ナースマガジン vol.41

【何ぞやシリーズ第36回】医療機関における『感染症まん延時のBCP』って何ぞや？

業務改善・マネジメント

投稿日：2023.02.27

新型コロナウイルス感染症により感染対策の重要性がますます高まる中、医療機関においても不測の事態への準備としてBCPが注目されています。さて、「医療機関における感染症まん延時のＢＣＰ」って何ぞや？

作　画：上田みう　　　制　作：マンガエッグ・エンターテイメント

不測の事態に備えて

　最近BCPという言葉をよく聞くようになったね。BCＰとは、「事業継続計画：Business Continuity Plan」のことだよ。自然災害やテロ、感染症によるクラスター発生など不測の事態が発生したときに、事業を遂行、継続できるよう策定しておく計画のことをいうんだ。

　災害対応のBCPは聞いたことがあったけれど、新型コロナウイルスなどの感染症のまん延も不測の事態といえるのね。

その通り。処方カスケードは、ポリファーマシーが起きる原因の１つでもある。複数の医療機関を受診することによる足し算的な処方がポリファーマシーにつながりやすいけれど、１つの医療機関で１人の医師の処方だけでも処方カスケードは起こるんだ。何種類以上の薬を併用しているとポリファーマシーになるかという明確な定義はないけれど、６剤以上になると薬剤有害事象という有害な反応が出やすくなると報告されているんだよ。認知症のある人にも、処方カスケードが生じることがあるから注意が必要だ。

業務の優先順位を決めておく

　医療機関でも新型コロナウイルス感染症を機に感染症まん延時のBCPを作成しているところもあるのね。

　いざ緊急事態が発生した場合、その場で色々なことを決めていくのは大変なことだろう？事前に何を準備しておくのか、どの業務を優先していくのか、あらかじめ組織内で話し合って合意をとりながら計画を作っていくんだ。

　感染症まん延時のBCPと災害時のBCPに違いはあるのかしら？

　感染症の場合、クラスターなどによって人（職員）が不足することが業務に大きな影響を与えるんだ。感染は時間差で拡がることがあるし、患者さんだけでなく職員自身が感染して勤務できなくなり、十分な業務が行えなくなる可能性が高いんだ。これが災害時と異なる点のひとつだよ。

　だからこそ職員が十分確保できない場合の計画が必要なのね。

組織全体での取り組みが大切

　ＢＣＰを作るときは、病院の中核となる業務（＝病院のミッション）、地域での役割や位置づけを知っておくことが大切だよ。

　そして、病院の種類や診療科など特徴に合わせて組織の中核となる人たちを中心に全病院体制、つまり病院全体で考えていくことが大事なんだ。ウェブサイトから新型コロナウイルス感染症発生時におけるBCPのひな型（※）を閲覧することもできるんだよ。

　感染に関わることだからといって感染管理室や感染対策の専門家だけが取り組むのではなく全部署で関わることが大事なんだね。。ぼくたちスタッフには何ができるだろう。

　感染症まん延時のＢＣＰでは、職員の日常の体調管理や体調不良の場合の対応指針などが定められていることもあるぞ。自分たちの病院にＢＣＰがあるか、ある場合はどんな内容なのか知っておくことも大切だね。

　医療機関における感染症まん延時のＢＣＰも診療業務を続けるための大切な計画なのね。それは患者さんを守るための計画ともいえるわね。看護師の私たちも緊急時を想定して患者さんのために何をするべきかという視点を持ちながら考えていきたいわね。

（つづく）

BCP作成のポイント

診療継続計画の目的を組織内での意識の統一下に明確に定める
地域医療における医療機関の役割を明確にする
本部決定事項は全職員に確実に周知する
業務の整理を行う
職員の体調管理を行う　　　他

■監修：独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター　感染症内科医長藤田崇宏先生
■参考：NCGM 国際感染症センター「医療機関における新型コロナウイルス感染症対策に係る事業継続計画立案のポイント集」
https://dcc.ncgm.go.jp/information/pdf/COVID-19_BCPpoints_20210226.pdf
※NCGM国際感染症センター「新型コロナウイルス感染症発生時における診療継続計画書ひな型」
https://dcc.ncgm.go.jp/information/pdf/20210318103625.html

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