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ナースマガジン vol.38

【何ぞやシリーズ第32回】 LUTS(Lower urinary tract symptoms)って何ぞや?

投稿日:2022.02.21

高齢男性がご自身の排尿時の状態を「勢いがない」「切れが悪い」などと訴える場面に、皆さんも遭遇されたことがあると思います。そんな時、いわゆるオシッコに関するトラブルを一括りにして「排尿症状」と言っていませんか?
L U T S( Lower urinary tract sympotoms:下部尿路症状)という用語を正しく使いましょう。ところで、LUTS(ラッツ)って何ぞや?

L U T Sの分類( Lower urinary tract sympotoms)

L U T S( Lower urinary tract sympotoms)とは2002年に国際禁制学会により提唱された、下部尿路―つまり膀胱と尿道に関係する症状のこと(表) 。

「あの人頻尿だね、排尿症状あるよね」という言い方は、何気なく使っている言葉かもしれないけれど、正しくないわけ。頻尿は、蓄尿時にたくさん溜められないことで起こる症状だから、排尿症状ではなくて蓄尿症状なのさ。
こんな分類があるって初めて知ったわ。中高年の患者さんにも該当することが多くて、詳しくない領域だけれど症状は身近なアルアルだわね。
うちのじいちゃんがトイレから出てきたときにつけてたズボンの前のシミ、これは排尿後滴下だったのかも。患者さんに関わる上で、僕たちも知っておかないといけないよね。

分類を理解することの意味

先生、分類は理解できたんですけど、それをみんなにどう伝えて活かしていけばいいですか?
その通り。処方カスケードは、ポリファーマシーが起きる原因の1つでもある。複数の医療機関を受診することによる足し算的な処方がポリファーマシーにつながりやすいけれど、1つの医療機関で1人の医師の処方だけでも処方カスケードは起こるんだ。何種類以上の薬を併用しているとポリファーマシーになるかという明確な定義はないけれど、6剤以上になると薬剤有害事象という有害な反応が出やすくなると報告されているんだよ。認知症のある人にも、処方カスケードが生じることがあるから注意が必要だ。
例えば、高齢者だから筋力低下に伴って尿の切れが悪いのは仕方ないね、じゃなくて、尿の切れが悪いということはLUTSの排尿後症状に分類されて、もしかしたら前立腺肥大の可能性もあるって考えるということかな。
そうそう。LUTSに関係する疾患や薬剤の影響も考えて、泌尿器科のドクターへの報告や排尿ケアチームと情報共有するときにも、この分類を押さえておくと正確に情報を伝えることができるし、患者さんの症状を見極めて適切な検査や治療につなげやすくなるだろ?
今まで一括りに「排尿症状」って言ってきたけど、私たちが正しい用語を理解して専門領域につなぐことは、患者さんの早期治療・早期退院にもつながるものなのね。

トイレ介助から患者さんの情報をたくさん見つけられるように、もと君、がんばろうね。
(つづく)
■監修
東京医科大学病院 皮膚・排泄ケア認定看護師 帶刀朋代先生
※日本排尿機能学会用語委員会「日本排尿機能学会標準用語集 第 1 版」(中央医学社 ,2020 年 ,p1)

■参考
1)日本泌尿器科学会 編:男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン. 3-1. 下部尿路症状総論.リッチヒルメディカル株式会社,2017
2)日本泌尿器科学会/日本排尿機能学会 編:女性下部尿路症状診療ガイドライン〔第2版〕.3. 女性下部尿路症状とは.リッチヒルメディカル株式会社,2019

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