ナースマガジン vol.41
達人に訊く!認知症患者の転倒予防のアセスメント ここがポイント!
投稿日:2023.01.09
2025年には高齢者の約 5人に 1人が認知症になると予測されています。そのため認知症を持つ人が、身体的疾患や外傷などにより、急な入院をするケースも少なくありません。
今回は特に入院初期において、認知症患者の転倒に対する考え方やアセスメントのポイントを、認知症看護の達人である梅原里実先生にお伺いしました。
今回は特に入院初期において、認知症患者の転倒に対する考え方やアセスメントのポイントを、認知症看護の達人である梅原里実先生にお伺いしました。
認知症看護の達人
梅原 里実 先生
梅原 里実 先生
高崎健康福祉大学
保健医療学部 看護学科 老年看護学領域
准教授 認知症看護認定看護師
保健医療学部 看護学科 老年看護学領域
准教授 認知症看護認定看護師
認知症患者の転倒予防は「へこたれない、あきらめない」がテーマでしょうか。認知症の方は日々心理的変化があり、個人プレーでは疲弊してしまいます。一人で抱え込まずに、チームで取り組むことが大切です。「この人はなぜ転ぶの?日常生活に転倒につながる理由はあるの?」という看護師のアセスメント・視点を引き続き大事にしてほしいと思います。
認知症患者はなぜ転ぶ?
4大認知症の転倒につながる症状の違い
認知症と一言で言っても、その種類により転倒に至る要因が異なります。それぞれの特徴を把握してケアに活かしましょう。
認知症の重症 度(初期 、中期、末 期 )による違い
個人差はありますが、 初期では自分らしくありたい思いが強いのが特徴です。 自尊感情を損ねるような声掛けをした場合、 患者が「ここにはいたくない・いられない」 という思いから、 急いでその場を離れようとする行動が転倒に結びつくことも考えられます。
初期の終わりから中期では、 特にBPSD(周辺症状)が発症しやすいといわれており、 混乱・興奮しやすくもあります。 行動を止めようと急に前に立ちはだかったり、 抑えようとしたりすることで、 患者は手を振り払いバランスを崩し転倒することもあります。
初期の終わりから中期では、 特にBPSD(周辺症状)が発症しやすいといわれており、 混乱・興奮しやすくもあります。 行動を止めようと急に前に立ちはだかったり、 抑えようとしたりすることで、 患者は手を振り払いバランスを崩し転倒することもあります。
認知症患者のニーズを満たすためには?
認知症患者は入院という環境変化への不適応状態(リロケーションダメージ)により、 混乱を抱えています。 しかし医療者にその混乱を上手く言葉にできず、 ニーズが満たされない状態が生活の支障となり転倒につながる行動を引き起こしやすいのです。
身体的疾患により難しいケースもあるかもしれませんが、 患者の視界を広げる 「離床」 は重要です。 例えば入院して数日は、車椅子でレントゲン室などを案内します。 看護師からの 「レントゲン室があるのはどこ?」という質問に答える中で 「ここは病院かもしれない」 と認識できるようになる場合もあり、関係づくりにも役立ちます。
認知症患者は入院して3日間の内にせん妄を起こしやすいといわれており、 その3日間は特に濃厚にかかわり、 なるべく混乱させない対応をします。看護師自身が患者にとっての環境要因の一つであることを意識することも大切です。
身体的疾患により難しいケースもあるかもしれませんが、 患者の視界を広げる 「離床」 は重要です。 例えば入院して数日は、車椅子でレントゲン室などを案内します。 看護師からの 「レントゲン室があるのはどこ?」という質問に答える中で 「ここは病院かもしれない」 と認識できるようになる場合もあり、関係づくりにも役立ちます。
認知症患者は入院して3日間の内にせん妄を起こしやすいといわれており、 その3日間は特に濃厚にかかわり、 なるべく混乱させない対応をします。看護師自身が患者にとっての環境要因の一つであることを意識することも大切です。
症例紹介
A 氏:80歳代 女性
アルツハイマー型認知症
自宅で転倒し右大腿骨頸部骨折で入院。人工骨頭置換術を行う。
アルツハイマー型認知症
自宅で転倒し右大腿骨頸部骨折で入院。人工骨頭置換術を行う。
術後より昼夜にかかわらずベッド上で立ち上がろうとし、ふらつきながら廊下を歩行してしりもちをついた。「息子が心配だ」「早く家に帰りたい」などの訴えがある。センサーマットを使用していたものの、起き上がる回数が多く効果的な対応ができず使用を中止。日中のリハビリテーション時以外は車椅子で転倒防止ベルトを着用し、ナースステーションで過ごしている。
アセスメ ン ト ・予防のポイント
①全身状態が変化するときの行動に注意
バイタルサインやADLなどの変化を、看護師がいかに察知するかが重要です。 医療者が状態の安定を確認する前に、 認知症患者が動き出し転倒につながるケースが多いのです。
②不安や焦燥感を取り除く
認知症患者は時間軸がずれていることがあり、 「息子さんはどこに勤めているの?」 などリアリティ・オリエンテーションをして少しずつ現実に戻します。 息子さんに意識が向くのは、 今自分が何をしていいのかわからない不安や、 心理的ニーズが満たされていない可能性があります。
③役割を持つ
車椅子で過ごしていても、 役割がないと無気力が進行します。 「お留守番をお願いします」 など状態に応じた極的な声掛けが必要です。 時間を決めて会話をする時間や、 本人の好きなことをする時間を作ります。 まとまった時間をとるのが難しければ、 その日出勤している看護師全員が1人1分ずつでも丁寧に声をかけるといった方法をとるなど工夫します。
④身支度を整える
整容(洗顔、 整髪、 口腔ケア、 更衣など)を可能な限り自分で行い、 生活をしているという感覚を呼び起こします。 その際、 「選んでもらう」 ことも大切です。「できますか?それともこちらでやりますか?」 など、 小さくても自分で決定する場面を増やします。 クローズド・クエスチョンが答えやすいですが、 状態によりオープン・クエスチョンにするなど工夫をします。
⑤家族と医療者のコミュニケーション
ご家族がいる場合、 転倒の危険性や普段のケアを十分に説明することが切です。 例え転倒しても大けがをしない対応をしているなど、 家族には入院中の様子が見えないからこそ共有しましょう。 行ったケアを看護記録にもしっかりと残しておくことが大切かと思います。
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