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ナースマガジン vol.40

達人に訊く!がん患者のスキンケア ここがポイント!

投稿日:2022.10.17

がん患者は治療の副作用やさまざまな要因により皮膚トラブルが起こるリスクが高いとされています。皮膚トラブルの出現は、新たな苦痛にもつながるため、予防、重症化させないことが大切です。
今回、看護師がスキンケアを行う際のポイントを、がん看護専門看護師、皮膚・排泄ケア認定看護師の高木良重先生に教えていただきました。
高木 良重 先生 福岡国際医療福祉大学 看護学部 講師 がん看護専門看護師 /皮膚・排泄ケア認定看護師

がん患者のスキンケアで大切なこと

皮膚トラブルが発生しやすいことを意識する

 がんに関わらず他の疾患でも、 高齢によりADLが低下している、 皮膚が乾燥して脆弱である、 失禁があるなどトラブルが起こりやすい要因は多岐にわたります。がん治療を行っている場合は、 治療の影響、活動量や栄養状態の低下などの要因により、 褥瘡やスキンテアの皮膚トラブルが発生するリスクはより高くなります。また、 皮膚トラブルが発生した場合は治りにくい、 ということを意識して関わるようにします。

皮膚トラブルを防ぐために

 スキンケアで大切なことは、 どのような状況であっても 「基本的なスキンケアを確実に行うこと」 です。三保(保清、 保湿、 保護)が基本となりますが、 このケアが適切に実施されることで皮膚トラブルの予防、 重症化の予防につながります。 どの技術においても手の使い方を意識するようにしましょう。 愛護的に、 丁寧に触れることを心がけて皮膚への刺激を最小限にしていくと良いですね。
スキンケアのポイント

身体的苦痛が強い場合

患者の負担を最小限に

 がん患者は、 状態によってはケアをされること自体がつらいケースがあります。 患者が苦痛を訴える場合は症状に対するマネジメントとして医師による治療を行った上で、 ケアを行っていく必要があります。 看護師として、 皮膚トラブルを予防する、または重症化を防ぐためにもケアを行うことを優先したくなりますが、看護師の行為により苦痛が増強することがないよう、 患者の思いを聞き、表情を観察しながら介入することが大切です。
 例えば鎮痛剤を使用している場合は、薬剤の効果がある時間を考えてケアのタイミングを調整することもあります。いつ、どのような時に、どこが痛むのか、同じ患者でも時間帯やその時々の場面により安楽状況が異なるため、声をかけ相談しながら行っていくと良いですね。また、ケアを行う際は、時間を短縮して行うことも患者の負担を最小限にする点で重要だと思います。スタッフが2人で難しい時は3人で、手際よく確実に実施できるようにしましょう。

症例紹介

A 氏:70歳代 女性

胆管がん 終末期/手術適応はなし/認知機能の低下、ADLの低下がみられる

●A 氏は右側臥位で過ごすことを好んでいたが、入院後、右大転子部に褥瘡ができ、主治医の外科的治療が行われた。褥瘡発生部位の仏痛は増強し、左側臥位で過ごすことが多くなった。その後、左大転子部にも壊死組織をともなう褥瘡が発生。

●褥瘡発生部位からの滲出液が多く、ガーゼ交換の頻度が増えた。ガーゼ交換時の苦痛を考慮し、褥瘡部にストーマ装具を貼付し、低圧で滲出液を吸引することで交換の頻度を減らした。

主な看護介入

褥瘡管理、スキンケア。 体圧分散ケアとしてマットレスの選択やポジショニングクッションを徐々に引き抜き、 接触部分を変えるようにする体位変換。 患者の治りたいという思いの傾聴。

体位変換の工夫

圧移動(スモールシフト)…四肢の位置を変える、背部等に挿入したクッションの位置を変えることで、圧迫の持続を回避することができる。

看護の視点

  A氏には身体的苦痛だけではなく、トータルペインが生じていました。終末期では、患者の苦痛を緩和させるためにどのような関わりができるのか、現在の状態を改善できることはないか、可能性を常に探っていくという視点が大切だと思います。

 その人の思いに耳を傾け、いかに過ごしやすい環境を整えるか。その過ごしやすさの中にスキンケアも含まれていると思います。患者の苦痛が軽減できるよう関わっていきたいですね。

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