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教えて 吉田先生! 【知っておきたい!高齢者の栄養管理 サルコペニア・フレイル予防】

第4回 骨格筋量が測れないときどうする?

投稿日:2023.04.10

前回は「低栄養の診断に骨格筋量が必要なワケ」を、低栄養の考え方の変遷とともにご紹介しました。

今回はその骨格筋量が測れないときについて、最新情報も含めてお伝えします!

1.骨格筋量の測定が普及しないワケ

 これからの低栄養の診断には骨格筋量が必要です。しかし、骨格筋量の測定は思いのほか普及していません。骨格筋量は、高周波電流の流れ具合で評価するBIA法(生体電気インピーダンス法)やDXA法(二重エックス線吸収法)などで測定するのが一般的です。これらの機器は特殊で高価なため、常備していない施設も多いと思います。

 また、BIA法の機器があっても心臓ペースメーカーを留置している場合は測定が禁忌です。浮腫が強い、腹水や胸水が貯留している場合は正確な測定が困難なこともあります。

 さらに、BIAの測定は、1症例あたり数分かかります。測定準備などを考慮すると、1台の測定機器を終日フル稼働させても、何十例もの測定は困難です。

2.骨格筋量が測れない……は、世界共通の問題

 格筋量の測定が普及していないのは、何も日本だけのことではありません。ここ数年、欧米、アジアの研究者たちが、GLIMにおける骨格筋量の評価をどのように行うかということや、BIA法、DXA法が使えない際には、代替となる方法はあるのかについて話し合ってきました。その国際会議では、CT、MRI画像の第3腰椎レベルの大腰筋面積や、超音波(エコー)を用いた方法などが検討されましたが、あらゆる状況で広く一般的に行える方法として再び注目されたのがふくらはぎの周囲長(下腿周囲長/CC:calf circumference)(図1)です。
 ワタクシも参加させていただいたこの国際会議の内容は、先日提言としてまとめられています1、2)。この提言による骨格筋量低下のカットオフ値を表1にまとめます。
※1 SMI:骨格筋量指数
※2 BMIが25~30kg/m²の場合は測定値から3cmをひく。BMIが30kg/m²を越える場合は測定値から7cmをひく。


3.血液検査で骨格筋量がわかる?

  世界中のみんなが困っているんだったら……ということで、この度、ワタクシ『血液検査データを用いて骨格筋量を測定し、サルコペ二アや低栄養を判定するシステム』3)を開発いたしました(特許第7113121号)。

 一般的な血液検査にシスタチンCを追加するだけで、骨格筋量が推定できます。実際にGLIMによる低栄養の診断や、サルコペ二アの判定を行ってみたところ、まずまずの精度であることがわかりました3)。この方法では、浮腫や胸水、腹水のある症例、ペースメーカーを留置した症例のほか、感染症の場合でも推定が可能です。健診で地域単位での調査や、離島や過疎地でも検査を行うことができます。この技術が、国内、あるいは国際的に応用されるよう、研究開発、精度改善を進めていきたいと思っております。特許技術のため、現在は共同研究という形でお使いいただいています。なので、無料です。ぜひ使ってみたいという方は、専用サイト(図2)をご覧ください。一例のご依頼から受付、計算いたします。

(図2)eSMI 2021共同研究特設サイト https://esmiyoshida.wixsite.com/index
連載2回にわたり、低栄養の診断に大切な「骨格筋量」について解説しました。次回連載 第5回目では「GLIM基準で全身性の炎症の評価が必要なワケは?」をお伝えします!
参考文献 
 1)Barazzoni R, Jensen GL, Yoshida S, Cederholm T, Compher C et al. Clin Nutr. 41(6):1425-1433,2022.
 2)Compher C, Cederholm T,Yoshida S, Barazzoni R et al. JPEN J Parenter Enteral Nutr.46(6):1232-1242, 2022. 
 3)Yoshida S, Nakayama Y, Nakayama J, et al. Clin Nutr ESPEN. 48:456-463, 2022

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