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東北から発信!A-CNDnet 第5回

東北から発信!A-CNDnet⑤

投稿日:2020.03.18

 ~第5回 認知症ケア加算導入の実際~

平成29(2017)年7月より認知症ケア加算1を導入した当院では、この導入を機に院内スタッフの意識にも変化が現れました。認知症看護認定看護師の視点から、その様子をご紹介します。
企画:日本赤十字秋田看護大学 看護学科老年看護学教授 高田 由美 先生

算定要件を満たすために

管理者会議で医事課課長より加算についての説明があり、共通認識の下に準備開始!
現看護部長が総括を引き受けてくださり、「患者、家族、職員をサポートしていきたい」という願いを込め、認知症サポートチーム(以下DST)を立ち上げました。
幾度も打ち合わせを行い、師長会での説明や研修会の年間計画など、看護部長が連絡・調整を行って下さったおかげで、私は実績作りやマニュアル作成、必要書類の整備に専念することができました。看護部長の理解と全面的なバックアップがあったからこそ、4か月という短い期間でも、円滑に準備を進められたのだと思います。
加算導入開始に際し、全職員対象に「ケア加算とDSTの紹介」を含め、研修会を行いました。初回からこれまで、職種を問わず多数の参加があり、職員の認知症に対する関心やニーズの高まりを実感しています。今後も、職員のニーズに対応できる研修会の運営を目指します。

加算導入後の変化

当院では、「地域と手をつなぐ医療」を理念とした「やさしい看護」を目指して加算導入前からも認知症ケアは行われてきましたが、認知症に関する理解やケアに個人差がみられ、患者・ケア提供者双方に混乱が生じていたこともありました。加算導入により「認知症ケア」が注目され、体系化された影響は大きかったと思います。

私たちDSTは、「自ら足を運ぶ」「今の状況で実践可能な解決策をともに考える」「いいね!を素直に伝える」を目標とし活動をしてきましたが、認知症ケア加算導入後、職員には以下のような変化が現れました。
①認知症者の肯定的捉え方、ケアに対する前向きな発言:
対応力が向上→BPSD発現・せん妄頻度の減少、身体拘束件数の減少および拘束期間の短縮化
②薬剤師の積極的働きかけ:
薬剤の見直し→せん妄リスク薬の中止、BZDの減薬・中止など
③多職種間の情報交換が活発化:
入退院支援部やNST、リハビリ部門などとの緊密な関係性
④DSTメンバーの意識と学習意欲向上:
カンファレンスや勉強会への積極的参加→職種専門性の発揮、ケアモデルとしての成長

以前は「ケアへの正答」を求める声が多かったことに対し、現在では「自分たちができることからやってみよう」と認知症者に焦点を当てて考え、試行錯誤しながら頑張ってくれています。職員とDSTが情報共有しながら、様々な症例を通して、実践知として積み重ねた結果、好循環をもたらしていると感じます。
しかし、その一方で、悩みやジレンマを抱えている職員の存在があることも心に留め、サポートする必要があります。研修会や年度末に行われる活動報告会の機会を通じ、頑張っている職員に対し、ケアの成果を可視化・言語化して伝え、満足度やケア意識を高めていきたいと思います。

今後の課題

認知症への理解が深まり、対応力が向上した傍ら、アクティビティの必要性を感じる機会も多くなってきました。当院では、病院裏の「癒しの川」を活用したイベントや市の図書館と協働して「朗読会」「移動図書館」など、様々な事業を展開中です。それらの活動も認知症ケアに反映させながら、患者の活動性を高めるケアに繋げられるよう、自己研鑽を重ね、DST活動をさらに充実させていきたいと思います。
A-CNDnet連絡先 Email:acnd.net@gmail.com
※次号では、急性期病院等における認知症ケアの取り組みを紹介する予定です。(編集部)

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