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永瀬隆之先生のモチベーション・マネジメント

モチベーション・マネジメント③ スタッフ面接(3)

今回は面接の中でも、相手を望ましい方向へ導く姿勢“承認”と“対話”について、紹介します。

前回は“観察”と“傾聴”に意識を集中するということで、相手(部下)にどれだけ興味や関心をもっているか、上司からのシグナルとなる姿勢をお伝えしましが、ただ相手の話を聞いて共感するだけでは、面接に対する部下の満足感や面接後の“自己効力感”にむすびつけるのはとても難しいことです。

スタッフにとって、初めての役割を任されたとき、「私にできるだろうか」と不安になる人は多くいます。自信がもてず、行動を起こせなかったりします。これは、“自己効力感”をもてないことが一つの原因です。自己効力感とは、自分はこの仕事をやり遂げられるだろう、という見通しのことです。

それでは、具体的に“承認”と“対話”を通して、相手のモチベーションを刺激し、いかに自己効力感を高めていくか考えてみましょう。

1.“承認”とは、部下の能力、行動の事実、存在自体をそのまま伝える

みなさんは“承認”と聞くと、「ほめること」や「認めること」をイメージしませんか。もちろん、間違ってはいないのですが、「ほめること」を意識しすぎると、相手が中堅・ベテランナースであれば、“私を、コントロールしようとしている”と思われてしまったり、若手ナースだったら“期待されることが重圧”に受け取られているかもしれません。

・  「承認」は、部下の能力や存在価値、行動を認める言葉や行為をいう。

・ 「承認」は、ほめることや、期待・信頼を伝えること、仕事や役割を与えること、叱ることなど幅広い行為を含む。

こうして整理してみると、美辞麗句を並べてほめることよりもありのままを認めることがとても大切なことがわかります。それでは、面接ではどうすべきかポイントをあげてみましょう。

① 小さなことこそ認めたり、ほめたりする(まずは認める)

あるスタッフについて日頃の行動に目が行き届いていない場合は、他の同僚から聞いた話でも良いので、ちょっとした心配り(片付けの率先など)や新人の声掛け(職場のよい雰囲気づくり)などで、職場の管理者としても助かっていると、感謝の言葉を添えて伝えることも効果的です。

② 部下が目標を達成するプロセスや小さな変化などを認めたり、ほめたりする

中堅・ベテラン層であれば、“できて当たり前”と周囲から見られがちなので、目標を達成するなどの結果をほめることより、そこに行きつくプロセスや意識のあり様・取り組み姿勢などを認めてあげる方が効果的です。なぜなら、結果よりもプロセスにその人なりのこだわりや思いが反映されていることが多いからです。

③ ほめることを意識し過ぎず、部下の行動の事実や存在をそのまま伝える

「すごいね!」、「さすが○○さん!」、「すばらしい成果です!」といった誉め言葉は確かに気持ちのいいものです。でも、同じ職場で長く一緒に働いている場合、相手によっては、“誇張しすぎ”とか、“また、何か頼まれそう”なんて受け取られることもあります。

それよりも、相手が気づかない優れた部分(能力、資質、貢献、成長、可能性)を具体的・客観的に伝える。また、上から目線でなく、同じ看護師として対等の立場で誠実に意見する方がより説得力があり、相手にも気づかせることが多いはずです。

2.「上司との対話」、「仲間との対話」の違いを理解する

上司は、組織全体の情報をたくさん持っています。スタッフは、具体的な現場の情報を数多く持っています。また、スタッフは実務を工夫して、日々改善することができます。つまり、上司と部下の対話を深めることは、個人の仕事に組織での意味をつくり出すことができます。

一方で、職場の仲間はお互いの持ち味(=強み)や仕事ぶりを最もよく知る人たちです。つまり、職場の仲間の人たちは最良のアドバイザーになり得るのです。しかし、一方では仲間が仕事で失敗することで、最も迷惑を受けている人たちでもあります。

仲間との深い対話とは、仕事に対する考えを共有したり、アドバイスし合ったりすることが、安心して挑戦できる職場をつくり上げることにつながるのです。

 
このように、相手によって対話の位置づけ(意味合い)が違うことから、上司と部下の面接ではチーム運営や看護の質をどう高めるかなど、スタッフ本人のキャリアも含めた実務との整合性を確認し合うことが有効です。

例えば、お互いが考える “この職場におけるリーダーシップ”など、状況に応じて価値観のすり合わせが必要なテーマについて話し合ってみると、部下だけでなく上司も新たな発見があるでしょう。つねに正解が決まっているわけではない物事や考えには、相手の本音や普段触れることのない看護観を引き出しやすくする対話テーマを心掛けたいですね。

永瀬 隆之 先生
株式会社 フェアアンドイノベーション 代表取締役
公益社団法人 日本医業経営コンサルタント協会 
認定登録 医業経営コンサルタント
全国の医療機関で、 管理職層のリーダーシップ改革など、組織風土やモチベーションの課題解決などをコンサルティング。なかでも、100~500床前後の総合病院における看護師の離職防止で実績多数。多くの地域看護協会の認定看護管理者 研修講師も派遣している。

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