第8回 症例から学ぶ周術期看護
新しいチーム医療のあり方、働き方改革の救世主
スキルミックス型チーム医療 術後疼痛管理(APS)チームを例に
投稿日:2023.09.29
術後のチーム医療はどうすればいいの?
そんな疑問について麻酔科医の谷口英喜先生にわかりやすく解説いただきました。
そんな疑問について麻酔科医の谷口英喜先生にわかりやすく解説いただきました。
今回は、チーム医療について考えてみましょう!
症例
69歳女性、左膝人工関節置換術の手術
術後の経過
翌日リハビリが計画されていたが、体動時NRS※が8で中止となる。主治医は手術中で対応ができないとのこと。看護師は疼痛痛時の指示に応じて対応を進めるも改善せず、院内の術後疼痛管理チームに対応を求めた。
69歳女性、左膝人工関節置換術の手術
術後の経過
翌日リハビリが計画されていたが、体動時NRS※が8で中止となる。主治医は手術中で対応ができないとのこと。看護師は疼痛痛時の指示に応じて対応を進めるも改善せず、院内の術後疼痛管理チームに対応を求めた。
※NRS(numeric rating scale)0が痛みなし、10が想像できる最大の痛みとして、 0~11の11段階に分けられ、現在の痛みがどの程度かを指し示す段階的スケールのこと。
Q. 先生はチーム医療にジレンマを感じることはありませんか?
A. 私も栄養サポートチーム(NST)などの チームスタッフからジレンマを伺う機会があります。
NSTのような従来のチーム医療では、チームによりまとめられた意見が医師に提案される形式で医療行為が間接的に実施されます。主治医の判断によりチームの提案が不採用になったり、提案が確認されなかったりした場合には提案したチームメンバーのモチベーションは低下してしまうでしょう。さらに残念なことに、実際の処方や医療行為は主治医が実施しなければならず、主治医の負担軽減効果はそれほど大きくありません。
Q. チーム医療でジレンマを感じる時は どのように考えたら良いでしょうか?
A. チーム医療のジレンマを打ち消してくれる考え方のシステムがあります。
スキルミックス型チーム医療は、1990年代にカナダの看護職を中心に普及した概念です。当時看護の業務内容が煩雑で業務量が膨れ上がり現場の看護職に重い負担がかっていました。看護業務をセンター化し、センターへのタスクシフト推進を実施したところ看護業務の大幅な負担軽減が認められたのです。それ以降、このようなスキルミックス型のチーム医療が欧米で普及しはじめました1)(図1)。
1)Freund T, Everett C, Griffiths P, Hudon C, Naccarella L, Laurant M : Skill mix, roles and remuneration in the primary care workforce: who are the healthcare professionals in the primary care teams across the world? Int J Nurs Stud 2015 ;52:727-743.
従来のチーム医療が主治医への提案型であったのに対して、スキルミックス型チーム医療は主治医に代わって医療行為を実施する実行型です。医師・看護師の業務負担の軽減を目指した医療チーム内における権限と責任の委譲を伴う形態が、スキルミックスと定義されます。スキルミックス型チームには多職種で協議、主治医への提案だけでなく、方針の決定および実施まで許容されます。
Q. スキルミックスを実施していく上で重要なことはありますか?
A. 主治医や看護師チームなどと契約をしっかり交わすことです。
どこからどこまでのタスクシフト・シェアを行うのか、その依頼方法も含め詳細な契約をすることでタスクシフト・シェアされた業務を安心してチームメンバーが実施できます。契約を結ばないで医療行為を代行実施することは、行為の所在・責任が明確でなく、トラブルの原因ともなります。契約業務はチームリーダーの、重要な責務でもあります。
Q. 術後疼痛管理チームもスキルミックス型ですか?
A. そうです。
令和4年度診療報酬改定に伴い術後疼痛管理チーム加算は算定可能となった加算の1つです。麻酔科医師・看護師・薬剤師により対象患者のチームカンファレンスを実施することなどいくつかの条件を満たすことで、算定が可能となります。筆者の独自調査では、2023年1月の時点で全国の200弱の施設が算定し、施設として各地の厚生局に届け出ていました。当院では、2016年8月より術後疼痛管理チームの活動を開始し、開始当初からスキルミックスを導入してきました(画像1)。
Q. 今回の症例ではどのように対処したのですか?
A. スキルミックス型チーム医療を使用しました。
術後疼痛管理チームが回診し、処方されているロキソプロフェン定時投与に加えてアセトアミノフェン定時投与、レスキューでトラマドールを追加処方して疼痛は軽減、翌日からリハビリが再開されました。今回は、スキルミックス型の典型例である術後疼痛管理チームへのタスクシフトにより患者の苦痛が軽減され、看護師、主治医の業務負担軽減が達成された例を紹介しました。スキルミックス型チーム医療は、医療者の働き方改革には欠かせないシステムです。
本症例でナースが注意すること
・業務のセンター化は、現場の業務負担を軽減
・スキルミックスには、契約が重要
・術後疼痛管理チームの算定に看護師は必須
・スキルミックスには、契約が重要
・術後疼痛管理チームの算定に看護師は必須
Take home message
●求められているチーム医療は実行型
●実行型がスキルミックス型
●働き方改革に必要なシステム
●実行型がスキルミックス型
●働き方改革に必要なシステム
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