ナースマガジン vol.42
【看護ケアQ&A】はじめよう、見直そう感染対策
新型コロナウイルス感染症(以下一部新型コロナ)の流行から4年目に入り、感染対策は標準予防策を基本としながらより徹底して実施されるようになりました。読者の皆様は、日々模索しながら感染対策に取り組まれていることかと思います。今回、アンケートでお寄せいただいた疑問や悩みについて、感染対策の専門家である森兼啓太先生にお伺いします。(編集部)
監修
森兼 啓太 先生
山形大学医学部附属病院 検査部 部長
病院教授・感染制御部 部長
病院教授・感染制御部 部長
手指衛生
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、病棟ラウンドが困難なため手指衛生が適切なタイミングで行えているかどうか直接観察しづらい状況にあります。
—-総合病院(ケアミックス) 感染管理認定看護師
これまでICT(Infection Control Team)が直接観察に行くことで、正しい手指衛生の意識づけになっていた側面もありますが、現在、感染面、効率面からもチームでのラウンドが難しいのが現状かと思います。世界保健機関(WHO)では5つの正しい手指指衛生のタイミングを「患者に触れる前」 「清潔/無菌操作の前」 「体液に曝露された可能性のある場合」「患者に触れた後」 「患者周辺の物品に触れた後」(図1)とし、これはコロナ禍である今も変わっていません。ただし全員が正しく認識しているとは限らないため、誰でも正しく認識できるよう、繰り返し継続的な教育が必要です。
中には正しいタイミングを知っていても「必要性を感じない」などの理由から省略しているケースがあるため、時にはリンクナースがそれぞれの部署で直接観察し、フィードバックすることも有効かと思います。
「手荒れ」も手指衛生を行いにくくしてしまいます。職場でのハンドクリームによるスキンケアはもちろん、手荒れが重症な場合は自宅でもスキンケアが大切です。改善しない場合はそのままにせず、できれば皮膚科医の評価も必要かと思います。
「手荒れ」も手指衛生を行いにくくしてしまいます。職場でのハンドクリームによるスキンケアはもちろん、手荒れが重症な場合は自宅でもスキンケアが大切です。改善しない場合はそのままにせず、できれば皮膚科医の評価も必要かと思います。
患者配置( ゾ ーニング )
一般病床の一部を新型コロナウイルス感染症患者の病床として運用しています。この場合のゾーニングのコツを知りたいです。また、ゾーニングの考え方、基礎知識を再度確認したいと思っています。
—-療養病院 看護管理室
新型コロナウイルス感染症の主な感染経路は「飛沫感染」ですが、空気中を漂う細かい粒子を介した「エアロゾル感染」もあると考えられます。さらに「接触感染」の経路もあるとされています。従って、感染していない患者を部屋を分けるのは必要最低限の対策です。
陰圧装置がない場合には、換気扇を取り付け24時間運転するのが効果的です。
極端に言うと、陰圧になっていれば部屋の場所に決まりはありませんが、スタッフの動線を考えると一般的には病棟の端に部屋を確保するのが望ましいと考えられます。他にもトイレに近い部屋を感染者専用の部屋にして、他の患者は別のトイレを使う区分けの仕方もあると思います。また、個人防護具を着脱し、感染性医療廃棄物のゴミ箱を設置できるような場所があるかどうかなども条件になってきます。個室が十分広ければ、その個室の中で廃棄してから退室しても良いですが、狭い場合はその部屋の中に設置出来ないかもしれません。保健所によっては患者の部屋に感染性医療廃棄物を置かないように指導しているところもあります。病棟の特徴を考えつつ、総合的にどの場所が一番適切かはそれぞれの施設で判断していただくことになります。
極端に言うと、陰圧になっていれば部屋の場所に決まりはありませんが、スタッフの動線を考えると一般的には病棟の端に部屋を確保するのが望ましいと考えられます。他にもトイレに近い部屋を感染者専用の部屋にして、他の患者は別のトイレを使う区分けの仕方もあると思います。また、個人防護具を着脱し、感染性医療廃棄物のゴミ箱を設置できるような場所があるかどうかなども条件になってきます。個室が十分広ければ、その個室の中で廃棄してから退室しても良いですが、狭い場合はその部屋の中に設置出来ないかもしれません。保健所によっては患者の部屋に感染性医療廃棄物を置かないように指導しているところもあります。病棟の特徴を考えつつ、総合的にどの場所が一番適切かはそれぞれの施設で判断していただくことになります。
患者配置( ゾーニング )
新型コロナウイルス感染症患者の手術をする場合の対策練っています。施設の構造上イエローゾーンの確保が難しく、手術室内をイエローゾーンとレッドゾーンに簡易的に分ける方法を考えています。どのような対策をとるのが良いか教えていただきたいです。
—-整形専門病院 リンクナース(感染)
手術室内は陽圧で、1時間に15回以上の換気も行われるなど施設基準が定められています。これは新型コロナ対策としても非常に有効です。そのため運用方法によっては、必ずしもイエローゾーンが必要というわけではありません。手術室の空調が正常に稼働しているかどうかのチェックは継続しましょう。
一般的に患者は静かな状態で手術室に入室するため、患者にはサージカルマスク、スタッフは可能であればN95マスクを着用することで感染リスクは少なくなると考えて良いと思います。全身麻酔などの処置の際は、患者がマスクを外すことにより感染リスクが生じるため、一緒に入室しているスタッフは必ずN95マスクを着用します。もちろん手術中の血液や体液による感染防止目的のガウンと手袋の着用は大切です。
ゾーニングの視点としては、手術室をレッドゾーンとし、前室が設けられる場合はそこをイエローゾーンとしますが、イエローゾーンがなければ手術ができないということではないと思います。ドアの開閉と入室するスタッフをなるべく必要最小限にします。あるいは自動ドアを手動化することで完全に扉が開いてしまうことはないため、手術室外への影響が最小限に抑えられます。
ゾーニングの視点としては、手術室をレッドゾーンとし、前室が設けられる場合はそこをイエローゾーンとしますが、イエローゾーンがなければ手術ができないということではないと思います。ドアの開閉と入室するスタッフをなるべく必要最小限にします。あるいは自動ドアを手動化することで完全に扉が開いてしまうことはないため、手術室外への影響が最小限に抑えられます。
患者配置( ゾーニング )
精神科入院中の患者のゾーニングですが、徘徊や妄想などでの隔離が困難な事例の対応方法を教えていただきたいと思います。
—-精神科病院スタッフ
精神疾患や認知症のある患者は私たち医療従事者が予測きない行動をすることが多いかと思います。感染症対策としては非常に難しいケースも多く、現場では大変な思いをされているのではないでしょうか。状況によりますが感染している患者は、個室あるいは病棟、とにかくある区域からは出ないようにするということを守るしかありません。
逆にその中であれば自由に動き回れるようにし、スタッフの予測しないような行動を取る可能性も考えておく必要があります。その領域の中にスタッフが入るときには、N95マスク個人防護具の着用が必須です。
他に行えるのは、環境整備です。患者は必ずマスクを着用できるとは限らないため、咳嗽により唾液を飛ばしたり、また異物を舐めたりするリスクも考えられます。。定期的な清拭による清掃を継続する必要があります。ただ、繰り返し汚染するなど限界もあるでしょう。どこまでできるのかある程度それぞれの施設の基準で割り切って考えることも必要になってくると思います。
他に行えるのは、環境整備です。患者は必ずマスクを着用できるとは限らないため、咳嗽により唾液を飛ばしたり、また異物を舐めたりするリスクも考えられます。。定期的な清拭による清掃を継続する必要があります。ただ、繰り返し汚染するなど限界もあるでしょう。どこまでできるのかある程度それぞれの施設の基準で割り切って考えることも必要になってくると思います。
個人防護具 (PPE:Personal Protective Equipment)
個人防護具は個室単位で着脱を基本としていますが、新型コロナ感染症陽性者が複数人発生した場合、フロア全体をレッドゾーンとし、レッドゾーン内であれば部屋に入る際、ガウンやマスク、フェイスシールドはそのまま着用してケアをしています。レッドゾーン内の複数の部屋を受け持った場合、入退室毎にガウンやマスク、フェイスシールドを着脱する必要がありますか。現状の方法で問題はないのでしょうか。
—-総合病院(ケアミックス)スタッフ
新型コロナウイルス感染症だけを考えるのであれば、個人防護具を変えなくてもいいという考えがでてくるかもしれません。ただし、患者に接触するものに関しては、それ以外の病原体、MRSAなどの薬剤耐性菌を広げてしまう可能性を考慮しての感染対策が必要です(図3)。ガウンと手袋、これは患者に接触するため交換が原則になってくると思います。
ただガウンの着脱に関しては、手間や時間、コスト、着脱の際の感染リスクなどから、毎回確実に絶対に変えなさい正直なところ言いづらい部分もあります。原則として変える必要がありますが、状況によって変えることができない場面もあり得るでしょう。
マスクとフェイスシールドや目の防護具、これは患者に直接触れるものではないため、必ずその都度交換する必要はありません。むしろ交換することで、いろいろなところに触れてしまう点がマイナスとなります。例外的に、体液などが飛散する手技で、マスクや目の防護具に飛び散って汚染したときには交換します。
手袋は患者ごとに変えるべきで、必ず手袋を外して手指衛生をしてから次の患者のケアに行くという癖をつける必要があります。
マスクとフェイスシールドや目の防護具、これは患者に直接触れるものではないため、必ずその都度交換する必要はありません。むしろ交換することで、いろいろなところに触れてしまう点がマイナスとなります。例外的に、体液などが飛散する手技で、マスクや目の防護具に飛び散って汚染したときには交換します。
手袋は患者ごとに変えるべきで、必ず手袋を外して手指衛生をしてから次の患者のケアに行くという癖をつける必要があります。
スタッフへの周知・指導
コロナエリアスタッフの疲弊や慣れによる感染対策に対しての意識が薄くなってきているように思います。スタッフ対しての声掛けや対応に悩んでいます。
—-総合病院(ケアミックス)スタッフ
なかなか流行に終わりが見えない中で、感染対策への意識が薄くなっていくことは十分に考えられます。繰り返し基本的な感染対策を伝える、個人防護具の装着シーンを見守り、間違っていれば適宜注意喚起したりするのが一般的な方法ですが、後遺症やワクチンの効果についての情報提供も予防の意識を高める方法の一つです。
新型コロナウイルス感染症は、後遺症や基礎疾患のある人の重症化が大きな問題となっており後遺症や基礎疾患のある人の重症、そこが感染対策を継続せざるを得ない理由の一つです。
個人差はありますが、症状が改善しても長く後遺症に悩まされるケースがあることなどを繰り返し伝え、スタッフの意識を保っていく必要があります。家族からの感染は防ぎ得ないこともありますが、患者からの感染は標準予防策や手指衛生の徹底で防げることも多いので、非常にもったいないとも言えます。
また、医療従事者はすでに5回目の新型コロナウイルスワクチンの接種の接種を終えた人が多いのではないかと思いますが、ワクチンの効果もウイルスの変異によって短くなってきています(図4)。英国健康安全保障局の報告によると4回目の接種後10週間で22%の有効率とされています。
スタッフへの情報提供の方法ですが、医療法により年2回の院内感染対策に関する講習会実施が定められていますので、これを活用するのも良いと思います。
個人差はありますが、症状が改善しても長く後遺症に悩まされるケースがあることなどを繰り返し伝え、スタッフの意識を保っていく必要があります。家族からの感染は防ぎ得ないこともありますが、患者からの感染は標準予防策や手指衛生の徹底で防げることも多いので、非常にもったいないとも言えます。
また、医療従事者はすでに5回目の新型コロナウイルスワクチンの接種の接種を終えた人が多いのではないかと思いますが、ワクチンの効果もウイルスの変異によって短くなってきています(図4)。英国健康安全保障局の報告によると4回目の接種後10週間で22%の有効率とされています。
スタッフへの情報提供の方法ですが、医療法により年2回の院内感染対策に関する講習会実施が定められていますので、これを活用するのも良いと思います。
この冬インフルエンザの流行の予測は……?
日本でのインフルエンザの流予測として、よく参考になると言われるのは半年前の南半球の状況です。コロナ流行後は一時的に減少していたインフルエンザですが、2022年の5月から9月、オーストラリアでの流行が報告されま。ただしオーストラリアではほぼマスクの着用をやめている状況です。日本ではマスクの着用が遵守されているため、流行するかどうかはっきりとは言えません。
もちろん新型コロナとインフルエンザウイルス感染症が同時流行した場合に備え、両方のワクチン接種をする、あるいは上気道感染症状のときに新型コロナとインフルエンザ両方の検査をするなどの対策は必要になってくるでしょう。感染対策としては、いずれも基本的には標準予防策と感染経路別予防策が大切で、そこから大きく外れることはありません。
もちろん新型コロナとインフルエンザウイルス感染症が同時流行した場合に備え、両方のワクチン接種をする、あるいは上気道感染症状のときに新型コロナとインフルエンザ両方の検査をするなどの対策は必要になってくるでしょう。感染対策としては、いずれも基本的には標準予防策と感染経路別予防策が大切で、そこから大きく外れることはありません。
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