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症例から学ぶ周術期看護 【術中管理編】

術後の水分管理を考えてみよう

投稿日:2022.06.20


手術後の看護ってどのようなことを行っているの?今更聞けない…。

そんな想いにお応えし、麻酔科医の谷口英喜先生にわかりやすく解説いただきました。
済生会横浜市東部病院 患者支援センター長/栄養部長 谷口英喜先生

症例
68歳男性、身長166cm、体重60kg
結腸がん原発の転移性肝がんで肝部分切除の予定

既往歴
COPDで吸入治療中

術中経過
手術時間は2時間12分、出血量は60mL、尿量300mL

術後経過
ドレーンからの排液や出血もほとんどなく、バイタルサインは安定。
炎症所見も強くなく、手術翌朝から飲水可能、昼から流動食が計画されている。

Q. どのような目的で術後の水分補給が必要なのでしょう?

A. 創傷治癒および離床の促進のために維持量、過剰なout分、飲食・水の不足分を補う

過剰なoutとは・・・
ドレーン排液、ガーゼ出血・浸出液、発熱にともなう発汗、サードスペースへの移行など

本症例における水分管理の考え方

❶術後維持輸液・・・・・4-2-1ルールで算出すると、10kg×4+10kg×2+40kg×1=100mL/h
             ➡ 飲水・飲食が順調なら、その時点で不要

❷術後のoutの補正・・・ドレーンからの排液が少量なので補正は不要
             ➡ ドレーンからの排液や出血が増えたら、その分を補正

❸飲食・水の不足分・・・飲水量および飲食量を見ながら不足分を補正

●術後の水分管理の目標はDREAMの達成

従来は、術創部の安静のために安静臥床が、腸管の安静のために絶飲食が術後には推奨されていました。しかし、それぞれに科学的根拠が無いばかりか、非生理的な行為であり術後回復を遅延させるということが明らかにされました。

現在では、術後の腸管機能の回復や縫合不全の予防には早期経口摂取(Drinking,Eating)が、術後の呼吸器合併症、血栓塞栓症および廃用性筋委縮などを防ぐには早期離床(Mobilizing)が、好ましいとされています(DR-EA-Mを合成するとDREAM)。

不適切な水分管理は、創傷治癒遅延や離床の妨げにもつながります。


●DREAMが達成できている症例における術後水分管理

DREAMが達成できていれば、術後の水分管理は経口的な補給のみとし、輸液管理は不要となります。

●DREAMが達成できていない症例における術後水分管理

経口摂取や経腸栄養が可能であっても不十分な場合:不足分を細胞外液補充液による輸液で補います。投与量は4-2-1ルール(ナースマガジン37号20ページ参照)に則り、飲水量を見ながら調整していきます。術後に不足しているビタミンやアミノ酸が加えられる場合もあります。

エネルギーに関しては、現在では、術直後の過剰エネルギー投与は避けるべきとされ、投与されても低濃度(1~5%)の炭水化物含有輸液程度です。

経口摂取や経腸栄養が不可能な場合:
術後には、従来通りの輸液管理が必要となります。
術後輸液は、術中の輸液管理および術後の病態によりテーラーメイドな輸液計画が求められます。

術中に輸液は不足、過剰、適正のいずれであったか、術後にドレーンからの排液や創部からの出血が継続しているのか等、様々な病態を加味して輸液計画を立案していきます。

使用する輸液製剤


本症例でナースが注意すること

*術中の輸液管理および術後の経口摂取量を見ながら水分管理計画を見直す
*術後は早期のDREAM達成を目指す
*水分不足では離床時にふらつくので注意

Take home message

●術後の適切な水分管理は、創傷治癒および離床を促進
●DREAM達成の有無により、術後水分管理が変化
●現在では、経口的な水分管理が主体

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