タクティール®ケア
タクティール®ケア 連載予告!
投稿日:2020.04.21
“触れる”を通して看護の原点を見つめ直す
手を使って10分間程度、相手の背中や手足をやわらかく包み込むように触れる「タクティールケア」を、読者の皆さんはご存知でしょうか?
次号(4月発行:31号〉から、このタクティールケアを理解し看護現場で活用していただくための連載が始まります。「もの」に頼らず誰でもチャレンジできるタクティールケアの具体的な実践例を通して、看護の原点を見つめ直してみませんか?
次号(4月発行:31号〉から、このタクティールケアを理解し看護現場で活用していただくための連載が始まります。「もの」に頼らず誰でもチャレンジできるタクティールケアの具体的な実践例を通して、看護の原点を見つめ直してみませんか?
タクティールケア、それは心の扉を開く鍵
人は悲しみや苦しみの中にあると、それに押しつぶされないよう心を閉ざしがち。本来持っている暖かな気持ち、やわらかい心まで閉じ込めてカギをかけ、コミュニケーションを断った時間が続いたりもします。
私は以前、80歳過ぎの母親を残していかねばならない50代の胃がん末期の男性にタクティールケアを行ったことがあります。お互い何も言わず、無言の張りつめた空気が病室にはありました。私がタクティールケアを行うと、息子さんは目を閉じ、穏やかに「気持ちがいい」と声をかけてくださいました。お母様はそれをご自身に向けられた言葉と思い、「そんなに気持ちいいの?」と返答し、それをきっかけに、一緒に息子さんの体に触れるようになりました。最後に訪れた時には、お母様はベッドのそばに座り、布団の中で息子さんの手をやさしくなでておられました。言葉は無くても触れることがお二人のコミュニケーションツールとなり、お互いを思う気持ちを伝えあっていたと思います。
ただ「触れる」のではなく、ゆっくりと丁寧に触れることで「あなたを大切に思っている」という気持ちが伝わり、心身に穏やかな安心感をもたらすタクティールケアを、病棟や訪問先で活用してみませんか?患者さん・ご家族のQOL向上だけでなく、看護師の皆さんにとっても、コミュニケーションや看護の本質についてふり返り、より質の高い看護実践に役立つことと思います。
(木本明恵)
私は以前、80歳過ぎの母親を残していかねばならない50代の胃がん末期の男性にタクティールケアを行ったことがあります。お互い何も言わず、無言の張りつめた空気が病室にはありました。私がタクティールケアを行うと、息子さんは目を閉じ、穏やかに「気持ちがいい」と声をかけてくださいました。お母様はそれをご自身に向けられた言葉と思い、「そんなに気持ちいいの?」と返答し、それをきっかけに、一緒に息子さんの体に触れるようになりました。最後に訪れた時には、お母様はベッドのそばに座り、布団の中で息子さんの手をやさしくなでておられました。言葉は無くても触れることがお二人のコミュニケーションツールとなり、お互いを思う気持ちを伝えあっていたと思います。
ただ「触れる」のではなく、ゆっくりと丁寧に触れることで「あなたを大切に思っている」という気持ちが伝わり、心身に穏やかな安心感をもたらすタクティールケアを、病棟や訪問先で活用してみませんか?患者さん・ご家族のQOL向上だけでなく、看護師の皆さんにとっても、コミュニケーションや看護の本質についてふり返り、より質の高い看護実践に役立つことと思います。
(木本明恵)
本誌編集者も受けてみました! 背中のタクティールケア
ケアを受ける私に「お願いします」と木本先生が言ったかと思うと、その手のひらが私の背中にそっと置かれます。そして、マッサージでも指圧でもない心地よい感触が、私の背中をゆっくり丁寧に移動していきます。
木本先生の手のひらが私の背中を上下左右に移動するとき、衣擦れの音が心地よく鮮明に耳に入ってきます。まるで海の波の音を聞いているよう…母の胎内か凪いだ海の波に揺られているような気持ち。「こんな丁寧に触れてもらっていいのかな、こんな私がとても大切にしてもらってる」というなんだか申し訳ないような気持ちです。「亡くなった両親にやってあげたら喜んだろうな」とか「小さい時に撫でられたのが嬉しかったな」とか、快の感情がそれこそ寄せる波のように湧き上がってきました。決して大げさに言っているのではありません。泣きたくなるほどの安心感、とでも言いましょうか。「有難うございました」という木本先生の言葉でケアが終わり、私は無性に今の気持ちをしゃべりたくなりました。
薬でも機械でもない人の手のひらに、こんな力があるのですね。タクティールケアを安全に看護の場に取り入れていく上でのポイントを解説するこの企画。どうぞご期待ください!!
(編集部)
木本先生の手のひらが私の背中を上下左右に移動するとき、衣擦れの音が心地よく鮮明に耳に入ってきます。まるで海の波の音を聞いているよう…母の胎内か凪いだ海の波に揺られているような気持ち。「こんな丁寧に触れてもらっていいのかな、こんな私がとても大切にしてもらってる」というなんだか申し訳ないような気持ちです。「亡くなった両親にやってあげたら喜んだろうな」とか「小さい時に撫でられたのが嬉しかったな」とか、快の感情がそれこそ寄せる波のように湧き上がってきました。決して大げさに言っているのではありません。泣きたくなるほどの安心感、とでも言いましょうか。「有難うございました」という木本先生の言葉でケアが終わり、私は無性に今の気持ちをしゃべりたくなりました。
薬でも機械でもない人の手のひらに、こんな力があるのですね。タクティールケアを安全に看護の場に取り入れていく上でのポイントを解説するこの企画。どうぞご期待ください!!
(編集部)
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