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ナースマガジン vol.44

【何ぞやシリーズ第38回】がん治療における『アピアランスケア』って何ぞや?

がん治療における『アピアランスケア』って何ぞや?
がん治療と社会生活を両立することが可能になった昨今、治療中に生じる外見の変化によって自分らしさを失ったと感じる患者さんの苦痛を軽減することを目指したアピアランスケアが注目されています。さて「アピアランスケア」って何ぞや?
作 画 : 上田みう   制 作 : マンガエッグ・エンターテイメント

外見の困りごとにアプローチ

 あまり聞きなれない言葉かもしれないが、アピアランスケアは「医学的・整容的・心理社会的支援を用いて、外見の変化に起因するがん患者の苦痛を軽減するケア」と定義されたもので、新たに確立されたケアと思いがちだけど実は日々看護師が実践しているものなんだよ。きよちゃんはこの前患者さんに抗がん剤の副作用対策の説明をしたそうじゃないか。
 そうだった!学校では教わらなかったし初めて聞いたから新しいケアなのかと思ったけど私もやっていたのね。乳がんで脱毛した患者さんのウィッグやお化粧の勉強会にも参加したことがあるわ。
その通り。処方カスケードは、ポリファーマシーが起きる原因の1つでもある。複数の医療機関を受診することによる足し算的な処方がポリファーマシーにつながりやすいけれど、1つの医療機関で1人の医師の処方だけでも処方カスケードは起こるんだ。何種類以上の薬を併用しているとポリファーマシーになるかという明確な定義はないけれど、6剤以上になると薬剤有害事象という有害な反応が出やすくなると報告されているんだよ。認知症のある人にも、処方カスケードが生じることがあるから注意が必要だ。
 女性へのケアだとばかり思っていたけど、確かに男性でも困る人はいるわね。誰もがが意見の変化について相談できるように私たちの思い込みは変えていく必要がありそうね。
 男性は仕事で困る人が多そうだね。でもぼくたちはどうやってサインをキャッチすればいいのだろう。
 会話の中に「仕事復帰する時どうしよう」「名刺出すときにこの爪の色を見たらどう思われるだろう」といったアピアランスに関する困りごとのサインは出ているから、それを我々は確実に拾い上げて解決へと導く支援をしていくことが必要なんだよ。
 そこは私たち看護師の視点が活かされそうね。

苦痛の根源はどこ?知ることから始まる支援

 外見の変化でわかりやすい脱毛を例に考えてみよう。我々はつい「脱毛ってつらいですよね」と聞きがちだが、脱毛の何がつらいのかは人それぞれ違うものなんだ。そこで「脱毛したら何が一番困りますか?」とたずねると「職場でみんなに心配される」 「まだ子どもにがんのことを伝えていない」という具体的な困りごとが出てくるんだ。実は髪の毛が抜けることそのものよりも、抜けたことで他者からどう思われるかといった対人関係に関する困りごとが多いんだよ。その根底には「がんは治らない病気」「死に近い」という先入観があるんだ。
 そうだったのね。脱毛自体がつらいとばかり考えていたわ。私たちが思い込んで接してしまうと、患者さんは言いだしにくくなってしまうわね。
 このリーフレットを見て!髪が抜けると言われた患者さんから相談されたら「慌てない」 「焦らない」 「惑わされない」という3つについて話をするといいんだ。これはどこの医療機関でも利用可能でアピアランスケアに活用できるんだよ。
 それから脱毛したからといって必ずしもウィッグをつける必要はなく、帽子やネックガードを活用することで日常の多くの場面は対処できるんだよ。患者さんは「高価なウィッグを買わなければならない」という思考になっていることが多いから、その考え方を少し和らげてツールを使い分けて日常生活を過ごせることを理解してもらうこともアピアランスケアなんだ。そこにはがんになっても普通の格好で外出できるというメッセージも込められているんだよ。
 私たち看護師は患者さんの全体像を理解した上で関わっているから、その人にとって何が必要なのかを一緒に考えていくことができるわね。

生き方や価値観を探ることこそ看護師の役割

 そう、アピアランスケアにおける看護師の役割は、患者さんの生き方や生活背景を踏まえながら何が必要なのかを考えるという、その人の本質を探ることなんだ。将来はがん治療の中に当たり前にアピアランスケアが組み込まれて「アピアランスケア」という言葉がなくなる未来がくることが目標だよ。
 まさに全人的看護ね。生きることは自己決定の積み重ねで、それを止める権利は誰にもないから、患者さんの自由と尊厳を尊重してこれからもサポートし続けていくことが私たち看護師に必要なことね。
(つづく)


■横浜市 × アピアランス支援センター アピアランスケアリーフレット
「ウィッグを買いたいと思ったら」
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/appearance/100/20221013NEW.pdf
■患者さま・医療者向け資料
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/appearance/080/index.html
■監修:国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院 アピアランス支援センターセンター長 公認心理師・臨床心理士 藤間 勝子 先生

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