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医療現場の未来を変えるアイテムシリーズ

ナース編集者 とろみ付き炭酸飲料 を飲んでみました

投稿日:2023.03.31

ナースマガジン41号の「聴きある記」でも紹介した、炭酸飲料へのとろみ付け。高齢者にも人気の炭酸飲料にとろみをつけられたら、味わう楽しみの広がりや積極的な水分摂取が期待できるのでは?今回、摂食・嚥下障害看護認定看護師のお二人に作っていただいたとろみ付き炭酸飲料を、私たちナース編集者も試飲してみました。
総 監 修 :戸原 玄先生(東京医科歯科大学 摂食嚥下リハビリテーション学分野 教授)
企画監修:本村美和先生(茨城県立大学保健医療学部看護学科 准教授・看護科学博士)
協 力:
村上未来さん(東京都立神経病院 看護部 看護師長 / 摂食・嚥下障害看護認定看護師)
青木奈々さん(桜新町アーバンクリニック在宅医療部 桜新町ナースケア・ステーション / 摂食・嚥下障害看護認定看護師)

炭酸飲料+とろみ=??

 看護 ・ 介護の現場で日常的に使用されるとろみ材。 改良が進み、 新製品も続々登場しています。

 誰にでも好きな飲み物があり、 高齢者は炭酸飲料を好む方が多いことが知られています。 ところが嚥下機能が低下してきてとろみ付けが必要になるにつれ、 炭酸飲料が飲み物から除外されていないでしょうか。好きなものを飲むことが日々の生活に楽しさを添えるのであれば、 嚥下機能が低下しても炭酸飲料にもとろみをつけて安全に楽しんでほしいと思うのです。

 でも、 炭酸飲料という爽快感が前提の飲み物と、 とろみという爽快感を前提としない物性をミックスした飲み物とは、 実際どんな 「味わい」 なのか?

 そこで今回本誌ナース編集者を含む嚥下に問題の無い成人男女4名で試飲してみることに。 評価項目は嚥下機能に関することではなく、 官能評価として本村先生にあげていただきました (図1) 。
 炭酸飲料として身近な飲み物はコーラ。とろみ材は病院や在宅でも日々使用されている製品を使い、 とろみ付きコーラのサンプルを4種類用意しました。

 炭酸とろみ付けのポイントは、 グラスやコップなどに注いで付ける場合とペットボトル飲料にそのままつける場合で違いがあります。 グラスの場合は飲料やグラスを冷や
し、 静かに混ぜるなどで炭酸が抜けるのを防ぎますが、 ペ ットボトルにとろみ材を入れる場合は密閉できるので、 よく振って溶かしたら冷蔵庫で寝かす、 という方法が広まっています。 ただし、 ペットボトルの中身を少し減らしておかないと、 炭酸飲料があふれ出すことがあるので少しだけ注意が必要です。
※各社サイトに推奨される方法が動画などで解説されているので、 詳細はそちらをご覧ください。
評価項目
1.おいしさ
2.におい 
3.のどごし 
4.シュワシュワ感
5.飲み込みやすさ 
6.見た目 
7.満足度

評価
① おいしくない/よくない

③どちらともいえない

⑤ おいしい/よい

四人四色で分かれる評価

 7項目の評価が終わったところで、 村上ナースのファシリテートの下、 評価とその理由を発表してもらいました。 とろりとした物性とシュワシュワした炭酸の残り具合の両面からとろみ付きコーラを評価する中で、 意見が分かれました。
とろり感
とろり感が強いサンプルをマイナス評価する人がいれば、自販機で売っている振って飲むゼリーのようで悪くない、 という評価をする人も。
飲み込みやすさ
「とろり感が強く飲み込みにくい」 とする人、 嚥下機能の低下した方が飲むことを想定して 「とろり感がついて飲み込みやすいのでは」 と当編集部の塩野。 「適度なとろみ」 という人がいれば 「喉にへばりつく感じ」 という人も。
見た目
「コーラらしい色」 や 「泡の大きさや残り方」 が高評価のポイントになっていました。

私たちがチャレンジし安全なとろみ飲料の提供を

 画面の向こうからは、 「選択肢が多ければ多いほど、 とろみ材の特徴はもとより飲む人それぞれの嗜好や今まで飲んできた炭酸の記憶が、 美味しさや飲みやすさに影響していることを意識する必要があります。 同じ手順や条件でとろみを付けても飲み物との組み合わせによってとろみの付き具合も異なります。 そういうことをすべて把握して、 その方にとって、 ベターもしくはベストなものを私達が選択 ・ 提供できるように、 知識と技術が求められていると思います」 と本村先生。
 そんな知識と技術を駆使して在宅療養者にもとろみ炭酸の楽しさを伝えているのが青木ナース。 「好きなものは誤嚥しない」という〝在宅あるある〞を目の当たりにしたことがこの道へのきっかけと言います。 ナースとしては、 誤嚥や窒息をさせない、 脱水症を引き起こさないといったミッションを背負いつつ、 日々用意をするご家族にもできるだけ負担をかけずに継続できるよう、日々模索なのだそうです。
 一 方、 医療的ケア児の看護を専門としてきた当編集部村松は、 「医療的ケア児たちは、食の楽しみをなかなか広げられないという課題を持っていて、 特に炭酸なんて試したことがない、 試したりしてい いのか、 と保護者も考えています。 でも体が安定してきたら、 安全をベースとした上で、 初めてのシュワシュワ、ワクワクを楽しんでほしい」 と、 対象は高齢者だけではないことにも触れました。

 炭酸飲料と言えばゴックンとのど越しでその爽快感を味わうものだと考えがちですが、 「舌の上でもシ ュワシ ュワ感が残った」 という評価から、 スプーン1杯のとろみ炭酸の持つ可能性に期待を寄せるのは村上ナース。

 舌の上でシュワシュワを味わうことが、 食への意欲や食べるための口腔機能改善のきっかけになるのではないか、 とのことでした。

 「今後、 もっといろいろ試したくなると思いますが、 それこそが本当に大切なことです。 嚥下障害のある方は、 それをあきらめざるを得ないのですから。 ましてやお子さんに関しては、 体験すらままならない現状です。 皆さんのチャレンジが、 そんな方々へ希望の光となって届くことと信じています」 と、 本村先生は本企画の趣旨をまとめて下さりドロンされました (世代の若い方へ⇒zoomを退室されました)

失敗から学ぶ。村上ナースに訊くとろみ付けのコツ

 コーラの後は待ちに待ったビールのとろみ付けです。 この日のためにサンプルが無くなるほど夜な夜な練習してくださった村上ナースですが・・・。ペットボトルに移し替えたビールにとろみ材を入れる際、 泡の部分にとろみ材が広がってしまったようで、 泡と液面の間にダマができてしまいました!味は申し分なかったので 「ビールゼリーだと思えば?」 という声も聞かれる中、 すぐに飲みたい派は液状のとろみ材にビールを注いで攪拌してみました。 すると、 クラフトビールのような色の、 滑らかなとろみビールのできあがり。 手軽でダマなく作れるのは嬉しいポイントでした。

 さて失敗は成功の母。 リベンジに燃える村上ナースに、 とろみ付けのコツを教えていただきました。

とろみ付けのコツ(ペットボトル使用の場合)

●泡をたてないため、炭酸飲料、ペットボトル、注ぐグラスはよく冷やしておく
●とろみ材を手早く入れるため、2本使用の場合は1本に移しておく
●とろみ材スティックの切り口を斜めにすると、粉を液面に均一に入れやすくなる
●ペットボトルを斜めにし、側面にそわせるようにゆっくり炭酸飲料を注ぐ
●とろみ材切り口先端をペットボトルの奥まで入れ、液面に近いところからまんべんなくとろみ材を入れる
●入れ終わったらすぐに蓋をしめ、炭酸を逃がさない

リハビリテーションへの有効性も

 最後に、 総監修の戸原先生からは嬉しい研究結果の報告が。
「ビールや清涼飲料水も含めて炭酸飲料が大好きな方がおられるのにも関わらず、今まではとろみをつけようとすると混ぜている間に炭酸が抜けて、 炭酸飲料だった何かになってしまう・・・という悲しい事態がありました。(※1)

 なんとか嚥下が悪い方にも炭酸飲料を楽しんでいただけるようなとろみ付けの方法が多々ご紹介されておりますが、 実際に炭酸とろみは、 嚥下障害に対してもよい影響を及ぼすことがわかりました。

 炭酸とろみと炭酸のないとろみを嚥下障害の方に飲んでいただいて比較したところ、 炭酸とろみの方が嚥下反射が早く起こることがわかりました。楽しんでいただけるだけではなくて、 リハビリにも有効ではないかと考えています」 。
 とろみ付き炭酸飲料、 これからも目が離せませんね。(2022年11月29日実施)
協力
株式会社クリニコ 
ピジョンタヒラ株式会社(五十音順)
ニュートリー株式会社
(※1)Saiki A, Tohara H, Maeda K, et al: Effects of thickenedcarbonated cola in older patients with dysphagia, Scientific Report (in press)

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