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その食形態は対象者の口に合っていますか?

第3回 家で施設で。「調理展開」で最期まで食べるを支える ―地域で支えるこれからの嚥下食(嚥下調整食)とは

愛知学院大学心身科学部准教授 牧野日和先生 対象者の食べる機能と嚥下調整食の対応~フードスタディで調理や介助のコツをつかむ~

最終回 家で施設で。「調理展開」で最期まで食べるを支える ―地域で支えるこれからの嚥下食(嚥下調整食)とは

家庭でも出来る調理展開を

 現在、摂食嚥下障害がある人も「自宅に帰る」ことを目指す世の中になりました。ところが自宅で対象者に合った嚥下食を作ることは大変です。家族は1日3食365日の対応が出来るでしょうか?

 嚥下食を正しく提供可能な飲食店や各種嚥下食メーカーによる市販品の活用をはじめ、家庭調理にも新しいアイデアが必要です。自宅では、できれば家族で同じレシピを使って、常食と嚥下食間の調理の展開をしたいものです。

 例えば「シューマイ」。押しつぶし食(学会基準コード3相当)と指示された対象者にはシューマイを茹でることで軟らかく、他の家族は茹でるか焼くか、揚げても良いでしょう。

 このように、調理のひと手間を加える調理展開のためには、調理展開法の開発、調理展開しやすく安価で入手しやすい市販品などが必要です。それらが地域の料理店のメニューやスーパーのお惣菜などにも応用されてこそ、国をあげて目指す「自宅に帰る」方針は実現されるのです。

「とろみ」の設定をどうするか 

 液体とろみは必ずしもむせる方への特効薬ではありませんし、安全を保障するものでもありません。とろみは「対象者の摂食嚥下機能に対応させる」ことでその効果を発揮します 。当該対象者の口やのどにおける移送のされ方をイメージしながらとろみ濃度を設定することが求められます。

 また出来上がった嚥下食や液体とろみは、物性が不安定になるなどの経時変化があることにも注意が必要です。市販品の中には、物性が変わりにくい物が多数あるので、これらも活用してみてください。
ゾル(とろみ):
 食塊の集積能低下や嚥下反射惹起の遅延などがある方に向いている。
 食塊移送の速度調整や(水と比較して)拡散防止が可能

ゲル(ゼリー):
 口やのどの麻痺による食塊拡散がある、のどでの残渣が多量にみられる方などに向いている

ジュレ:
 食塊の集積能・移送力が低下し、口やのどでの残渣、嚥下圧低下がある方に比較的向いている

提言―嚥下食設定のアイデア

 学会分類は評価や提供の際の重要な目安になりますが、対象者の摂食嚥下機能は、必ずしも学会基準の一区分に属しているわけではありません。嚥下食設定は、ピンポイントにこだわり過ぎず、評価に一定の幅を持たせ、複数の段階の嚥下食を提供しても良いでしょう。実は常食を摂っている人も、複数の物性を食しているのですから。

 液体とろみ設定に、もし幅を持たせてよい対象者であれば、支援はぐっと楽になります。対象者の摂食嚥下機能の特徴を踏まえ、対象者の状態や環境への適応などにも配慮し、安全かつ楽しい食事の実現を地域全体で取り組んでいきましょう。

対象者に寄り添い続ける支援者へのお願い

●一口量やその形状によって摂食嚥下の動態が異なるので、介助の際注意をしましょう。

●対象者の姿勢や頸の位置などによって、飲食物(食塊)の移送の仕方が変わるので注意をしましょう。

●時間や日によって、摂食嚥下機能が変化する対象者には経過を追い、機能の良し悪しを左右する条件をしっかり分析しましょう。

●嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査も有用ですが、限られた場面のサンプリング評価に過ぎません。対象者の状態が変化する場合ほど、日頃の経過を追うアセスメントが有効です。

●対象者の嗜好が摂食嚥下機能をも変える場合があるので、調査をしてみましょう。
※フードスタディの詳細は、メディライブにてwebセミナー配信中

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