ナースマガジン vol.42
達人に訊く!VRE対策ここがポイント!
投稿日:2023.02.20
近年、新型コロナウイルス感染症の拡大が話題ですが、それ以外にも「薬剤耐性菌」は大きな問題となっています。今回は薬剤耐性菌の中のひとつ「 VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)※以下 VRE」に注目し、感染を拡大させないための工夫、環境衛生などについて、感染対策の達人である四宮聡先生にお伺いしました。
感染対策の達人
四宮 聡 先生
四宮 聡 先生
箕面市立病院 感染制御部 副部長
感染管理認定看護師
感染管理認定看護師
最近では「感染対策」というと、新型コロナウイルス感染症に目がいきがちです。しかし、患者さんが新型コロナウイルス感染症かどうかだけで考えてしまうと、知らないうちに薬剤耐性菌を広めてしまうこともあります。まずは、どのような状況でも標準予防策を守るという意識が大切です。そのうえで、追加で対策が必要な接触感染や飛沫感染の理論も頭に置いておきましょう。現場によっては難しい状況もあるかもしれませんが、感染対策としてできることを、一緒に取り組んでいきましょう。
薬剤耐性菌とは?
今ある抗菌薬が効かなくなる
薬剤耐性菌は、抗菌薬・抗生物質(以下抗菌薬)が効きづらくなった細菌です。発生パターンは2つあります。
薬剤耐性菌で問題になるのは、感染症の発症時に、治療に使える薬剤が限られてしまうことです。時には使える薬剤が、なくなってしまう場合もあります。
さらに広い視点で考えると、薬剤耐性菌による被害があまり認識されていない点も問題です。このまま何も対策をとらなければ、2050年までには薬剤耐性菌により世界中で年間1,000万人の死亡者が出るという推計もあります。
薬剤耐性菌で問題になるのは、感染症の発症時に、治療に使える薬剤が限られてしまうことです。時には使える薬剤が、なくなってしまう場合もあります。
さらに広い視点で考えると、薬剤耐性菌による被害があまり認識されていない点も問題です。このまま何も対策をとらなければ、2050年までには薬剤耐性菌により世界中で年間1,000万人の死亡者が出るという推計もあります。
抗菌薬を適切に取り扱うために知っておくべきポイント
抗菌薬は、正しい薬剤を、必要な期間必要な量だけ、正しいルートで投与することが大切です。特に問題となるのは投与期間や量が不十分なケースです。
感染症の種類によっては、抗菌薬投与によって数日で症状が改善しても、中途半端に投与を減量したり、中止したりすると再燃や重篤化することがあります。初めから終わりまで正しい量で投与して、感染症を完治させることが、新たな薬剤耐性菌を生み出さないためにも大切です。
最近の傾向では、患者さんの状態が安定し経口摂取が可能なら、点滴から内服へ抗菌薬を変更してもよい感染症もあります。点滴投与では、スタッフ側の準備や、投与ルートからの感染対策などの業務に加え、患者さんは針を刺入する時の痛みや、行動が制限されるといった負担があります。適正使用が可能であれば、内服へ変更することで
、スタッフと患者さん双方に負担が少なくなるメリットがあります。
感染症の種類によっては、抗菌薬投与によって数日で症状が改善しても、中途半端に投与を減量したり、中止したりすると再燃や重篤化することがあります。初めから終わりまで正しい量で投与して、感染症を完治させることが、新たな薬剤耐性菌を生み出さないためにも大切です。
最近の傾向では、患者さんの状態が安定し経口摂取が可能なら、点滴から内服へ抗菌薬を変更してもよい感染症もあります。点滴投与では、スタッフ側の準備や、投与ルートからの感染対策などの業務に加え、患者さんは針を刺入する時の痛みや、行動が制限されるといった負担があります。適正使用が可能であれば、内服へ変更することで
、スタッフと患者さん双方に負担が少なくなるメリットがあります。
薬剤耐性菌の発生パターン
▶抗菌薬の適正な使い方がされずに耐性になるケース
▶ 突然変異のように出現した薬剤耐性菌が、感染対策が不十分であったために病院や施設で拡大するケース
▶ 突然変異のように出現した薬剤耐性菌が、感染対策が不十分であったために病院や施設で拡大するケース
A S T (抗菌薬適正使用チーム )
当院では、医師・薬剤師・看護師・臨床検査技師で構成されるASTによって、抗菌薬の適正使用を常にチェックしています。耐性菌の検出を未然に防いだり、副作用に注意したりしながら、感染症の治療を効果的に行えるようサポートしています。
VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)とは?
腸球菌は、病院では比較的よく検出される菌の一つで、尿培養などで検出されることも少なくありません。
病原性は低く、症状からVREを想定することはほぼできません。免疫機能が低下しやすい血液疾患や移植後などに腹膜炎や敗血症、患部の発赤などの炎症症状が生じたり、同室者がVREを保菌していたことがきっかけで検査をしたりするなど、何かの拍子に発見されることがほとんどです。気づかないうちに感染拡大してしまうため、注意が必要です。
病原性は低く、症状からVREを想定することはほぼできません。免疫機能が低下しやすい血液疾患や移植後などに腹膜炎や敗血症、患部の発赤などの炎症症状が生じたり、同室者がVREを保菌していたことがきっかけで検査をしたりするなど、何かの拍子に発見されることがほとんどです。気づかないうちに感染拡大してしまうため、注意が必要です。
VREの特徴
▶ バンコマイシンのほか多くの薬剤に耐性がある腸球菌
▶ 5類感染症で、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出が必要
▶ 他国に比べて検出率が低いため、認知度が低い
▶ 抗菌薬リネゾリド(LZD)が有効だが、適正使用に注意が必要
▶ 日本では年間50~100例ほどの感染の報告がある
▶ 2010年代に感染者数は減少したが、2020年以降は再び増加傾向
▶ 健康な人は無症状のため、感染拡大に気づきにくい
▶ 生存期間が長い(療養環境下に月単位で生存
▶ 5類感染症で、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出が必要
▶ 他国に比べて検出率が低いため、認知度が低い
▶ 抗菌薬リネゾリド(LZD)が有効だが、適正使用に注意が必要
▶ 日本では年間50~100例ほどの感染の報告がある
▶ 2010年代に感染者数は減少したが、2020年以降は再び増加傾向
▶ 健康な人は無症状のため、感染拡大に気づきにくい
▶ 生存期間が長い(療養環境下に月単位で生存
VREを広めないために知っておくべきこと
VREは主に消化管や尿道にいるため、ほとんどが排泄に関連して感染拡大します。病院でのアウトブレイクの事例では、オムツ交換など排泄に関する業務がリスクになることが多い、という報告があります。感染予防のためには、オムツ交換や陰部洗浄などのケアに注意しましょう。ただしの流れの中で、どこにリスクがあるのか考えることが大切です。
例えば「オムツ交換」というと、1人の方へのケアをイメージしがちですが、実際は一度に多くの方をケアすることも珍しくありません。50床の施設の夜勤で、スタッフ
2人で一度にオムツ交換をする場合、そのケアの中に、準備やオムツ交換、片付け、次の部屋に行く、という連続する流れがあります。
片付けのタイミングで、汚れたオムツが入った袋を床に置いてしまうと、それがリスクになります。このように感染症を広げてしまうときには、必ずどこかに落とし穴があります。
また、排泄ケアはもちろんですが、環境整備も大切です。療養環境にVREがいると、数か月生きていることもあるので環境にいる菌を減らす必要があります。標準予防策や所属施設の感染対策マニュアルに沿って、基本的な感染予防も忘れないようにしましょう。
例えば「オムツ交換」というと、1人の方へのケアをイメージしがちですが、実際は一度に多くの方をケアすることも珍しくありません。50床の施設の夜勤で、スタッフ
2人で一度にオムツ交換をする場合、そのケアの中に、準備やオムツ交換、片付け、次の部屋に行く、という連続する流れがあります。
片付けのタイミングで、汚れたオムツが入った袋を床に置いてしまうと、それがリスクになります。このように感染症を広げてしまうときには、必ずどこかに落とし穴があります。
また、排泄ケアはもちろんですが、環境整備も大切です。療養環境にVREがいると、数か月生きていることもあるので環境にいる菌を減らす必要があります。標準予防策や所属施設の感染対策マニュアルに沿って、基本的な感染予防も忘れないようにしましょう。
VREを拡大!? オムツ交換で落とし穴となりがちな行動
1.オムツを床に置く
2.シャワーボトルの全体を消毒できていない
3.使用済みのシャワーボトルを清潔なボトルと一緒に並べる
4.排泄ケア後 、個人防護具を変えずに次の患者さんのケアにあたる
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