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坪田 康佑先生のコーチングコラム第6回

第6回 優位感覚を使いこなしてコミュニケーション上手に

投稿日:2012.03.12

前回は、相手にあわせたコミュニケーションをつくりあげる新しい視点として「優位感覚」の概要を紹介しました。今回も、引き続きテーラーメイド(個別対応)なコミュニケーションの実現を目指し、「優位感覚」を日々の会話に取り入れるためのポイントを紹介します。

たとえば、部下や後輩に何かを教えるときなどに、あなたがよくアドバイスすることは何でしょうか? 「まずはとにかくやってみることだよ」 「人に聞くのがいちばん早い」
でも、もしかしたら、上記のようなアドバイスはあなたにとって最適な方法であっても、目の前の相手にはもっと違う方法の方が合っている可能性があります。ではどのように相手に合わせた対応をするとよいのでしょうか。
以下、「優位感覚」を日々の会話に取り入れるための4つのポイントを参考にしてみてください。

1.相手の言動を観察する

会う人すべてに優位感覚の診断テストを受けてもらう訳にはいきません。そこで重要となるのが「観察」です。たとえば、会議などで話が混迷した場合、それぞれが持つ優位感覚によって、使う言葉が異なることがあります。以下がその例です。
 聴覚系「患者の声を聞くことが重要。」  触覚系 「患者さんに触れあうことが大切。」  言語感覚系「患者の話の意図を考えることが肝。」 視覚系「患者をよく観ることが必要。」
このように、同じ状況でも、受け取り方や表現の仕方がそれぞれ違うのです。そして、それぞれのスタイルが持つ特徴を感じ取るアンテナが増えるにつれて、相手のスタイルをいち早く把握することが可能になります。

2.相手がよく使う言葉を自分も使う

次に、観察を通して得た情報を元に、相手の優位感覚に合わせた言葉づかいをしてみます。 患者さんの申し送りの時、視覚系の人に「あの患者さん、どんな感じ?(触覚系)」と聞いても、答えにくいはずです。それよりも、「あの患者さん、どんな風に見える?(視覚系)」と、相手が頻繁に使う言葉を会話に取り入れることでペーシング(※)効果が高まります。
 
よく使う言葉の例


 聴覚系  「〜に聞こえる」「話せてよかった」「話を聞けてよかった」
 言語感覚系「〜と思う」「〜と考える」「目的」「意味」
 触覚系  「〜な感じがする」「体験」「経験」
 視覚系  「〜に見える」「思い浮かべる」「絵に描く」

3.自分のコミュニケーションの癖を知る

また、私たちは無意識のうちに自分のスタイルに基づいた言葉づかい、話し方をしています。先日紹介させて頂いたTest.jp あなた自身を知るテストサイト

4.相手の優位感覚を活かすアプローチをする

最後に、相手の優位感覚に合わせて話しかけ方を変えてみましょう。そうすることで会話が深まり、信頼関係を築いたり、コミュニケーションを円滑にしたりすることができるはずです。以下は、優位感覚別のアプローチ方法です。

聴覚系

● なるべく静かな環境で話す
● 自分自身の話すトーンや声の調子に気をつける

言語感覚系

● 目的を明確にして話す、他のこととも関連づけながら話す
● 言葉の定義を共有してから話す

触覚系

● 事例や体験に基づいて話す
● 説明より先に実際にやらせてみる

視覚系

● 全体像を共有してから話す
● 絵や図を描いて説明する
自分と感覚が違う人がいることを意識できると、コミュニケーションを選ぶことができるようになります。 メディカル・コーチ・トレーニング・プログラムを受講されていた医療従事者の方で、ある患者Aさんに対して医療面談をすることに苦手意識を持っている人がいました。 患者さんからの評判のいい先輩から、医療面談に使いやすい医学書、解剖書やイラストを紹介してもらったそうですが、なかなか活用できないと話していました。 この方は、Aさんが、お話をする時に手をよく動かしていることからAさんは「触覚系」であるという仮説を立てて、面談方法を変えてみました。Aさんに直接、模型とご自身の身体の部位に触れて頂きながら面談してみたのです。 Aさんは部屋を出ていかれる時、「初めて、自分の身体のことが分かった。先生の説明、分かりやすくなったね」と満足そうにお話されたそうです。
「あ、あの人に当てはまる!」「今度はこのアプローチをしてみよう」など、頭に浮かんだ患者さんや医療チーム内のメンバーはいませんか? ぜひ、今回お伝えした「優位感覚」の4つのポイントを参考にしながら、テーラーメイドコミュニケーションをはじめてみてください。
※ペーシングとは相手に合わせてコミュニケーションをとるスキルです。お互いの防衛意識を取り払い、親密性を感じさせたり、緊張を柔らげる効果があります。具体的には話すスピードやテンポ、言葉遣いを相手に合わせます。

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