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ニュートリション・ジャーナル NUTRITION JOURNAL第20回

ニュートリション・ジャーナル NUTRITION JOURNAL ” 理解なき支援が「溝」を生む” Vol.05_その2

投稿日:2020.02.17

栄養療法の意義

そもそも栄養療法とは、個々の病態や状況に合わせた適切な栄養管理により、栄養状態や身体機能の改善、体力・免疫力のアップを図り、疾患治療を有効に行うための支持療法である。
個々の状況に適切な栄養療法を実施することにより、患者の全身状態の改善、トラブル予防による患者・家族の負担軽減が実現でき、「ときどき入院、ほぼ在宅」を目指す在宅療養を強力にバックアップするはずだ。
消化器疾患や摂食嚥下障害により経口で十分な栄養が摂れない場合は、適切なルートからの経管栄養が選択される(図2)
経管用の栄養剤や濃厚流動食は、病態や個々の機能レベルに適した多様な製品が使われている。推奨量を摂取できれぼ、1日に必要な各種栄養素がほぼ満たされる配合になっている。
その一方、疾患によって摂取すべき栄養素が変わってくる患者もいるため、在宅で栄養管理を行うには専門知識をもって管理にあたることが必要なケースが多い。
「にもかかわらず在宅での栄養管理は担い手が不在で、ケアプランにも組み込まれないことがよくあります。経口での食事介助には熱心だった介護スタッフが、経管栄養となると”私たちに医療はできない”と無関心になることも少なくありません。その穴を埋めてきたのが、訪問看護師達だったのだと思います」
と我が国の栄養治療のパイオニアの一人である、鷲澤尚宏先生(” 理解なき支援が「溝」を生む” Vol.05_その3参照)は語る。

地域における栄養管理の実態

奮闘する訪問看護師

「食と栄養」の専門家といえば、管理栄養士が頭に浮かぶが、実際に在宅現場に訪問栄養指導が入っているケースは一部の地域を除いて少ないのが現状だ。本調査でも88.4%が「管理栄養士は介入していない」と回答している(図5)。
経管栄養剤の選定においても、57%の訪問看護師が助言・アドバイスをしており、選定の意思決定者も、かかりつけ医師、病院医師に続き第3位であった(管理栄養士は4位)。
本来栄養の専門家が関わるべき栄養管理を訪問看護師が担ってきたのは、密に患者・家族と接している看護師の視点からすれば、納得できる面もある。体調変化により必要なエネルギーや栄養素、投与時に注意すべきポイントは異なる。だからこそ、体調変化の兆候を見逃さず、医学的な視点からその変化の原因を探り、個人的因子や家庭環境も加味して、総合的に対応を判断し生活の場で解決してきた訪問看護師たちの奮闘の歴史、といえるのではないだろうか。

栄養ケア・ステーションの登場

日本栄養士会の取り組みの一つとして注目されているのが、地域密着型の栄養ケア提供拠点、栄養ケア・ステーションである。
各都道府県の栄養士会を中心とした同ステーションの他、2018年度より栄養ケア・ステーション認定制度もスタートしている。一定の経験を持つ管理栄養士が在籍し日本栄養士会からの認定を受けた全国136の事業所(2019年4月時点)が、認定栄養ケア・ステーションの統一名称の下、主治医が自宅での栄養・食事の管理が必要と判断した通院困難者の自宅を訪問し、地域拠点窓口として食事・栄養ケアのサポートをしている。

栄養療法を見直そう

専門職種である管理栄養士と在宅がうまく連携することができれば、経管栄養療法においても、栄養素や食形態等多くの情報から最適な手段を提供できる。
例えば経管経口併用で「お楽しみ」程度であっても、本人の希望や好み、安全に食べられる食形態など、患者のQOLに配慮した調理や栄養指導の視点が必要だ。トラブルへの対応+αのケアにより患者のQOL改善、さらには減薬などの効果も見込めるのではなないだろうか。
在宅患者の多くは、自宅で生活したいから在宅なのである。経管栄養は「食事」という生活の一部である。ちょっとしたトラブルは病院搬送ではなく地域で在宅生活を続けながら解決したいものである。

ニュートリション・ジャーナル
理解なき支援が「溝」を生むVol.05
【在宅での経管栄養「栄養療法」を見直す】
その2『栄養療法の意義』

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