ナースマガジン vol.41
【何ぞやシリーズ第35回】 『多職種で取り組む転倒 予防チーム』って何ぞや?
投稿日:2023.01.16
近年多職種で「転倒予防チーム」を立ち上げ、病院全体で転倒予防に取り組んでいる病院が増えてきています。気になるのは転倒予防チームの役割やその活動です 。
さて 、「多職種で取り組む転倒予防チーム」って何ぞや?
さて 、「多職種で取り組む転倒予防チーム」って何ぞや?
多職種チームで「患者さんの安全を守る」
現在は転倒だけでなく多職種でチームを作り、病院を横断して活動する取り組みが増えているね。その目的は君たち、わかるかな?
第一は「医療安全」 。患者さんの安全を守ることだ。どのチームアプローチにおいても「看護の視点」だけでなく医師や薬剤師、理学療法士などそれぞれの専門性を活かして総合的な評価をすることが大事なんだよ。
第一は「医療安全」 。患者さんの安全を守ることだ。どのチームアプローチにおいても「看護の視点」だけでなく医師や薬剤師、理学療法士などそれぞれの専門性を活かして総合的な評価をすることが大事なんだよ。
転倒予防は私たちが日頃から患者さんの安全を守るうえで気を付けているけれど、その背景には運動機能、感覚機能、認知機能栄養、薬剤、全身状態、環境など、色々な要因が含まれているものね。
交通事故よりも、転倒事故で亡くなる人が増えている今(図1) 、まさしく多職種で取り組むべきテーマなのね。
交通事故よりも、転倒事故で亡くなる人が増えている今(図1) 、まさしく多職種で取り組むべきテーマなのね。
図 1:令和3年(2021)の不慮の事故、死亡の原因の内訳
出典:厚生労働省 令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況
第7表 死亡数・死亡率(人口10万対)、死因簡単分類別をもとに作成
出典:厚生労働省 令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況
第7表 死亡数・死亡率(人口10万対)、死因簡単分類別をもとに作成
転倒予防チームの役割・活動
その通り。処方カスケードは、ポリファーマシーが起きる原因の1つでもある。複数の医療機関を受診することによる足し算的な処方がポリファーマシーにつながりやすいけれど、1つの医療機関で1人の医師の処方だけでも処方カスケードは起こるんだ。何種類以上の薬を併用しているとポリファーマシーになるかという明確な定義はないけれど、6剤以上になると薬剤有害事象という有害な反応が出やすくなると報告されているんだよ。認知症のある人にも、処方カスケードが生じることがあるから注意が必要だ。
中には度重なる患者さんの転倒で、解決の糸口が見えずに疲弊してしまっているスタッフがいるかもしれないわ。そんな時に相談できるチームがあることはスタッフの心を守るうえでも大事と言えるわね。
その通り 。実際に転倒を0にするのは難しい。だからこそ重大な事故をなくすための努力が必要なんだ。チームで事例を検証して、患者さんの「内的要因(身体要因:麻痺など) 」 「外的要因(環境要因:履物や障害物など) 」 「行動要因(動きたい気持ち、理由など) 」をしっかり評価していくことが大事だぞ。
病院によっては重大事故をピックアップして検証したり、困難事例に焦点を当てたり、中には転倒事故が多く起きている病棟に絞って活動しているところもある。今のところ、活動のペースや参加する職種は、各病院の規模や事情などに応じて様々なようだ。
病院によっては重大事故をピックアップして検証したり、困難事例に焦点を当てたり、中には転倒事故が多く起きている病棟に絞って活動しているところもある。今のところ、活動のペースや参加する職種は、各病院の規模や事情などに応じて様々なようだ。
お互い意見を言い合える関係づくりが大切
転倒予防チームで活動するうえで大切なことって何だろう?
それはね、自分の弱みを見せることじゃないかな。看護師同士だけでなく、ほかの職種に相談することで道が開けることも多いぞ。多職種との交流が思うようにいかないことも多いかもしれんが、気づきや違和感など風通しよく何でも相談しあえる関係づくりが大切なんだ。転倒予防チームを作ることだけではなく、継続して活きた活動をしていくためにも普段からのコミュニケーションも大切にしていきたいね。
それぞれの専門的な視点から評価して立てたチームとしての転倒防止策を、その都度病棟にフィードバックしていきたいわね。さらに現場の声も十分に吸い上げて、チームでの取り組みの効果が実証されれば、今後も病院や施設で転倒予防チームの活動が増えていきそうね。
(つづく)
■監 修:高崎健康福祉大学 保健医療学部 看護学科 老年看護学領域 准教授 認知症看護認定看護師 梅原 里実 先生
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