直結する重篤な副作用を発現することがあり、安全かつ効果的な薬物療法を実施するためには、多職種の連携は欠かせない。2010年に厚生労働省医政局が発出した 「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」 を受け、医療の質向上や効率化を目的とした新たなチーム医療の形として、 プロトコールに基づくPBPM(薬物治療管理)の実践が行われるようになった。PBPMの実践は、 薬物療法の質向上や安全性の確保、医師等の業務負担軽減へ寄与するとされ、チーム医療の発展に大きく貢献する。PBPMを実践する施設はまだ 一部であり、 広く普及させるためには、 各施設特有の課題に合わせて効果的に進めていくことが重要である。
3 がんサポーティブケアにおける看護実践の専門性
風間郁子氏(筑波大学附属病院看護部緩和ケアセンター)
がん医療の発展は治療の複雑化や療養環境の多様化を生じ、より個別性の高いケアの工夫が求められるようになった。 苦痛の軽減やQOLの改善・維持を目的とするサポーティブケアにおいて、チーム医療の重要性が増しており、 看護師には、 全人的な苦痛やニーズの観察およびアセスメント、チームメンバーとの連携、セルフケアの促進、 意思決定支援などが必要とされる。 また「生活者として患者を捉える視点」 と 「がんの医学的知識をもって患者を捉える視点」の両者により、患者の強みを生かしながら価値観や生活スタイルにあわせてケアを提供することも重要である。 そのケアを実践するためには、関係を構築し、 ニーズを引き出すためのコミュニケーションスキルが不可欠である。
4 がんサポーティブケアにおけるリハビリテーションの可能性
立松典篤氏(名古屋大学医学部保健学科)
がん患者は、 がんの進行もしくは治療過程で、 体力低下や機能障害、 精神・心理的障害に苛まれ、日常生活能力やQOLが著しく低下すると言われている。 この背景から、近年がんリハビリテーションが着目され、とりわけがんサポーティブケアとしてのがんリハビリテーションのニーズが高まっている。 がんリハビリテーションで最も重要なのは、 患者およびその家族とセラピストが目標を共有することである。 セラピストは患者を多角的な視点で捉え、 ニーズに寄り添った目標設定を行うことが必要である。 チーム医療におけるセラピストの役割としては、 さまざまな機能障害や生活に着目し今後の見通しの予測を立て、 多職種に共有しながら共通のゴールを描くことが求められている。
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