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ナースマガジン vol.43

【何ぞやシリーズ第37回】『PTTOプログラム』って何ぞや?

投稿日:2023.06.05

医療機関における 『感染症まん延時のBCP』って何ぞや?
食事介助の場面でよく遭遇する「なかなか嚥下できない」「食事に時間がかかる」という悩み。原因はさまざまですが、果たして正しいポジショニングはできていますか?ポジショニングで食べる喜びを伝える「POTTプログラム」って何ぞや?
作 画 : 上田みう   制 作 : マンガエッグ・エンターテイメント

食事時のポジショニング教育プログラム

 POTTプログラムは、ただポジショニングをするのではなく、誤嚥予防や自立支援によって「食べるよろこび」を引き出し、QOLの向上を目的とする教育プログラムのこと。 「ポジショニングで(PO) 、食べるよろこびを(T)伝える(T)プログラム」の愛称で、誰もが気軽に実践できるようにという願いが込められているのよ。全国で講演や研修を開催し、POTTプログラムを伝える指導者も育成していて、企業と連携し、折り畳みできる車いす用テーブルやUIクッション、バスタオルなど、食事ケア用品の開発も積極的に行っているの。
 ポジショニングは現場で工夫しながら実践しているけど、あらためて学んだほがよいのですか?
その通り。処方カスケードは、ポリファーマシーが起きる原因の1つでもある。複数の医療機関を受診することによる足し算的な処方がポリファーマシーにつながりやすいけれど、1つの医療機関で1人の医師の処方だけでも処方カスケードは起こるんだ。何種類以上の薬を併用しているとポリファーマシーになるかという明確な定義はないけれど、6剤以上になると薬剤有害事象という有害な反応が出やすくなると報告されているんだよ。認知症のある人にも、処方カスケードが生じることがあるから注意が必要だ。

適切なポジショニングがもたらす効果

 たしかに、褥瘡や拘縮予防のポジショニングに比べて、嚥下とポジショニングの関係は具体的に学ぶ機会がなかったような気がするね。
 何が正しいのかを知らなければ、間違いに気付けないわよね?

 実際の現場でも、患者さんの不良姿勢に気づかなかったり、介助者の位置が逆だったりすることが珍しくないの。適切なポジショニングができなければ、誤嚥しやすくなるし、姿勢が崩れて食事が長引いたり、その結果食事量が減少して栄養状態が悪くなる、というような患者さんへの不利益が生じてしまうわ。

 でも、適切なポジショニングが提供できれば、誤嚥性肺炎の予防や栄養状態の改善、食行動の自立などの効果が期待できるでしょ。食事時間も短縮されるから業務負担が軽減する効果もあると思うわ。患者さんに合わせた食事介助ができて、自分たちの負担も減っていくというわけ。

伝えて拡げてチームで行う

 でも、スタッフ1人だけで患者さんのポジショニングを整えていくのは難しいですよね。
 そうね。看護ケアはチームで行うものだから、1人だけができても効果的なケアにはつながらないわね。そこでPOTTプログラムは、技術と教育をセットにして構成しているの。研修では根拠にもとづいた技術を基本から学び、体験的に学習する。個人の技術向上をPOTTスキルチェック(図)で確認し、その人が次の人へ技術を伝える。そして食事ケアに関わるスタッフ全員が習得し、現場に技術が定着していく。教える人と学ぶ人が相互成長できる仕組みにしているのよ。
 エビデンスにもとづいたケアをするのは看護の基本よね。もとくん、正しいポジショニングを広めて、みんなが患者さんに安全に美味しく食べるよろこびを伝えられるようにしましょ!
 すが看護部!頼もしいぞ。
(つづく)

図:研修で使用する POTT スキルチェック

研修で使用する POTT スキルチェック
※POTT プログラムホームページよりダウンロード可(車椅子基礎コース用もある)
https://pott-program.jp/ques/dl/skill_check_pott.pdf


監修:日本赤十字広島看護大学 名誉教授 POTT プロジェクト代表 迫田綾子先生
参考:「誤嚥を防ぐポジショニングと食事ケアの技術伝承」
(ポジショニングで食べる喜びを伝える POTT プログラム)ホームページ https://pott-program.jp/pott.html
迫田綾子 北出貴則 竹市美加(編):誤嚥予防 , 食事のためのポジショニング POTT プログラム [Web 動画付き ]. 医学書院 , 2023 年

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