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ICN座談会【手荒れ対策の意義を再考する】

投稿日:2020.04.28

この度、7病院の感染管理認定看護師のご協力の下、手荒れを有する看護師モニター50名に3ヵ月間「ユースキンA」を使用していただきました。
さらに43名にご回答いただいた事後アンケートに基づき、日中のハンドケアと、綿100%手袋を着用したナイトケアによる、手荒れ重症度スコアの推移、手指消毒の痛みの変化など座談会で報告された調査結果を紹介します

手荒れ重症度は ハンドケアの実施により堅調に低下

森兼 皮膚スコアを見ると、開始直前から開始一週目の最初の下がりが大きく、その後は緩やかに下がっています。一週間使っただけで、ずいぶん改善するんだなと感じました。

関 普段ハンドケアをあまりやっていない人たちが、真面目に取り組み始めたら効果が出やすいのかもしれません。

四宮 実際、ハンドケア剤をあまり塗っていなかった人が塗ると、かさつきが目に見えて改善したりしますね。
森兼 重症度で見ても最初の週の下がりが一番大きいですね。11月のまだ少し暖かい時期からハンドケアを実施することで、開始2週間程度でスコアが改善し、その後も堅調にスコアが低減し、毎年冬場に手荒れが発生しているモニター者の手荒れ重症化の予防に効果があった可能性があります。

佐藤 右手と左手を別々に調査しているということは、利き手を考慮しているのですか?
森兼 左手よりも右手の方が手荒れ重症度スコアが高い傾向にあるのは、大雑把ですが、右手が利き手の方が多いためと考えてもいいのではないでしょうか。

佐藤 手洗いについては、蛍光剤を使って調べると、利き手の洗い残しが多いんですよ。セルフケアの中でそういう差があることを明らかにできるとおもしろいですね。

四宮 アルコールの残留の多いところが荒れたり、亀裂しやすかったりもしますが、それにも利き手が影響しますよね。

富谷 動作としては、右手で取って、左手によく伸ばしがちになるので、塗布量にも差が出るかもしれませんね。

佐藤 左右差をどう改善するのかが、これからの課題になるかなと思いました。

森兼 だいたい右手のほうが荒れやすく、スコアとしては若千高くなっていますね。

手指消毒の痛みは主に右手側に発生 ハンドケアが痛みの低減に

森兼 「手指衛生を行う際、手荒れ箇所に痛みやかゆみが発生したことがありますか」という質問に対して91%が「ある」と回答し、そのうち「痛みやしみることで手指衛生を躊躇してしまったことがある」という人が88%いました。左手よりも右手のほうが若干スコアは高く、右手がやや荒れ気味のようです。また、1月ごろになる6週〜7週目あたりでいったんスコアが上昇しているのは、おそらく気候が関係していると考えられます。
四宮 寒さが厳しい季節には、感染対策も強化することが多く、「手洗いを奨励するように」と言わなければいけない立場でもあるので、酷な時期ですね。
佐藤 今回、当院から脱落者が4名いて、理由を訊くと「痛くて続けられない」という声がありました。そこで、どういうときに使うと逆効果だとか、どういう状態から始めれば効果を実感できる可能性があるとか、もう少しわかればよかったと思います。

関 当院では一人アトピー性皮膚炎だという申請があったのですが、軽度の手荒れで今回のハンドケアをしつかり行った所、悪化せずに皮膚科にかからなくてもよくなった方もいました。
森兼 今回皮膚科受診をして治療を行っている重度の方が5名いました。重度で痛みのある場合は、皮膚科治療などで治癒させてから再発予防のケアを行っていくことが重要ですね。
重症度の見極めにも注意が必要かと思います。また、手荒れによる手指消毒の痛みも重症度も低減している傾向から、1日当たりの手指消毒回数と手洗い回数についても横ばいで推移しています。もし手の状況が悪くなればアルコール消毒薬を使わなくなり、その分、手洗いが増えると想定されますが、そうならなかつたのは手の状態が良好だったと評価できると思います。

ハンドケア剤使用量は1日2ℊ以上で大きく改善 1回1FTUが目安

森兼 ハンドケア剤の使用量が1日あたり2ℊ未満だった群と、2g以上だった群で比較したところ、2g未満だと横ばいに近く、2g以上だと大きく改善していることがわかります。

佐藤 やはり効果を得るためには適量というのがあるのでしょうか。

森兼 ある程度の量は使うことが必要で、とりあえず2g以上は使いましょう、ということになるでしょうか。「1回に塗布する量はどれくらいでしたか」という質問には「1FTU以上」という方が70%、「2FTU以上」という人が21%でしたので、91%の人がルールは守っていただけたのかなと思います。
関 塗り方を指導していただいたおかげで、塗る回数も増えて、使用量も守るようになって、思っていたよりいい結果が出たのでは?

四宮 ハンドケア剤は、ベタつくのが嫌なのか少なめに塗る人が多いです。正しい塗り方をすればベタつきもなくなるので、しっかり塗ることが大事なのかなと思います.

森兼 しっかり塗れば、短期聞でも効果が表れて、それを維持できるということですかね。

四宮 使用量だけでなく今回は塗布の回数、塗布のタイミング、1回の使用量も指定されており、正しい量を正しく使用することに意味があることを示唆していると考えられます。

佐藤 効果が実感できないという人もいますが、その人たちが使用量や回数などを守っていたのか、どれだけケアできていたのかなど、いろいろな理由がありそうで気になります。

8割のモニター者がハンドケアの痛みやかゆみの 発生予防に対する効果を実感

森兼 「モニター実施前に比べて、手指衛生を行う際に手荒れ箇所に痛みやかゆみが発生しにくくなったと思いますか?」という質問に対しては「非常にそう思う」と「そう思う」が合わせて80%でした。概ね効果を感じていただけたようです。

富谷 モニター開始13週目には、元々手荒れが1.5くらいの人が0になっていました。元々手荒れが少ない人に関しては、重症化の予防効果がてきめんに表れている感じです。
佐藤 やはり手荒れ対策として、ハンドケアを実践していくことは意味がありそうですね。

四宮 当院は9月頃になると、手荒れのあるスタッフにハンドケアを始めるようにとメールで啓発しているのですが、何月くらいから始めるのがいいのでしょう?

森兼 寒くなる前からハンドケアを行うことが重要なので、啓発の時期は9、10、11月が勝負ですかね。1ヵ月でも2ヵ月でも早くハンドケアを始めると、ケアの回数が少なくてもシーズンを通じていい状態を維持でき、辛い思いをしないですむという気がします。

関 指定医薬部外品の保湿剤を使用することも、重症化を予防するハンドケアとしてはとてもよいと思います。

佐藤 乾燥や軽度の発赤、痛みを伴わない亀裂等であれば改善効果が見込め、保湿機能もしっかりあることから重症化の予防としても使えるので例年冬場になると手荒れに悩んでいるという方にお勧めできると思います。

森兼 参加者からは「いつもよりハンドケア剤を塗り始める時期が早かったので、今シーズンは痛みを伴うあかぎれやささくれが少なかった」との意見もいただきました。
関 今回モニターに参加して、適量・適切な塗り方などをきちんと指導していくことで、手荒れの悪化が防げると思いました。また、いつから始めるかを検討し、手荒れ対策をもう少し強化していきたいですね。

佐藤 始める時期がわかったので、声がけをして効果的に行うことを意識した指導も行っていこうと思います。

富谷 スタッフにもっとアプローチして、正しいケア法を次回の研修会のテーマとして、みんなで取り組みたいです。

四宮 データで示されている通り、正しく使わないと、ある程度以上の効果が出にくいと伝えるのが僕たちの役割かなと思います。

森兼 ありがとうございます。これからも、それぞれの施設で手荒れ対策が進んでいくことを願います。
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