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ニュートリション・ジャーナル NUTRITION JOURNAL第12回

ニュートリション・ジャーナル NUTRITION JOURNAL ” 理解なき支援が「溝」を生む” Vol.03_その2

投稿日:2018.04.30

「4割以上の施設が、食形態に不安・疑問」

訪問看護師”かくれ低栄養”の存在を認識

ニュートリションジャーナルvol.2で紹介したわたなベクリニックと提携し、サ高住を訪問する看護師の疋田節子さんにサ高住入居者についての印象を尋ねた。

「嚥下状態不良、食事量低下、体重減少などの症状が明らかではない”かくれ低栄養”も含め、低栄養状態の方は多い印象です。
食事量の低下を招きやすい疾病(表1)はあるのですが、高齢者の多くは摂食・嚥下機能の低下による食事摂取量不足での低栄養が多く、それが見逃されていることも少なくありません」

訪問看護師の目にもまた、サ高住に多くの「摂食・嚥下機能低下の入居者」と「摂食・嚥下機能低下から低栄養に至る入居者」の存在が映っているようだ。

医療・介護連携でファーストトリアージを

早期栄養介入のための情報収集

「サ高住では、『訪問医には話しづらい』と言われることがあります。そこを介護スタッフや訪問看護師が掬い上げ、入所者の気持ち、症状を十分把握して、いかに早く変化や異常を見つけられるかが、摂食・嚥下機能低下による低栄養を食い止める鍵ではないでしょうか。
訪問看護師には、訪問時に知り得た情報を的確に医師に伝えるファーストトリアージの力が必要です」と疋田看護師。

そのためには、訪問看護師自身のアセスメント能力と合わせ、入居者(患者)の平常時の状態を把握しておくために、介護スタッフからの情報提供を得やすい関係を構築する能力も必要だ。
特に食事量や飲み込み状況に関する介護スタッフからの情報は、言語聴覚士や管理栄養士が介入する際にも重要な情報となる。訪問看護師であれ施設の介護スタッフであれ、いかに早く入居者の変化に気付き対応できるか、ということなのだ。低栄養になると、筋肉量や筋力が減少し、ADLの低下、転倒、免疫機能低下などのリスクが高まり、適切な口腔ケアが行われないと容易に嚥下機能の低下も引き起こす。
疋田看護師曰く、
「施設のスタッフの方には、普段は食事量をチェックし、摂食・嚥下機能低下のサイン(表2)が見られた時は連絡をいただくようお願いしています。
併せて、普段の生活状況(睡眠状況、排便状況、うつ的な症状、嚥下の状況、嗜好・偏食の有無、家族やまわりの人との人間関係、生活環境の変化の有無など)の観察・確認も行ってもらい、食事量低下の原因になるような心当たりがないか、気付いたことを伝えてもらうようにしています」。
介護スタッフから訪問看護師へ共有される報告は、ファーストトリアージのきっかけになることもあり、重要だ。

できることの限界と 今すべきこと

サ高住の食事サービスが委託給食会社によって行われる場合は、限られた契約金の中で運営されている。
運営する施設スタッフも訪問する医療従事者も、入居者にとって最も適した食形態を提供し、栄養を充足させることを求めてはいる。

しかし、個々の摂食・嚥下機能レベルに合わせた食形態の提供、低栄養予防のための介護食品や栄養補助食品の採用をすることは、マンパワー・手間・コストなどの負担が大きく、施設側だけで対応しきれないのが現実である。
また、施設では入居者との個人契約となるため、訪問診療のアプローチを受けていない入居者もおり、専門職による嚥下機能低下や隠れ低栄養発見の機会が得られない入居者も多く存在するであろう。

その解決策として、施設運営そのものの取り組みがある。例えば、「サ高住に入居者の嚥下機能と食形態のマッチングを図る専門職種を置くこと」あるいは「外部の専門職種と連携すること」で、個々の入居者に適した食形態と嚥下機能の適正化を図ることが考えられる。
入居者に対しても、「誤嚥・窒息に配慮した物性や食事としてのクオリティを向上させた個別の嚥下調整食およびその情報を提供すること」が必要であろう。

本調査で「低栄養」については8割弱が「知っている」と回答していたが、その解決策ともなる新しい介護食の名称「スマイルケア食」については、7割弱が「知らない」と回答していた。
「摂食・嚥下機能と食形態のマッチング」という認識を入居者も介護スタッフも共有することで、高齢者の日常がより健やかで、最後まで食事を楽しめる生活のヒントになるのではないだろうか。

ニュートリション・ジャーナル
理解なき支援が「溝」を生むVol.03
その2『医療・介護連携でファーストトリアージを』

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