ナースマガジン vol.39

【何ぞやシリーズ第33回】オーラルマネジメントって何ぞや？

摂食嚥下ケア / 口腔ケア

投稿日：2022.05.23

誤嚥性肺炎予防や、口腔機能維持のために重要な口腔ケア。とはいえ、保清を中心とした口腔ケアのみでは、全ての患者さんの問題を解決するのは困難です。
近年これまでの口腔ケアに不足していた視点を盛り込んだ、オーラルマネジメントという概念が広まりつつあります。オーラルマネジメントって何ぞや？

オーラルマネジメントとは

　オーラルマネジメントとは、狭い意味での口腔ケア（口腔保健指導、口腔清掃、義歯清掃が中心）だけではない。口腔機能の維持や回復に主眼を置いた予防、歯科治療、リハビリテーションのあらゆる段階を包括したケアを実施するにあたっての判断や、多職種間の連携も含めた概念のことなんだ。

　全ての人に同じケアを提供するのではなく、必要な人に必要なケアがいきわたるよう、個々の口腔の状態を評価して、計画的に実行し結果を振り返る。患者さんの口腔の健康のために必要なことは何かを考え、PDCAサイクルを回していく、という風に考えるとわかりやすいかな？

「やっているか」ではなく「できているか」を確認

　先週から担当している患者さん、「歯磨きは自分でできる」っていうから任せたのに、全然歯磨きできていなかったんだ。口の中は食べ物のカスで汚れているし、部分義歯も入れっぱなしになっていたんだよね。

その通り。処方カスケードは、ポリファーマシーが起きる原因の１つでもある。複数の医療機関を受診することによる足し算的な処方がポリファーマシーにつながりやすいけれど、１つの医療機関で１人の医師の処方だけでも処方カスケードは起こるんだ。何種類以上の薬を併用しているとポリファーマシーになるかという明確な定義はないけれど、６剤以上になると薬剤有害事象という有害な反応が出やすくなると報告されているんだよ。認知症のある人にも、処方カスケードが生じることがあるから注意が必要だ。

歯科との連携はどうしたらいい？

　うちの病院は歯科が併設されてないから、提携している歯科の先生と歯科衛生士に訪問診療を依頼しているわよね。う歯や動揺歯、炎症など、専門的なケアが必要な時は必ず相談をしているけれど、日常的なケアの中での歯科との連携には、どんなことに気を付けたらいいんですか？

　歯科医師や歯科衛生士といった専門家との連携は、オーラルマネジメントにおいて重要なポイントだけれど、それは日頃の口腔ケアを丸投げすることとは違うぞ。

　君ら看護師にとって必要な情報をいかにその歯科医師や歯科衛生士から引き出し、日常のケアに反映させるかが、大切だ。ベッドサイドでの歯科の処置にずっとは付き添えないだろうが、行った治療の内容やケアのポイントは確認しておきたいよね。普段外来患者の口の中を診ている歯科医師たちは、様々な疾患を抱えている患者さんや病院の雰囲気に慣れていない場合も多い。君たちが声掛けしやすい雰囲気を作ってくれるとコミュニケーションも取りやすいと思うよ。それから、専門用語はお互いに勉強して正しく理解しておくことも、心がけたいね。

　そうか、これからは積極的に声を掛けてみよ〜っと。

　注意が必要なのは、患者さんへの声の掛け方だ。「歯を抜かれるなんて大変でしたね、痛かったですね」という患者さんへの共感も、度が過ぎると患者さんが不安になってしまうよ。「治療してもらえてよかった、これで安心してごはんが食べられますね」というようなポジティブな声掛けで、患者さんが歯科治療やケアを受け入れやすくなるようにしてもらいたいんだ。

　「8020運動」が浸透して、昔に比べて80歳を過ぎても自分の歯が残っている人が多くなっているけれど、ケアが行き届いている歯ばかりではないわよね。体力が衰えてからでは思うような治療ができなくなることもあるから、元気で治療ができるうちに、歯科の介入が必要な口は早く発見してほしい、ってこの間歯科の先生に言われたわ。

　まさに口の健康を守るオーラルマネジメントの視点だね。

（つづく）

■監修
日本歯科大学教授　
口腔リハビリテーション多摩クリニック院長
菊谷武先生

■参考
入院患者に対するオーラルマネジメント発行平成 20 年 3 月発行所財団法人８０２０推進財団
https://www.8020zaidan.or.jp/images/about/pdf_list/oral_management.pdf
平成 28 年歯科実態調査　厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/62-28-02.pdf

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