座談会 ナースマガジン×キッコーマンニュートリケア・ジャパン
排尿ケアに対する現状の取り組みと課題 抜去困難な尿道留置カテーテルへの対処法
投稿日:2022.02.07
NPO法人日本コンチネンス協会 名誉会長である西村かおる先生を座長とし、3名の皮膚・排泄ケア認定看護師にご参加いただきオンライン座談会を開催しました。
「排尿自立支援加算」が新設され、在宅への移行を左右する排尿ケアがより一層重要視される中、排尿ケアにおける課題や尿路感染への対処法、そしてカテーテル類の適正管理について意見交換をしていただきました。
「排尿自立支援加算」が新設され、在宅への移行を左右する排尿ケアがより一層重要視される中、排尿ケアにおける課題や尿路感染への対処法、そしてカテーテル類の適正管理について意見交換をしていただきました。
排尿ケアにおける現在の取り組みと尿路感染への対処法
座長 西村 かおる 先生
コンチネンスジャパン株式会社 専務取締役
NPO法人日本コンチネンス協会 名誉会長
NPO法人日本コンチネンス協会 名誉会長
排尿自立支援加算の算定に伴った取り組みを行う中でみなさんが難しいと感じていることは何でしょうか?
小池 直美 先生
八王子山王病院
病床数157床、病棟は急性期、地域包括、障害者(2棟)、WOCN1名、2021年6月から排尿自立支援加算を取得。
病床数157床、病棟は急性期、地域包括、障害者(2棟)、WOCN1名、2021年6月から排尿自立支援加算を取得。
スタッフ全員、少しずつ排尿ケアへの意識が変化してきていますが、排尿自立支援加算の取得前と比べ、尿道留置カテーテルの抜去が増えたことで、おむつ交換のケアが負担という声も聞かれます。また患者さんのご家族からは、おむつのコストが掛かるというようなご意見もあり、患者さんにとっては抜いた方が良いのは分かるのですが、そこは悩ましいところです。
南田 由紀 先生
奈良県総合リハビリテーションセンター
病床数100床、病棟は回復期がメイン。WOCN1名。回復期で排尿自立指導の加算が取得できるようになり算定を開始。
病床数100床、病棟は回復期がメイン。WOCN1名。回復期で排尿自立指導の加算が取得できるようになり算定を開始。
当院はリハビリ病院なので、「トイレに行く」ことに対しては看護師も熱心にリハビリを行いますが、下部尿路機能障害に対するケアがまだ追いついていないのが現状です。夜間は漏れないケアを重視するあまり適正でないおむつの装着をしているスタッフもいますので、排尿自立支援と排泄ケアの向上に向けた研修でその意味を理解してもらう必要性を感じているところですね。
丹波 光子 先生
杏林大学医学部付属病院
病床数1123床、急性期病院。WOCN6名。2016年の4月から排尿自立指導を開始。現在外来でも徐々に加算を取得。
病床数1123床、急性期病院。WOCN6名。2016年の4月から排尿自立指導を開始。現在外来でも徐々に加算を取得。
当院は整形外科の場合だと元々リハビリチームがあり早期に入っていますが、排尿に関しては私が入ります。チーム全体でというよりはそれぞれが個々で関わっているため、請求に繋がりづらいですが、患者さんは自立に向けてよい方向に進んでいます。スタッフとしては、排尿に関する意識が上がったと思います。尿道留置カテーテルを抜いて尿が出ない場合には残尿測定をし、残尿がある時は電話で報告。排尿について違和感があればまず排尿日誌をつけて相談してくれます。1回量が少なくて残尿量がない時は尿路感染も疑い、早めに尿検査をするなどスムーズに対応できるようになって排尿に目が行くようになりました。
西村 尿路感染の話が出ましたが、排尿自立支援加算の算定要件では感染率が下がるのも評価のひとつですね。アメリカでは病院内で尿路感染が発生すると病院側の責任として抗生剤を出すシステムのため、感染に早く尿道留置カテーテルを抜こうとしますが、日本ではアメリカほど意識をしていない現実もあるかと思います。先生方の病院では対策としてやってらっしゃることはありますか?南田先生は高濃度クランベリージュースを活用したご経験があると伺いましたが、いかがでしょうか?
南田 尿道留置カテーテルを長期に視聴し、1週間ぐらいで詰まってしまうような患者さんに、尿を酸性化させ尿路感染症の予防となる高濃度クランベリージュースを紹介し、入院中に購入して飲んでいただいたところカテーテル閉塞までの期間が伸びました。患者さんも気に入られ、退院後在宅でも飲んでいるそうです。
西村 私もクランベリージュースをご紹介した経緯があります。薬の副作用から残尿が600ml以上あり、薬の調整をしている間にひどい感染を起こし腎盂バルーンになった方がいらっしゃいました。腎盂バルーンに変えて導尿をスタートしたこともありますが、まず臭いが取れ、詰まりが無くなり腎盂バルーンが3ヵ月持ちました。薬の調整効果もあり残尿が無くなり、間欠導尿は朝と夜だけ家族が行ってバルーンフリーになれた事例があります。副作用がなく食品として入手しやすいので、飲める方に関してはクランベリージュースはひとつての選択肢だなと思ったことがありますね。
今回の座談会でも話題に挙がった「高濃度クランベリージュース」の有効性についてご紹介します。
クランベリーの主なはたらき
①尿路感染症(膀胱炎)の再発防止
②尿臭の軽減
③アルカリ性結石による尿管カテーテルの詰まりの改善
④アルカリ尿によるスキントラブルの改善
①尿路感染症(膀胱炎)の再発防止
②尿臭の軽減
③アルカリ性結石による尿管カテーテルの詰まりの改善
④アルカリ尿によるスキントラブルの改善
クランベリーの接種について
ワルファリン以外の抗凝固剤に関しては、クランベリーの使用は特に問題はありません。
ワルファリン以外の抗凝固剤に関しては、クランベリーの使用は特に問題はありません。
注目ポイント1 尿管カテーテルの変化
尿管カテーテルの詰まりの改善
尿路感染にかかると、尿素が感染菌で分解されアンモニアが発生して、尿のアルカリ化が起こりマグネシウムやカルシウムを含んだ結石ができます。この結石が尿の濁りや尿砂となり、尿管カテーテルの詰まりの原因となります。クランベリー果汁飲料は尿を酸性化するので、アルカリ性の結石を減少させる効果が期待できます。
注目ポイント2 尿のpH値の変化
クランベリーは尿のpHを下げます
通常は尿のpHは弱酸性ですが、アルカリ性側に傾くと様々な不具合がでてきます。尿路感染症になった場合、尿のpHが上がる傾向があります。クランベリーに含まれるキナ酸は体内で馬尿酸になり、膀胱の中で尿のpHを下げる働きがあり、アルカリ性側に傾いた尿のpHを正常に戻してくれます。
在宅への移行でハードルとなる「抜けないバルーン」の対処法
西村 尿道留置カテーテルが抜けない方もいらっしゃいますがどのように対応されていますか?また、抜けないで帰られる方の対処法もあれば教えてください。
南田 脊髄損傷以外で尿閉の場合は、膀胱のリハビリだと思ってとりあえず2週間は導尿を頑張ってと伝えます。長期で入れていた方は、膀胱が委縮してしまい膀胱機能が回復しないために排尿できないというケースがあるので。
丹波 婦人科や直腸のオペ後の患者さんの場合は抜いた時に残尿があるのは当然なので、当院では導尿を1週間行い、その後も残尿がある場合は自己導尿に持っていくのがスタンダードです。ただ残尿がある時はすぐに入れる、という病棟もあります。抜けないで帰られる場合は、理解力があり自分で管理できる方はDIBキャップにし、夜もバッグに繋ぐという指導ではなくキャップだけにしています。
小池 当院ではまずは導尿し、泌尿器科にコンサルする形をとっているところです。抜けない方は外来で月に1度、もしくは尿の混濁が強い方は3週間に1度受信していただいて、随時交換をしています。また抜かずに帰られる際は管理ができるのであれば日中はキャップで対応し、夜は普通のウロバッグに変える方もいます。比較的ADLがしっかりされている方はレッグバッグにするなど、患者さんのADLやQOLに応じて選定しています。
西村 通院が大変というのはありますから、在宅にどのように繋いでいくかということも大きな課題のひとつです。その点はいかがでしょうか?
南田 在宅に向け長期入院中にトレーニングをして帰ってもらうので、家ではどういった排泄方法になるのかをまず考えます。特に脊髄損傷など自分で排泄をするのが困難な方は、家族や本人に頑張ってもらうのか、尿道留置カテーテルを入れたままにするのかを考えながら、とりあえず入院中に1度抜いてみます。現状では、おむつ交換も導尿も介護負担が大きいのでバルーンが良いのでは、という考えになるスタッフが多いのですが、患者の腎機能を守りQOLを上げるにはどうするのが良いかを、再度広い視点を持って在宅での排泄を考えたいなと思いました。
西村 家族の状況なども考慮し、排尿問題で帰れないという方をできるだけ減らしてスムーズに在宅へ移行ができる未来を目指したいですね。
(2021年11月23日実施)
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