達人に訊く!
達人に訊く!再び食べるための胃瘻 ここがポイント!
投稿日:2020.03.12
みなさんは「再び食べるための胃瘻」をご存知ですか?
今号は、胃瘻と経口摂取の併用から徐々に経口摂取量を増やし、胃瘻抜去も可能になってきたケースについて、摂食嚥下サポートの達人にステップを踏んだ関わりのポイントをお訊きしました。
今号は、胃瘻と経口摂取の併用から徐々に経口摂取量を増やし、胃瘻抜去も可能になってきたケースについて、摂食嚥下サポートの達人にステップを踏んだ関わりのポイントをお訊きしました。
症例紹介
発症当時45歳 男性
家族構成 母(持病あり)と兄の3人暮らし
病 歴 右破裂性椎骨動脈解離によるクモ膜下出血
病 状
球麻痺、運動失調
左体幹・左上下肢の温痛覚障害
食物誤嚥レベルの摂食嚥下障害
処 置
カフ付き気管カニューレ装着
栄養管理の必要より胃瘻造設
経 過
楽しみレベルでゼリー・ミキサー食を摂取
常時唾液喀出
要介護度3の認定を受け自宅退院
誤嚥性肺炎により再入院
痰で気管カニューレ度々閉塞、呼吸困難
誤嚥防止術(声門閉鎖術)施行
摂食嚥下リハビリテーション実施
退院前カンファレンス
・嚥下造影検査実施にて咽頭残留しやすいが複数回嚥下で通過可能
・ペースト食摂取
・栄養管理、嚥下障害の状況、対応方法等情報共有
退院時の栄養管理
・胃瘻1400kcal+経口200kcalの併用
・体重50.2㎏ BMI 17.4
発症当時45歳 男性
家族構成 母(持病あり)と兄の3人暮らし
病 歴 右破裂性椎骨動脈解離によるクモ膜下出血
病 状
球麻痺、運動失調
左体幹・左上下肢の温痛覚障害
食物誤嚥レベルの摂食嚥下障害
処 置
カフ付き気管カニューレ装着
栄養管理の必要より胃瘻造設
経 過
楽しみレベルでゼリー・ミキサー食を摂取
常時唾液喀出
要介護度3の認定を受け自宅退院
誤嚥性肺炎により再入院
痰で気管カニューレ度々閉塞、呼吸困難
誤嚥防止術(声門閉鎖術)施行
摂食嚥下リハビリテーション実施
退院前カンファレンス
・嚥下造影検査実施にて咽頭残留しやすいが複数回嚥下で通過可能
・ペースト食摂取
・栄養管理、嚥下障害の状況、対応方法等情報共有
退院時の栄養管理
・胃瘻1400kcal+経口200kcalの併用
・体重50.2㎏ BMI 17.4
この方は、クモ膜下出血の後遺症から咽頭残留による嚥下困難を生じ、摂食嚥下機能検査では経口摂取量200kcal分以上の摂取が可能と評価されましたが、食べることに恐怖心や苦痛を伴っていました。
そこで、この時点では本人の意欲 (食べる意欲が乏しい) 、自立度(要介護度3)、主介護者の母の状況(調理が負担)を考慮したゴール設定とし、胃瘻から(1400kcal)の栄養を中心にし、経口から(200kcal)は調理のいらないプリンや卵豆腐を食べてもらうことにしました。
お互いに顔の見える関係で連絡や相談ができている病院側のスタッフからは、「退院後、早めの訪問・確認が必要」との申し送りがありました。
そこで、この時点では本人の意欲 (食べる意欲が乏しい) 、自立度(要介護度3)、主介護者の母の状況(調理が負担)を考慮したゴール設定とし、胃瘻から(1400kcal)の栄養を中心にし、経口から(200kcal)は調理のいらないプリンや卵豆腐を食べてもらうことにしました。
お互いに顔の見える関係で連絡や相談ができている病院側のスタッフからは、「退院後、早めの訪問・確認が必要」との申し送りがありました。
申し送り時のポイント!
生活場面を知る訪問看護師からも具体的に質問を投げかけよう!
例・嚥下障害はどんな状況?(詳細に)
・対応方法は?その対応で問題なく摂取可能?
・食事姿勢座位の場合、自宅では何に座る?
(食卓椅子?ソファー?ベッド上端座位?)それは嚥下に影響はない?
・準備や調理など、本人・家族にできる? 等々
例・嚥下障害はどんな状況?(詳細に)
・対応方法は?その対応で問題なく摂取可能?
・食事姿勢座位の場合、自宅では何に座る?
(食卓椅子?ソファー?ベッド上端座位?)それは嚥下に影響はない?
・準備や調理など、本人・家族にできる? 等々
退院直後
ほとんど食べず(むせ、痰が増える)
ゼリー1個に30分以上かけ喀出しながら摂取
胃瘻から1600kcal/日、経口からは少量継続
↓
ほとんど食べず(むせ、痰が増える)
ゼリー1個に30分以上かけ喀出しながら摂取
胃瘻から1600kcal/日、経口からは少量継続
↓
経口摂取の様子を観察し
⓵前傾姿勢になりすぎる
②一口量が多い
③咽頭残留に対する複数回嚥下が不十分
などの改善を指導
⓵前傾姿勢になりすぎる
②一口量が多い
③咽頭残留に対する複数回嚥下が不十分
などの改善を指導
1か月後
体重48.8㎏ BMI 16.9
ゼリー喀出ほとんどなく毎日摂取
デイサービスでの持ち込み昼食
↓
体重48.8㎏ BMI 16.9
ゼリー喀出ほとんどなく毎日摂取
デイサービスでの持ち込み昼食
↓
デイサービスのスタッフに食事場面を見てもらう
条件付きでも自宅以外に食べる場所を確保
日々の状況は電話や連携ノートに記載して共有
条件付きでも自宅以外に食べる場所を確保
日々の状況は電話や連携ノートに記載して共有
歯肉腫脹や歯の動揺あり
↓
↓
訪問歯科治療、歯科衛生士による口腔ケア開始
「食べるための口づくり」
「食べるための口づくり」
2ケ月後 胃痩1400kcal/日+経口200kcal/日
主食:粥ゼリー
副食:ムース食宅配弁当(200kcal)
1日1食から3食可能に
↓
主食:粥ゼリー
副食:ムース食宅配弁当(200kcal)
1日1食から3食可能に
↓
購入しやすく食べやすい形態の食品を探す
調理の手間や経済的負担を心配したものの、母は「食べてくれるから」と酵素入りゲル化剤を加えた粥ゼリーを調理
調理の手間や経済的負担を心配したものの、母は「食べてくれるから」と酵素入りゲル化剤を加えた粥ゼリーを調理
6ケ月後 胃婁1200kcal/日+経口400kcal/日
体重50.1kg BMI 17.3と改善 1日3食経口摂取可能
1年後 胃瘻1000kcal/日+経口500~700kcal/日
全粥、舌でつぶせる介護食、容易に噛める介護食、
市販のやわらかいハンバーグ、つぶした果物など
メニユーおよび摂取量が増える
↓
「食べたい物は“肉”」との本人の希望にそって、摂取量追加や形態変更を進める
胃痩カテーテル交換の都度、3日~1週間分の摂取内容の記録・写真を提出し、病院の管理栄養士による栄養評価・指導を受ける
胃痩カテーテル交換の都度、3日~1週間分の摂取内容の記録・写真を提出し、病院の管理栄養士による栄養評価・指導を受ける
2年後 胃痩800kcal/日+経口700kcal/日以上確実に摂取、体重50kgを維持
食事(注入)前に胃棲からのガス抜きのアドバイス
母の調理したシチュー、カレー、おじやも摂取可能
お粥から軟飯への変更、宅配弁当もムース食からやわらか食、
粗刻み食へと変更
↓
再度デイサービスに相談
「粗刻み食なら対応可能」と昼食を提供、母の負担を軽減
「粗刻み食なら対応可能」と昼食を提供、母の負担を軽減
3年後 胃痩600→400kcal/日+経口
体重 53.5kg BMI 18.4 Alb 4.1g/dL
4年後 体重46.3kg BMI18以下続く
満腹感より注入量や経ロ摂取量を減らしていた
胃痩400kcal/日を継続
↓
満腹感より注入量や経ロ摂取量を減らしていた
胃痩400kcal/日を継続
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経口摂取量が減っても胃痩から投与できるため、栄養量をキープ
胃痩栄養の準備や後片付けに対する母の身体的負担が大、
胃痩分も経口摂取することあり
↓
胃痩分も経口摂取することあり
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母が用意できない胃痩分の栄養400kcal/日を経口摂取できたきっかけを見逃さない
食事量増加に伴い体重52kg BMI18を維持
↓
↓
体重の変化は栄養状態を知る指針の一つ
現 在 胃痩を使わず3年経過
(7年後) 経口摂取のみで1700kcal/日
体重55kg BMI19
↓
胃痩を使いこなしてきたことで胃痩抜去
可能な全身状態を維持
可能な全身状態を維持
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